地震の後で

青真鶴日記 by 鶴谷聡平(真っ青) 2011年3月31日

3月14日
こんな日に一体どんな音楽をかければいいんだろう。真っ先に思い浮かんだのはボブ・マーリィだった。

*東日本大震災で被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興を信じて、自分のできることからやっていこうと思っています。

3月11日の午後2時46分、僕は下北沢の路上にいた。夕方には代々木八幡のNEWPORTに行くことになっていたので、その前に昼飯でも食べようと思って下北沢の商店街を歩いている時に、あの揺れが来た。まるで船にでも乗っているかのように地面が揺れていた。人々が建物の中からわらわらと外に出て来た。みんな、恐怖に怯えているというよりは、訳がわからないというような表情だった。

実際に僕も、ニュースを見るまではそんなに不安に駆られることはなく、いつものように渋谷のVIRONでバゲットを買ってから店に行くという、冷静なんだか動揺してるんだか分からない行動を取ってしまった。3時半頃にNEWPORTに着くと、店内にはランチを食べ終わったお客さんがまだ5~6人残っていて、悠然とコーヒーやチャイを飲んでいた。すでに電車がすべて止まったという情報が流れていたので、今は動けないからのんびりしようという人々だった。幸いNEWPORTの被害はなく、グラスの1つも割れなかったのだが、刻々と入って来る被害状況のニュースにより起こったことの衝撃はどんどん大きくなっていった。

11日はさすがに夕方で店を閉めた(夜は帰宅難民の方々のために休憩所として開けていた)。その日の深夜を回ると電車も少しずつ動き出し、翌12日も引続き混乱はしていたものの、一応電車は動いていたので店を開けた。ただ、余震による不安や、なにが起こるかわからないという緊張のため、店で音楽はかけなかった。音楽をかける気持ちにはなれなかったのだ。ランチタイムは意外にもいつもとそれほど変わらない光景だったのだが、夜は街に人影はなかったので、この日は早々に店を閉めた。

13日、日曜日はNEWPORTの定休日で、家の中でゆっくりしたり、天気もよかったので近所を散歩したりした。気持ちがすっかり疲れていたので、こんな時こそ何か音楽を聴こうと思って、適当に引っ張りだしたのはなぜかR.E.M.のベスト盤だった。特に思い入れがある訳でもないのだが、ただ単に気晴らしになりそうな気がしたからだ。

14日の朝、悲しみと不安がますます増大していったそんな時に思った。こういう時こそ、無事な人から普段の生活に戻るべきだ。自分にできることをやるしかないのだと。自分を奮い立たせ、明るい気持ちで淡々と一日の仕事をするために、勇気づけてくれる音楽が必要だった。何を聴こうかと考えたら、ボブ・マーリィが真っ先に思い浮かんだ。すべては上手く行くさ。この日は店を開けるのと同時に、ボブ・マーリィの『レジェンド』をかけた。

書:華雪
「青真鶴日記」「真っ青」の書は、書家 華雪さんによるものです。
http://www.kasetsu.info/

青真鶴日記 by 真っ青

青真鶴日記(あおまなづるにっき)は、真っ青(山崎真央/鶴谷聡平/青野賢一)の3人がそれぞれのスタイルで音楽を見つめ綴っていく、日記形式の連載です。青→真→鶴(=青真鶴!)の順にリレー形式でお送りします。

真っ青

クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人が結成したユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。


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