Vol.3 札幌での交流~パンチライン

特集 by 編集部 2012年5月23日

今回のリリックで一番気になるのは線香花火のところ(KIYONAGA)
自分たちの解釈で楽しんでほしいというのが究極(ILL-BOSSTINO)

札幌での交流

ILL-BOSSTINO(以下B) 札幌では会ったことがないんです。いつ来るんですかという話はよく言っているけど。
KIYONAGA(以下K) ニアミスはあるんですよ。
B 僕らのライブに清永さんが来てくれているよって聞いたんだけど、エッ?と言っている間に会えなかったり。でも、いつ来るんですか?とはよく言っていますよ。
K 札幌でも周囲のつながりみたいなものはあって。プレシャスホールとか、行きつけのバーだったり。
B 僕の仲間がやっているバーですね。ほかにもいろいろ。
K ニアミス。
B 忙しいですからね(笑)。どちらも似ていると感じるところが、いろんなところに行くこと。僕も札幌にだけ居るわけじゃないし、東京ばかりに居るわけじゃない。その感覚というか、自分で動くみたいな。だれかを行かせるのではなく、自分ですべてやるのが好きみたいなところも似ている気がします。あと、京都でもニアミスしていますね。

K そうだ。旅行からインスピレーションを得るというのが似ているのかも。
B 海外の旅の話などもよくしますね。2月に僕がニューヨークに行った後に3月に清永さんがニューヨークに行ったり。そこもニアミス。アレックス(編注:Alex From Tokyo)だって共通の知り合いだし。
K そう。THA BLUE HERBのメンバーは見ているんですけど、会うとなるとニアミスが多い。この前、ニューヨークから戻ってきたときに僕の前にDJ DYEっぽい人が居たんです。
B そうかも。SOPHNET.を着ていませんでした?
K 着ていましたね。
B そう考えるとDYEの方がSOPHNET.を知ったのは早かったのかも。僕は清永さんのところの服みたいなタイプよりもストリート系の方が多かったんですけど、ヒップホップのシルエットがタイトになっていったことが影響してなのか、SOPHNET.を着たいなと思うようになって。不思議な感じですね。ありがたいですよ。
K 言葉でファンだというのを伝えるのは難しいですよね。僕としては4~5年に1つの説法をもらっているという感じです(笑)。ブログに書いたりもしましたけど、新作の映画や小説を待っている感じなんです。完全に。
B 映画なども制作期間が長いですからね。
K あと、今回のアルバムのもう1つの感想があって……次のアルバム発表がちょっと早いんじゃないかなと。本人を前にして言うのも何ですが(笑)。
B なるほど。まだ分からないですけどね(笑)。ただ、このアルバムができたときにO.N.Oとこの後はどうなるんだろうみたいな話をしていたら、ヤツも全然すぐにできちゃうよみたいな感じだったので。その最後に作った13曲目が作ろうかということになってから2週間後くらいにできたんですよね。それくらいの期間であれくらいの曲が出来上がったときに、オレもここでやめるのはもったいないなとも思ったんです。もっとやればもっと行けるんじゃないかって。そこはすごく覚えている。ただ、ライブがありますからね。ライブもアルバムもアルバムと同じくらいの時間を掛けて完成にもっていくものなので。そこの両立。
K 最後の曲である13曲目を聴くと次が早そうな気がするんだよね。

『TOTAL』制作秘話

B 13曲目はトラックが先にあって、もらったトラックを何もいじっていないんです。イントロが長いのもそのままの状態で。アルバム全体をみると、リリック先行とトラック先行がちょうど半分くらいですね。10曲目などは僕のリリックが先で。
K あれは新しいですよね。あれだけ柔らかいというか、優しいというか、あんなキャラクター設定の曲はこれまでに無い。
B あれは挑戦です。ああいうコンシャスなリリックをダークな音像に載せてやるというのは割とずっとやってきたけど、そこをちょっとおちょくるというか、政治家連中よりも完全にオレたちの方が意識的に上に居る感覚でおちょくってやろうぜって。そういう心境で作ったので。O.N.Oにもポップなトラックにしてもらって。ほのぼのというか、ふざけた感じでと伝えて。
K それが意外といいんですよね。“みんなの歌”みたいな感じで。
B 本当にO.N.Oのボキャブラリーも確実に増えていますね。今回は相当、彼も切り開いたというか。そこは幸運ですね。彼も進化をやめないし。まさかこういうところまで……今回の中でも13曲目が僕とO.N.Oとの最新作なので、ここまでお互いに実力とその後の満足が伯仲するところに来れて良かったなと思います。音だけが語れる……リリックはTHA BLUE HERBで語られることが多いんですけど、作品のクオリティ自体として伯仲しているというのはすごく幸運。
K それにしても13曲目は良い。
B オレも超好きです。
K これはライブで予算があれば生のストリングス・バージョンでやってほしい。
B そうですね。昔マッシヴ・アタックが1stアルバム『BLUE LINES』を出したときに「Unfinished Sympathy」をオーケストラでやったみたいな感じですよね。2曲目とかもバンドでできたらみたいな話はO.N.Oとしていたりするんですよ。ギター入りのトラックが何曲も入っているので、やってもいいかもねみたいな話はしていて。まさにこれからライブについて考えないといけないタイミングでもあるから。
K 13曲目が最後にできたということだけど、1曲目は最初からあったの?
B 1曲目と13曲目を一緒に作ったんですよ。
K やっぱり。
B 2曲目と12曲目までできていたのを、最後にO.N.Oが新曲の2曲で挟んだんですよね。
K 僕が考える2曲目の美学みたいなものがあって、頭から聴いて最後まで戻っていって、再び1曲目に戻るという設定で。今作もストリングスでつながっているじゃないですか。それが偶然なのか、どうなのかと思って。
B まさにその狙いです。
K リスナーからするとアルバムのリピートで気持ち良く聴くことができる。つながっているのが僕の中ではいいアルバムなんです。あと、『LIFE STORY』以降、やるやつは黙ってちゃんとやっているということを語ることが全体として多くなっているけど、そこは僕の中でも共通点を感じる部分。そういった言葉がいっぱい出てくるじゃないですか。
B 確かにそういう感覚になったのかもしれないですね。これだけラップしていて何なんですけど、あまり口数が多くなくなったというか。1stのころの方が過剰に言っていたというか。必要最小限のことだけで言い切るというのが強くなった。O.N.Oの音数の少なさというのもそうなんだけど、いかにタイトにまとめるか。そういう感覚も強くなった。

パンチライン

K ほかには、本当に成し遂げるヤツはみたいなフレーズ。“できるヤツほど謙虚”だったり。僕もPRみたいなことをあまり言わないし、自分のブログやTwitterなどでもあまり言葉は発しない(笑)。分かってくれる人が分かってくれればいい。あと、今回のリリックの中で一番気になるのは……やっぱり13曲目の線香花火のところ(笑)。
B (笑)。今作でのインタビューでこんなに細部まで言ってくれることが無かったのでうれしいです。
K そうなんだ。ほかはすべて違うなと思うことを言っていても、そこだけをもらえればいい。前後では違うことを言っていても、僕はここに感じた。
B パンチラインですね。
K そこを自分、自分の生活に置き換える。自分のライフ・ストーリー……SOPH.版のTHA BLUE HERB、清永版のTHA BLUE HERBに換えている。
B それはオレら的にもいい感じです。作って出した時点で自分たちの手を離れるというか、自分たちの解釈で楽しんでほしいというのが究極なので。
K 13曲目のリリックにもそんな意味の言葉があって。これはすごく個人的になんですが、「TENDERLY」(編注:『LIFE STORY』収録)がすごく好きなんですよね。
B 「TENDERLY」はオレたちにとっても1つのターニングポイントでしたね。そこに踏み出すかどうかが、オレたちにとっての『LIFE STORY』の大きな一歩。THA BLUE HERBの中でもエポックですね。そういう手法が13曲目にも踏襲されている部分があるし。勇気がいる曲。
K 震災のとき、この曲にあてはまることが多かったこともあって。
B 震災のときに清永さんが「TENDERLY」をブログで紹介してくれていましたね。
K そう。それで、今は最新作を取り込んでいる時期
B 本当にありがたいですよ。
K メディアよりもファンに対してをメインにしている。僕もジャーナリズムの評価よりも顧客の評価が気になるんです。顧客に対してもっとサービスしていこうという考え方というか。
B そういうところも共通している気がします。

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