昨年11月、僕は大阪で行われたKAIKOOという都市型フェスに出演しました。10の会場を使った同時多発的な催しで、僕の出演した会場はTRIANGLEという所。 同じ会場に出演していたのがGOMAさんとU-zhaanさんのチーム「GOMA meets U-zhaan」でした。 前々日も法政大学の文化祭で「GOMA meets U-zhaan」と一緒だったり、前日は日本大学の文化祭に「環ROY×蓮沼執太×U-zhaan」として出演したりとなんだか縁深い流れもあって、翌日、東京まで一緒に帰ろう! という事になったのでした。 新大阪駅でお好み焼きとネギ焼きを食べた後、新幹線に乗り込みこんなお話しをしました。
環ROY(以下R) 突然なんですけどインタビューしていいですか? リットーミュージックって音楽の色んな雑誌出してるとこあるじゃないですか?
GOMA(以下G) ギター・マガジンとかサンレコとか?
R そうそう ドラム・マガジンとか
U-zhaan(以下U) ベース・マガジンとかGROOVEとか
G おー、聞いたことある
R そのWebマガジンの『RandoM』ってとこで連載やりましょうみたいになって、それが昨日の話なんですけど。明日ちょうど新幹線で一緒になるから、2人に話聞いてくるよっつっていま録音してみてる。みたいな感じです。
G おー、全然いいよ。
R で、なに喋ってもいいって言われたんですけど、ま、楽器のことは聞いてみてください。って言われてますね。俺は駄話してればいいかなぁって思ってたんですけど。さっきのお好み焼き食い過ぎちゃったねーとか。
G さっきのネギ焼きうまかったね。
U 楽器(ディジュリドゥ)のことGOMAちゃんに聞いたらいいじゃん。
R そうしたいです。湯沢さんはさんざん俺知ってるからさ。前に聞いたもん。GOMAさんのはまずオーストラリアの楽器だっていうのはこないだ教えてもらったよ。アボリジニの。なんで始めようとしたんすか?
G なんで始めようと思ったのかいまいち……よく覚えてない。今はね。遊びに行ったダンスのイベントで見て「なんだこれ! おもろいな」って言って始めた、らしい。
R ああ~、あんまりもう、本当にわからない。そういうことになってるってことですよね。
G そうそう。……なんか吹いてたら気持ちよくなってくるから。呼吸を操っていくような感じで、どんどん安定してきて、その呼吸の波にのっていくという。
U 始めた頃の話は覚えている? 初めて人前で演奏したときのこととか。
G そういうのはまったく覚えてないわ。
U オーストラリアに行ったときの感じなんかは?
G オーストラリアのことは……ぱらぱらわかる。それまでのこととかはあんまり……覚えてないですね。なんか、いくつか友達とかとライブしたのも覚えてるけど、どうやって最初にライブしたのかは覚えてない。
U でもさ、昨日会った人いっぱいいたけどさ、結構覚えてたじゃん。山本アキヲさんとか。
G アキヲさんとかは、めっちゃ古い友人。アキヲさんは覚えてる。
U そうなんだー。あとspeedometer.とかも。
R え! speedometer.いたの? え~俺喋りたかった。
G 知り合いなの?
R いえ知り合いじゃないですけど俺音源2枚持ってて好きなんです。
U 俺もすごい好きだよ。
R いたんだー。話したかった。
じゃあ記憶はだいたいおぼろげなんですね。
G 古い知り合いは覚えてる。
U めちゃくちゃ覚えてる風だったもんね。
G 俺が働いてたロケッツっていうライブハウス、クラブみたいなところによく来てた。そこで田中フミヤくんとかとよく一緒にイベントやってた。
U アキヲさんって田中フミヤさんとユニットやるみたいな人だったんだ。へー。俺のマスタリングほとんどアキヲさんに頼んでるよ。最高のマスタリング・エンジニアだよ。
R へー。すごいんですねぇ。
GOMAさんは、ディジュリドゥの循環呼吸がどれくらいでできるようになったとかもあんまり覚えていないんですか?
G 覚えてないけど、すぐできるようになったらしい。その日のうちに。だから多分いけるんちゃうかとおもって、のめりこんでいったんやと思う。
R へー。その日のうちにとか、神童じゃないですか。
U なんでロイくん言うと軽いんだろ(笑)。
G ラップとかも、「俺だったらできるだろう」とか勝手な思い込みからのめりこんだりするでしょう。
R そうそう、俺そうだもん。
G それと一緒だよ。なんか直感的な、なにかが降りてきて、「やったらいけるんちゃうか?」みたいなさ。
R 他の楽器に循環呼吸使うのってあるの?
U あるよ! トランペットだって、やる気になれば。ウィントン・マルサリスもやってたし。ただディジュリドゥ以外の循環呼吸ってなんとなく曲芸っぽい感じのイメージがあるよね。
R ちょっと大道芸っぽい?
U うん、そういう印象を受ける人もいると思うよ。ディジュリドゥに関してはそれがデフォルトでそういうものだから。
R それができてこその演奏みたいな感じでしょ?
G うん、そうだと思うね。
R こないだ俺だいたい聞いちゃったんだよな、GOMAさんに。覚えてないと思うけど。タブラはさ、2~3年でだめになるけどディジュリドゥは20年? って言ってましたっけ。
G そう、使おうと思えば何年でも使える。今俺が使っているやつももう、相当な古さになってるよ。
U どれぐらい使ってるの?
G 10……15~16年。
U GOMAちゃんがそれを手に入れたときは新品っていうかできたてだったの?
G いや、もう使われてたやつやから、それ以前は謎。
R 謎なんすか!? ヴィンテージ・ギターみたいにめっちゃ高いやつとかあるんですか?
U タブラはない! タブラは消耗品だから。
R そこおもしろいよね、ふたり。
G 2~3年でつぶれるってスゴイよね。
U いや、モノによるよ。4日くらいで破れちゃうのもある(笑)……張り替えはやろうと思えばできるけど、それより買ったほうがいい。打面の真ん中に黒くなってるとこがあるじゃん。あれは張ってから黒い部分を塗っていって調節するやつなの。で張り替える場合は黒い部分が塗ってあるやつを張らないといけないから、結局その楽器に本当にフィットする、いい音にはならないんだよね。
R じゃあ張ってから塗る。黒いところ。
U いやー塗るのはさすがにできないからさ。作る工程は張って塗ってを繰り返していくんだよ。
R 塗るのは難しいんだ。
U 楽器によって革のサイズが全然違うから、ピッタリの形にならないと、その楽器のために作らないとダメだし。
R 1個3万円ぐらいって言ってましたっけ。
U ピンキリだけど、俺が使ってるのはワンセットで3万円くらいのが多いかな。ワンセット、っていうのは低音のやつと高音のやつが1つずつ。普通はその2つで演奏するの。
G 安いね。
U ディジュリドゥの方が安いよ~、だって一生使えるんでしょ。
R ターンテーブルみたいなもんですね。まぁギターとかもずっと使えるか。……なんだ?タブラって。
一同 (笑)
U まぁギターはずっと使えるけど、いろいろ欲しくなってどんちゃか買ってるじゃん。あっちのが金かかるよ。
R エフェクターも買うしね。
U エフェクターも買うし、ギター自体が高いよね。いいもの買おうとすると60万とか100万とか普通にするじゃん。でもそういうのタブラはないからさ。
R おもしろいそれ。
U そんなには金額使わないね。
R 打楽器全般ってそういうもんなのかな?消耗品というか……
U ジャンベとかああいうやつは革張り替えて使ってる人はいるよね。それは消耗品だよね。
R そういうもんだよね。叩いちゃうから。
U もちろんタブラもボディは使えるよ。でもボディ使うためにはインドに持っていって張り替えないといけないから。それは使えないのと一緒なんだよね。
R インドのやつらは張り替えたりするの?
U うん、向こうにいる分には張り替えるよ。
G 日本にそういう職人いないもんね。
R タブラが普及したら近所の楽器屋で張り替えてくれるかも……
U ないでしょ!楽器屋に黒いの塗る職人とかいないでしょ!
R GOMAさんは楽器買ったら一生買い換えない、湯沢さんは毎回インドにいって買うんだね。買ったら日本に送るの?
U 送る。けど買ってもいつできあがるのか、わからないんだよ。
R 「届かない」って言ってるの、スペシャの映像で観ました。
U だいたいできてないよ。それをなんとかなだめすかして、おだてたりして、やっとできてくる。
G 大変だねぇ。
R 毎回買って空輸してるんですか?
U 毎回買って空輸してるね。
R あのなんか、ライブで使ってるタンバリンみたいなの、あれ動物の皮って言ってましたっけ?
U あれはトカゲの皮だね。
R ワシントン条約的なやつだよね。
U そう、ワシントン条約か何かの都合で輸出入が難しいらしくて、今はほとんど生産してないんだよ。個人的に持っているぶんには大丈夫なんだと思うんだけど。まだちょこちょこ売ってるみたいだけど、すごい値段になっちゃったね。
R えー、いくらぐらいですか?
U 俺が買ったときで1個800円くらいだったのが、もう万単位みたいになってる。
R でもこれイメージ的によくないんじゃないですか?「ユザーン、ワシントン条約違反か」ってなっちゃうよ。
U いや持っているのはよくて、どっか別の国に持っていくのがダメっていう法律だから。
R そっか(笑)
G あのタンバリン、いい音するよね。
R うん、俺すげー好き。低音がすげー。めちゃくちゃ出てるでしょ、あれ。
[次回に続く:後半は、GOMAさんが自分の体験から「情報の受け取り方、理解のしかた」について話します。]
U-zhaan
ザキール・フセイン、オニンド・チャタルジーの両氏にタブラを師事。2000年よりASA-CHANG&巡礼に加入し4枚のアルバムを発表後2010年に同ユニットを脱退。その後U-zhaan×rei harakamiとして「川越ランデヴー」「ミスターモーニングナイト」を配信リリース。タブラ100%テクノユニット、salmon cooks U-zhaanの名義でも3枚のアルバムを発表。その他yanokami、七尾旅人、UA、HIFANA、SUPER CARなど数多くのアーティストの作品にもタブラ奏者として参加している。著書に『ムンバイなう。』。
GOMA
ディジュリドゥアーティスト/画家
単身で渡豪した、オーストラリアで数々のコンペティションに参加し入賞。 98年アボリジニーの聖地アーネムランドにて開催された「バルンガディジュリドゥコンペティション」では準優勝し、ノンアボリジニープレイヤー として初受賞という快挙を果たす。国内外の大型フェスにも多数参加し、自身の10周年の活動をまとめた映像制作をしていた09年、交通事故に遭い高次脳機能障害の症状が後遺しMTBI(軽度外傷性脳損傷)と診断され活動を休止。事故後まもなく突然緻密な点描画を描き始める。2010年夏に行われた初の個展『記憶展』開催。その後も懸命にリハビリを続け再起不能と言われた事故から苦難を乗り越え2011年6月に静岡で行われた野外フェスティバル「頂」にてシークレットゲスト出演をし、FUJIROCK FESTIVAL’11にて伝説のライブを行い、奇跡の復活を成し遂げた。
環ROY

ラッパー。宮城県出身。主に音楽作品の制作とパフォーマンスを行う。これまでに最新作『ラッキー』を含む4枚のフルアルバムを発表。第17回文化庁メディア芸術祭推薦作品『ワンダフル』(MV)を発表。国内外の様々な大型音楽イベントへ出演。