石川直×神保彰による、世界的トップ・ドラマー同士の対談を大公開!

特集 by 編集部 2010年10月4日

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マーチング/ドラム・コー界の第一人者・石川直が、スネア・ドラムの練習法や合同練習の方法を多数紹介したDVD付楽譜『実践!マーチング・スネア・エクササイズ』が9月27日に発売となった。この本には、スネア・ドラマー石川直とセット・ドラマー神保彰の対談が収録されているが、世界で活躍する2人の話は尽きることがなく、泣く泣く削除せざるをえなかったアウトテイクが存在する。本書の発売を記念して、「Rittor Music Port」読者だけにお見せしよう。トップ・ドラマーならではの話題を、是非とも楽しんで欲しい。

セッションと即興への意識

――ジャズ・バーやクラブで即興への対応力をつけた(石川)
――キャラクターの違いを持つドラム・セットは即興向きの楽器(神保)

 

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神保:同じ動きで音を合わせていくマーチングでは、インプロビゼーション的な意識はないの?

石川:基本はないですね。ストロークを決まった高さで揃えて、決まった譜面をこなしていきます。ここまでひたすら反復練習して準備された音楽は、他に見たことがないですね。
例えば、ジャズがその場でしか生まれないものだったら、究極に練習して準備された音楽の世界がマーチング/ドラム・コー。

神保:その考え方は面白いね。

石川:でも、そうやって準備が中心となって構成されているので、個人で活動をはじめた時は、即興に対応するのが難しく、用意された短い演目しか叩けないという壁にぶつかりました。
マーチングでは1年位かけて10分のショーを作るので、例えば、その場で5分程度の即興を叩くなら何とか応用が利くけれど、もし30分だったら途方もない(笑)。

神保:じゃあどうやって即興に対応する練習をしたの?

石川:例えば、ジャズ・バーでピアニストと即興で合わせたり、クラブでDJとセッションしたりという経験を重ねて力がつきましたね。今まで培ってきた技を、瞬間的にしゃべるように繰り出す方法が、そこでわかった感じです。

神保:練習の積み重ねで、ボキャブラリーはたくさん入ってるんだもんね。組み合わせ方さえわかれば、怖いものはないよね。

石川:英単語ばっかり覚えて文法を知らない学生が、アメリカに言って全くしゃべれなかったような状況だったと思うんです(笑)。で、実践しながらしゃべることを身につけて行ったようなイメージ。
即興と準備といえば、神保さんのソロ・パフォーマンスは、即興と準備の融合で構築されていると思うんですが。

神保:そうですね、確かにワンマン・オーケストラは、トリガーの仕込みに時間をかける。現場では、仕込んだ音源とその場で叩くインプロを適度なバランスで混ぜるというスタイルでしょうか。

石川:ああもう、僕からすると何が起こっているのかわからない世界です(笑)。

神保:マーチングの世界に比べたらたいしたことないですよ(笑)

石川:いやいや、こっちの方が明らかにシンプルだと思いますよ(笑)。パフォーマンスの仕組みはわかるんですが、毎回神保さんのライブには驚愕させられます。

神保:ありがとうございます。

石川:神保さんは即興に対して、どんな意識を持っているんですか?

100929-jimbo-1.JPG 神保:まず、ドラム・セットという楽器自体が即興に適していると思っていて。元々、スネアと大太鼓、合わせシンバルと別々だったものを、一人でやってしまおうというイージーな発想から生まれた上に、ジャズという音楽と発展してきたから即興という要素が色濃い。
実際のところ、僕はセットでなら即興できますけど、スネアだけだったら5分と持たないと思いますよ。スネアだけでも色んな音色を出せるけど、さすがにドラムとシンバルほどの差は出ないから。
セットの場合、各パーツそれぞれがキャラクターの違いを持っているから、あれだけ即興に向いてるんじゃないかな。

石川:確かに、スネアだけで即興を練習しているときには、セットに嫉妬します(笑)。
即興にも適してますけど、まず、楽器の特性が大きく違いますよね。セットは周波数の大きく違う部分が多くて、グルーヴを構築しやすいじゃないですか。だから、演奏上、上にのる楽器を支えるレールが敷ける。対して、スネアは音色の幅が狭いぶん、メロディ的な使い方が多かったりするので、これ一つでグルーヴを構築しづらい。直線的なので、踊らせるのが難しいんです。

――他の楽器と絡むことで新しい発見がある(石川)
――セッションとは、いかに良い時間を共有できるかということ(神保)

 

神保:ああ、セットならバス・ドラムをドン・ドン・ドン・ドンとやれば身体は動くものね。

101001ishikawa3.jpg石川:そうなんです。そういう要素をスネアに取り入れにくいから、また難しい。ただ、セッションであれば、他の楽器と絡むことでスネアのマーチングとはまた違った側面を出せて、新しい発見があったりします。
神保さんはセッションを行なう時はどんな意識で臨みます?

神保:僕にとってのセッションは、聴こえて来た音にどう反応するかなので、誰でも、どんな楽器でも、その意識を変えることはないですね。それが即興でのセッションの良いところでもあるし。何も準備せず、その場で出る音を楽しもうという意識です。

石川:それがあるべき姿だと思います。実際に演奏している最中は、細かいことを考えずに感覚で進行していきますし。

神保:そう。セッションの楽しさや心持ちは、いかに良い時間を共有できるかということだと思いますから。人と一緒にセッションしたりコンサートで演奏する際には、同じ時間と空間を、いかに気持ちよく幸せに共に過ごすことができるかということに絞られている。そういう気持ちを持っている人とは、何も言わなくてもやりやすいね。

石川:「遊ぼうぜ!」みたいな意識ですよね。自分が出した音に相手が反応してくれることが楽しいですし。

神保:そうだね、演奏者から楽しむ意識がないと、お客さんも楽しめないし。「遊ぼうぜ!」っていうような意識で楽しんでいかないと、聴いてる人も楽しくならないもんね。

石川:その辺もお客さんに伝わりますよね。こっちのテンションが低ければその低さも伝わってしまうというのは、音楽の本質を語っているのかな。演奏している人のコンディションまで音に乗っかっていて、形式上セッションしてても感覚が合っていなければ違和感が出てしまう。

神保:やっぱり音楽というのは、言葉とはまた違うコミュニケーションだよね。楽しいコミュニケーションがステージで行なわれて、それを見たお客さんがまた楽しくなるというのが良いサイクル。

石川:そうですね。僕は基本的にポジティブなエネルギーを発している音楽が好きですし、できるだけ前向きな印象を演奏に持たせようとしています。
そう考えると、即興的で楽しさを追求する音楽がセッションだとしたら、マーチングやドラム・コーには違う空気感があって、能やクラシック、バレエのようなイメージかもしれませんね。

神保:もちろん、練習した演奏がカッチリ決まった時の快感というのは何ものにも代え難いから。両方の側面を持ててるのは素晴らしい。

 

「叩く」という動きについて

――無駄のない動きが人を惹きつける(石川)
――脱力を意識して叩くようになってきた(神保)

 

石川:ライブ中の神保さんの動きは派手で魅力的ですよね。

100929-jimbo-2.JPG神保:僕は、シンバルをだいぶ高くセッティングして、ドラムは普通の位置、その上にパッドがある、という3階建ての構造なので、必然的に動きは大きくなるんです。
それは考えてやっている訳じゃないですけど、その位置に慣れて叩いたら結果的に見栄えが良くなった感じでしょうか(笑)。

石川:なるほど。僕の場合は楽器が一個なので、必然的に演奏している身体を魅せていく意識なんですけど、そこでいつも考えているのは、より自然な動きをすることで魅力が増すんじゃないかと思ってます。無駄のない動きが人を惹きつけるというか。

神保:無駄のない動きは大切ですね。僕は、年々、脱力を意識して叩くようになってきていて。どうしても年齢とともにフィジカルは下がりますけど、脱力のレベルが高まっていけば、もっともっと上のレベルに行けるんじゃないかと思ってます。

石川:確かに、脱力を意識することで、今まで叩けていたロールのトップスピードを、より簡単に超えたりしますね。

神保:そうだね。脱力した方がスピードが出しやすい。また逆に、パワーまで出たりして。

石川:無駄な力の逃げ場がなくなり一点に集中するようになって、音も良くなりますよね。
脱力することで無駄なくどれだけ効率よく力に変えられるか、というのは永遠のテーマですね。

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実践!マーチング・スネア・エクササイズ
~楽曲形式で上達する鉄壁のスティック・ワーク

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スネア・ドラミング上達の秘訣

著者:石川 直
仕様:A4変形判/96ページ/DVD
価格:2,625円
発売日:2010.09.27

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石川直

13歳でアメリカ、シカゴに渡り、現地の高校に入学。15歳からパーカッションを始め、地域の高校生オーケストラに入団、そしてドラム・ラインに入る。95~99年にわたりDCI、PASICで数々の賞を受賞。00年にblast に入団、ツアーに参加。同年春、ブロードウェー進出。05年より、堂本光一主演ステージ「Endless SHOCK」に出演。08年には『基礎から叩くドラム・コー(小社刊)』を出版。クラブ・シーンでのパフォーマンスや、吹奏楽、オーケストラ、ワールド・ミュージック、ジャズ、J-Popとの共演等、ジャンルを問わず活動を続けるほか、TVなど多方面で活動しながら、日本でのマーチング/ドラム・コー指導など、後輩の育成にも力を入れている。

神保彰

1980年、カシオペアでプロデビューして以来、30年の永きにわたって常に音楽シーンの最先端を走り続けるトップ・ドラマー。ミディードラムトリガーシステムを駆使した、ワンマン・オーケストラとでもいうべき独自の演奏スタイルを編み出す。驚異的な演奏テクニックとモダンテクノロジーの融合による前人未踏のパフォーマンスは見る者を圧倒し、その評価は国内はもとより、広く全世界に轟いている。2007年、ニューズウィーク誌の特集「世界が尊敬する日本人 100人」に選出される。2010年、プロデビュー30周年を迎え、日本国内108本のライブ行脚を慣行。2011年より、国立音大ジャズ専修客員教授を務める。

Photo:翁長裕(http://www.if-inc.com/

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