[こと] 音楽に耳を澄ませる

青真鶴日記 by 山崎真央 2011年9月22日

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大阪の中之島にあるgrafビルに行きました。grafとは建築、空間、家具、照明、グラフィック、プロダクトのデザインから、アート、食に至るまで、暮らしに関わるものづくりに取り組むクリエイティブ・ユニットです。僕は過去に2年ほど勤務しており、AKICHI RECORDSはgrafの中で発足しています。

初めてgrafを訪れたのは10年ほど前。今の中之島のビルに移転してすぐだったと思います。自分たちと同じ年代の人たちが、ビルを丸ごと抱えてプロデュース/経営し、そのデザインされた空間にとても衝撃を受けました。当時の常識を超えた斬新な活動でした。

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今回は僕が退職してから初めての訪問で約2年ぶりです。訪れた理由はgrafが”Narrative”というオリジナル家具シリーズの新作を発表し、その関連企画として2つの事を試みるためです。

1つは2階のカフェ”fudo”と、3階の”shop/showroom”でかかる音楽の選曲。
もう1つは独自で設計と製造をされたスピーカーを元に、様々な音楽活動をされているsonihouseの鶴林万平さんと共にワークショップを行いました。

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選曲は「小さな音で聴く音楽」というコンセプトで、聞こえるか聞こえないかくらいのギリギリの音量で音楽を鳴らしています。
どこにいっても普通に音楽が鳴っていたり、乗り物や話し声などの喧噪が埋め尽くしているという現代の街では、無音ということがほとんどありません。BGMとして鳴っている音楽の音量を低くする事で、小さな声で話ができ、それによって研ぎすまされるような感覚と、普段とは違う空間が生まれるのでは……と想定してみると、繁華街から離れたところに位置するgrafビルではそれが良い形に落とし込めるのではないかと思い、都市での「新しい音楽の在り方」を提案しました。

選んだ曲も小さな音量で聴くとピアノやボーカルやさまざまな音色が位置や時間によって浮き出たり沈んだりと、音が「見え隠れ」するような楽曲を選んでいます。
結果、曲がアンビエント的に変化して空間にとけ込んでいき、ギャラリーや美術館のような、凛とした空間性が出せました。

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ワークショップは「音楽の背景に耳を澄ます」というタイトルで行いました。万平さんの所有するトーレンスのターンテーブルとLINNのCD内蔵のアンプに、彼の製造する12面体スピーカーをつないだセットで挑みました。

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もともとは万平さんが普段行っている企画に僕が乗っかった形でこのワークショップは生まれました。CDやレコードの音楽自体の背景にある普段では聴かない(聴こえない)ような小さな音を、精度の高い音響システムでじっくり聴いてみてそれについて話すという、ある意味「小さな音で聴く音楽」とは真逆のコンセプトなのですが、この2つは「音楽を普段と違う角度で聴いてみる」というコンセプトで繋がっています。そして鳴らすスピーカーはどちらもsonihouseのスピーカーを使用しています。

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万平さんは元はアートの活動をされていた方で、音楽にはっきりとした考えを持って接しています。スピーカーの製造をしていた会社に就職していた経験を生かし、かなり精度の高いスピーカーを設計する技術者でもあります。

そのスピーカーを使ってさまざまなコミュニケーション方法を模索しながら独自の音楽理論を提唱している人です。そしてなによりオープンマインドな人柄が魅力ですね。今回、その活動の一部をご一緒する事ができてとても勉強になりました。

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15人の定員制で行われたワークショップ、嬉しい事に満員の状態でスタート。
まず、万平さんが選んで掛けた音楽はグレン・グールドの演奏する バッハの”Sinfonia No. 1 in C Major, BWV 787″。
グールドが演奏中にエンジニアに注意されながらも、どうしても出てしまいマイクに入ってしまったという曰くの鼻歌を聴きました。普段注意して聴く事がない部分でしたが、耳を澄ますとすごい勢いでフンフンと出てる鼻歌に、グールドが精魂込めて演奏する姿が脳裏に浮かびました。

そして次に僕は自分の自己紹介もかねて、自分でオーガナイズしたとあるライブの録音を聴いてもらいました。
その後、日本、韓国、ベトナム、バリの伝統的な弦楽器を用いた4つの音楽の聴き比べや、YMOの1stアルバムの国内オリジナル盤と、アメリカで再ミキシングされて世界で発表された1stアルバムの聴き比べなど、このような調子でお互いが交互に音楽をかけて参加した人たちと聴き、それについて語るという事を3時間くらい続けました。

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更にそのあと、もう1つの企画の音楽を聴き、それをビジュアル化して画用紙に書いてみるという事をやりこの日は終了。
この企画も同じ楽曲を聴いているのに、人それぞれ聴いている部分によってまったく違うビジュアルになったり、逆に照らし合わせたかのように同じような絵になってしまっている人達がいたりと、非常に興味深い内容でした。当初2時間の予定が4時間のワークショップとなってしまいましたが、来ていたお客さんに少しでも新しい発見があったり、有意義な時間となってくれていたら嬉しいです。

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今回行った企画はどちらも実験的でありながら、非常に良い効果が生まれたと思います。まだまだ可能性がありそうなので、機会があれば東京でもやりたい企画でした。
一緒に取り組んでくれた万平さん、奥さんのアンナさん、僕に何かやらないかと提案してくれたgrafの小坂逸雄君と置田陽介君、そしていつも温かく迎えてくれるgrafのスタッフのみなさま、WSに駆けつけてくれて参加してくれた知人の方々どうもありがとうございました。

また是非一緒に何かやりましょう!

使用機材
・12面体スピーカー ”scenery”
・CD・チューナー・アンプ LINN “CLASSIK”
・ターンテーブル トーレンス(THORENS) TD-124 Mk II
・トーンアーム SME 3009 S2 Improved
・カートリッジ SHURE M75ED
・フォノイコライザー TRIGON VANGUARD II

NARRATIVE
http://narrative2011.tumblr.com/
http://narrative2011.tumblr.com/post/9449761568

graf
http://www.graf-d3.com/index2.html

sonihouse
http://www.sonihouse.net/

真っ青

クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人が結成したユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。


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