繰り返し聴くことができる音楽とは

青真鶴日記 by 編集部 2011年5月26日

5月某日
渋谷のとあるバーで、ピアニスト/作編曲家の中島ノブユキ氏と待ち合わせた。彼はこの日、マスタリングを終えたばかりの新しい音源を手にしていた。

この店の店主も心得たもので、そのCDRをプレーヤーにセットし、店内に流してくれたので、私もその場でこの音源を聴くことができた。6月に発売されるアルバム『pianona』だ。馬喰横山のカフェ兼定食屋「フクモリ」で、毎月開催されている中島ノブユキのピアノ公演のタイトルを冠したこのアルバムは、これまでの公演の中で中島ノブユキと共演した音楽家たちと共に新たに録音した楽曲と、中島のソロピアノで構成されている。
共演者を挙げるならば、森俊二、石井マサユキ、田村玄一、北村聡、持田香織、CANTUS、権藤知彦、田中佑司、武田カオリ、塩谷博之、高田漣、鈴木正人という、現代日本の音楽シーンの中枢を担う名うての音楽家たちが名を連ねている。

薄暗い店内。客は私たちの他には数組。仕上がったばかりの作品が、何度もリプレイされた。繰り返し聴くことに耐えうるのはなぜだろう、と考えていて気付いたのは「やり過ぎていない」つまり抑制が効いている音楽なんだ、ということであった。食べ物でも何でもそうだが、過剰なものほど、インパクトはあるけれど、しばらくいいや、という気になるというのは、誰しも経験のあることであろう。

思えば、この『pianona』発祥の地である「フクモリ」で供される料理も、山形の食材を使った優しい味わいで、何度も足を運びたくなる。この「フクモリ」と『pianona』との感覚的な共通性もまた絶妙だ。 何度繰り返し聴いただろうか。夜も深い時間になってきたので、その日は各々家路に就いた。

後日、この『pianona』のライナーノーツを書くために、私の元にもサンプル盤が到着し、初めて聴いた日のように繰り返し聴いた。何度か聴くうちに、とある江戸文化との共通性を見いだし、それをライナーノーツには認めているので、手に取った方は何との共通点なのかをご確認いただければと思う次第である。

このアルバムの後、何を聴こうかと考えた時に頭に浮かんだのはArthur Russell『First Thought Best Thought』だ。ジャンルを越えて活動したアヴァンギャルドチェロ奏者の、何とも落ち着いた室内楽アルバムである。

中島ノブユキ (なかじまのぶゆき)

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ピアニストとしては勿論の事、時に作・編曲家としてエレガントかつスリリングなアンサンブルを構築し、映画音楽~JAZZ~POPS~広告音楽~クラシック 等様々なフィールドで展開。編曲家として菊地成孔、UA、ゴンチチ、沖仁、高木正勝、CALMらの作品に携わる。またピアニストとして畠山美由紀、ジェーン・バーキン、高田漣、原田知世らと共演。2010年タップダンサー熊谷和徳と東京フィルハーモニー交響楽団が共演する「REVOLUCION」に参加(音楽監修/作曲、オーケストレーション)。映画「人間失格」、アニメーション「たまゆら」の音楽を担当。ソロアルバムとして『エテパルマ』(06)『パッサカイユ』(07)『メランコリア』(10)を発表。2009年より月例ピアノ演奏会 “pianona” をフクモリにて開催中。2011年6月発表のコラボレーションアルバム『pianona』をプロデュース(持田香織、森俊二、武田カオリ、高田漣、北村聡らが参加)。近年は完全即興と作曲との稜線を行くピアノソロによる演奏活動も行っている。日本大学藝術学部で教鞭を執る。
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真っ青

クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人が結成したユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。


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