DISC SHOP ZEROの18年

青真鶴日記 by 鶴谷聡平(真っ青) 2011年5月12日

5月3日
今回は番外編として、下北沢のレコード屋、DISC SHOP ZEROにお邪魔してオーナーの飯島さんにインタビューを行った。4月27日に18周年を迎えたZEROの店内で、興味深い話を沢山聞くことができた。

DISC SHOP ZEROは、いつの時代もユニークな品揃えでアンダーグラウンド・ミュージックのリスナーから絶大な支持を得てきたショップだ。’93年に江古田にオープンし、’02年には下北沢へ移転。大手のCD/レコードショップが次々と閉店する中、個人経営の新譜中心のショップとして18年も存続していることは、単純にすごいことだ。どうやって続けてきたのか、店主の飯島直樹さんにお話を伺った。

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―’93年にZEROがオープンしたときはどんなお店だったんですか?

元々は江古田のビルの2階に、黎紅堂っていうレンタル屋さんがあって、そこでバイトしてたんですよ。日大の目の前で、結構変わった人が来るおもしろい店で。そのビルの1階のテナントが空いたんで、ビルのオーナーさんがレンタル屋の店長に「中古屋でもやれば?」って持ちかけて、それで始まったんですよ。で人手が足りなくなって、レンタル屋から中古屋の方に手伝いに行くようになって。

―じゃあ最初は中古屋として始まったんだ。

そうなんですよ。最初はレンタル屋と連動してたんで、レンタル落ちのCDとか多くて。これちょっとおもしろくないなあと思って、騙し騙し自分の好きなものを入れるようになりました。

―その時はまだ上の人がいたんですか?

そうですね。’95~6年ぐらいからは好きに仕入れるようになってて、’97~8年には上の人が別な場所で仕事することになって、そこからは好き勝手やるようになりましたね。

―譲り受けたっていう形なんですね。

ていうかその時点ではまだビルのオーナーが経営してる店で、売上だけ上げてくれればいいからっていう感じで。でそのビルが、2001年の暮れに取り壊すので引っ越そうという話になって。

―それで下北に。

そうそう。いろいろ状況を見てて、渋谷っていうのがまわりの多くの意見としてはあったんですけど、でも忙しくなるのやだなあと思って(笑)。それで2002年に下北に引越して来たんですよ。自分の中では中央線っていうイメージは湧かなくて。’90年代にZOOとかSLITSによく遊びに来てて下北には思い入れもあったし。

―僕は実は江古田時代のZEROには行ったことがなくて、ただ当時から「江古田にブリストルに特化したヤバい店がある」って話はよく聞いてたんですよね。実際はどんな品揃えだったんですか?

僕が輸入レコード屋での勤務経験が無かったので、輸入のノウハウとかまったくないんですよ。だから知り合いから紹介してもらった輸入業者とか、あとはWAVEとかの店頭でバイヤーの人が見てるリストを一生懸命盗み見して業者の名前を覚えたり(笑)。リスト送ってもらっても量が膨大で全部見てられないから、結局自分の好きなものばっかりになって行ったという。’90年代中頃のブリストルのサウンドって、すごい独特だったんですよね。

―独特でしたよね。’94~5年ですか?

ちょうど’94年頃って、マッシブ・アタック(MASSIVE ATTACK)がセカンドを出したり、ポーティスヘッド(PORTISHEAD)やトリッキー(TRICKY)が出てきた頃で。元々学生の頃からザ・ムーンフラワーズ(THE MOONFLOWERS)っていうバンドが大好きで、あとマッシブ・アタックとかスミス&マイティ(SMITH & MIGHTY)とか、その人達がみんなブリストルのアーティストだってことに後から気が付いて、ブリストルって一体なんなんだろうって興味持って調べていくうちに、自分の好きそうなアーティストがいっぱいいる街だってことになって。でメールとかファックスで、レーベルに連絡取って、仕入れたいんだけどってアタックして。やっぱりブリストルってインディーが多いので、あんまり制約なくレーベルやアーティストから直接仕入れられることが多かった。

―なるほど~。

だから今にして思うのは、どこかに勤めててノウハウを知ってたら逆にこういう風にはならなかったっていう気はしますね。

―いい話聞きました。勤めてたらそういう発想にはならなかったってことですよね。

そうかもしれない。あと自分もレコードを買う人間だったので、他のお店に置いてないものを入れようって意識はありましたね。

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―ブリストルに初めて行ったのはいつなんですか?

’94年の大晦日で、ちょうどムーンフラワーズのライヴがあったんですよ。僕らで『GRASSROOTS』っていうフリーペーパーを作ってて、その中でムーンフラワーズのメンバーとやり取りした時に年末年始で旅行に行きたいって連絡したら、ちょうど年越しライヴがあるからおいでよって言ってくれて。いざ行ってみたら、当然のように家に泊めてくれたり街を案内してくれたり、すごいお世話になったんですよ。
そのお返しにこっちも彼らのために何かしてあげたいなと思ってたら、’95年の秋にムーンフラワーズの来日があって、そのお手伝いをさせてもらったり。その頃はまだZEROに他のスタッフもいた時期で、シフト組んで休みにさせてもらってそういう活動したりしてましたね。ほんとの転機は’97年ぐらいで、僕が病気になって、2~3週間入院するかもしれないからしばらく店を閉めるか誰か雇うかってことになったときでしたね。結局入院しなくてよくなったんだけど、そのときに気持ち的にも自分の店だっていう風に思って。

―そういう流れだったんですね。それが今や18年。

ZEROっていう名前は引き継いでるので、一応18年なんですけど、自分の中ではあんまり何年とかってないですけどね。一日一日やってるだけで。行き当たりばったりだし、先のことも考えてないんですよね。

―下北に引っ越してからは飯島さんが経営者になって、それまでとはいろんな事情が変わったってことですよね。それによってご自身が変わった面てあるんですか?

いやー、自分はそこまで変わってないですけど、18年もやってるとお客さんもかなり入れ替わるから。自分の中での覚悟としては、今の業態のままで自分がおじいちゃんになるまではできないと思ってるんですよ。輸入の新譜を仕入れて売るっていうのは、たとえば今自分はダブステップとかおもしろいと思えるからいいけど、20年後にそのときの最新の音楽をおもしろいと思えるかわかんないから。かと言って誰か若い子をここに立たせて、自分は後ろにいて売上げだけ上げてくれればいいという気にもならないので。

―10年後ぐらいはまだやってるかもしれないけど、その先はもしかしたらわからないと。

そうですね。でも違うことをやろうと決めないようにもしてるんですよ。もしかしたらこういう調子で、あと20年やるかもしれないし。もう60だけど今だに聴いてるわ、みたいな。

―好きだから続けてるってことですね。

好きじゃなかったら多分できない。震災があっても、毎週入って来る新譜を聴いて、やっぱ好きだわって思えるし。

―ZEROが一番強いのは、やっぱりUKのダンスミュージックってことになるんでしょうか。

踊れるっていう意味でのダンスミュージックとはちょっと違うんですけど、自分の中ではレベルミュージックだと思ってて、抵抗の音楽っていうか、音そのものがそうじゃなくても、UKのクラブミュージックって姿勢的な面でそういうところから始まってるじゃないですか。そこが好きなんだと思うんですよね。

―ほんと独特な品揃えですよね。飯島さんそのものって感じがするし。それが時代のトレンドと合うときも合わないときもあるんじゃないかと思うんですけど、ZEROの歴史の中でどうでした?

僕はいつも周回遅れだって言ってるんですけど、要するに、自分の中で最初におもしろいと思ったときには誰もそう思ってくれなくて、ちょっとするとまわりがおもしろいって言い出して、その後ろから、実は俺もそう思ってたんだけどって言って遅れてそこに行くみたいな(笑)。だから周回遅れでやっと追いついてる感じ。

―最近だとダブステップですか?

ダブステップが出てきて、僕が聴き始めたときは、最初そんなに入り込まなくて。こういうの前からあったよね、みたいな感じでレコードでは聴いてたんですよ。それがイギリスに行って向こうのサウンドシステムで体験したら、これはもう全然違うと思って。

―何が違うと思ったんですか?

まず音の鳴りが全然違うし、あとはそういう音楽でめちゃくちゃ熱狂的に踊ってるってことも全然違ったし。そこで一気にわかって。だから実際にダブステップの本当のおもしろさに気付いたのは意外と最近なんですよ。2009年ぐらい。その前にも、2005~6年に、ロブ・スミス(ROB SMITH)とかからダブステップがおもしろいよって言われてたんですけど、自分ではそんなにピンと来てなくて。もちろん店ではそんなに多くはないですが仕入れてはいたんですけど、2009年にイギリスに行ってびっくりしたときに自分の中での聴こえ方が変わって、それからどんどん仕入れの量も増えていきました。だからシーンの中でどうかというより、自分がどうおもしろいと思ったかで店ではおすすめしているというか。

―シーンということではなく、飯島さんが個人的に影響を受けたダブステップの曲って何か思い浮かびますか?

純粋なダブステップではないんだけど、でもヘスルオーディオ(HESSLE AUDIO)っていうダブステップのレーベルから出てる、アントールド(UNTOLD)っていう人の『ANACONDA』っていう曲があって、それが自分にとってダブステップってなんでもありなんだと思ったきっかけだった。この曲があったから今のダブステップのスタイルの広がりが生まれたんじゃないかっていうぐらいヘンテコな曲なんですけど。

あとダブステップに関しては、僕の中ではロブ・スミスの存在がすごい大きくて。それこそスミス&マイティの頃からずっと彼の作る音楽が好きで、今彼はダブステップをやってるけど、その前にはUKガラージとか常にいろんな要素を実験的に取り入れながら自分の音楽を広げていて、結局ダブステップになったときに、ああやっぱりロブはロブだなあって感じたんですよ。ダブステップって新しい形ではあるんだけど、音としてどう新しいかっていうよりも、今まで自分が通ってきたものをどういう風に次に見せるかっていう姿勢のようにも捉えられたんですよね。大げさに言えば、その姿勢がうちの店にも通じるのかなって思って。これまで受けてきた影響とか売ってきたものがあって今の品揃えになってる訳なので、そこにすごい親近感を覚えて。イギリスの音楽が好きなのもそこなのかなあ。常に何らかのルーツがあって、その上で新しいものを提示するっていうか。

―ブリストルの今の若いDJとかクリエーターってロブ・スミスのことは知ってるんですか?

ダブステップとかやってる人達からすれば超レジェンドですよね。レイチェル・ダッド(RACHAEL DADD)とかフォーク系の人達も、ダブステップのイベントに行きはしないけどロブ・スミスのことは知ってるし。ブリストルで音楽やってれば大体知ってるんじゃないかな。ガイドブックにもマッシブ・アタック、スミス・アンド・マイティ、ポーティスヘッドとかは出てるし。

―ですよね。その辺のクラスはインターナショナルだもんなあ。

ブリストルの人達から受けた影響で、今でも自分の道しるべになっているのが、人と同じことをやってたらダメってことで。好きなことをやるっていうか、人と違うことをやるっていうか、こういうやり方をもっといろんなお店の人がやってたら楽しいのになあとは思ってるんですけどね。それは別にレコード屋に限ったことじゃないんですけど。僕もツイッターとかで見て、別の業種でも、こんなおもしろいことやってるお店があるんだと思うとそれは刺激になるし、自分の店だったらどういうことができるのかなって考えますね。売上を伸ばして大きい会社にしたいってことよりも、どんだけそういう刺激を反映させられるかというか、おもしろいと思ってもらえる、しかも自分もおもしろいと思える店を作っていくか。

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―インターネットやツイッターによって、お客さんとのコミュニケーションの仕方とか、受ける刺激が変わったとかありますか?

うーん、そんなに違いはないと思いますね。たとえばウェブでお買い物してくれるときに「初めて使いますけどよろしくお願いします」とか一言書いてくれる人も結構いるし。あとは、自分自身ブログやツイッターを結構積極的にやっているっていうのもあって、何となくこちらの顔は見えているのかなあ。だから割と親しく接してくれる方も多くてやりやすいです。これは半分笑い話ですけど、うちはあんまり割引セールとかやらないんですけど、たまにセールやると逆にお客さん来ないんですよ。

―ほんとに?なんでだろう(笑)。

あるお客さんに言われたのは、安いときにわざわざ買わなくていいよ、値段じゃないんだからさ、って。

―すごいなあ。それってコミュニティができてるってことですよね。

そうそう。その中で回って行けばいいというか。もちろん新しく来る人を拒む訳じゃないんですけど。最近でも10代の子が通うようになってくれたりとか、期待もしてなかったようなことがあったりもするので。そういうのってやっぱりお店をやってればこそなんですよね。18年って言ってもほんと一日一日じゃないですか。お客さん全然来ない日もあるし。大人になったなあって自分で思うのは、あんまり一喜一憂しなくなりましたね。今日売り上げめちゃくちゃ良かったっていう日もあれば、次の日にお客さん全然来なかったっていう日もあるから。

―いやあ、ほんとそのとおりですよね。メンタル・スタミナが求められますね。

お客さん商売ってそことの戦いでもあるから。だからこそ来てくれたときにどんだけいい気持ちで帰ってもらえるかっていうか。うちの店もいつまで続けられるかわからないけど、ただ自分の中で不安に思ってない部分があるとすれば、レコード屋をやるっていうことにだけこだわりがある訳ではないんですよね。今はやりたいことがほぼレコード屋に集約されてるから、おもしろい音楽紹介したり、人と話したり。でも、かみさんとも話したんだけど、もしレコード屋やめたら昔一緒に作ってた『GRASS ROOTS』っていうフリーペーパーまたやるかって。音楽を紹介するのはレコ屋じゃなくてもできることだし。まあ大変だろうけど、お金は何とかなるものだと思ってるので。常に。

―ありがとうございました。

DISC SHOP ZEROを代表するアルバム5枚

110510-tsuru-1 THE MOONFLOWERS
『COLOURS AND SOUNDS』
110510-tsuru-2 SMITH & MIGHTY
『BASS IS MATERNAL』
110510-tsuru-3 G.RINA
『サーカスの娘』
110510-tsuru-4 FAT FREDDY’S DROP
『BASED ON A TRUE STORY』
110510-tsuru-5 RSD
『GO IN A GOOD WAY』

DSZ-logo_markDISC SHOP ZERO

世田谷区北沢2-17-10 滝本ビル3F
TEL: 03-5432-6129
HP: www.discshopzero.com
twitter: twitter.com/dsz_news
平日 13:00~21:00/土曜 12:00~20:00/日曜 12:00~19:00
火曜日定休

真っ青

クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人が結成したユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。


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