タイに移り住んでからはや1年が過ぎましたが、この国にはへんてこな名前のバンドがかなりたくさんいるような気がします。「いしいのおつかいミュージック」、最終回はタイの変なバンド名とその楽曲を紹介していきます!
BIG ASS
“でかいケツ“という名前を冠した、タイでは超有名なロックバンド。
この名前、だいじょうぶなの? とちょっと心配になります。
ファッションブランドのキャンペーンで「BIG ASS」という文字とともに、メンバーの等身大パネルがジーンズの横に並んでいる光景は笑いを誘います。
POTATO
文字通り芋くさそうな名前ですが、こちらもメジャーで活躍するロックバンド。しかも、上の「ฮู้ ฮู」という曲のMVでは”トマト”ケチャップのコマーシャル撮影の様子を模して、自らバンド名をダジャレにしています。
そして! まだまだあります、へんな名前で活動するアーティスト。さらに2アーティストのCDを購入して聴いてみました。
Stylish Nonsense
- アルバム名:Use Your Professor!
- リリース年:2013年(2009年に発表した音源をリマスタリングして2013年に再リリース)
- https://itunes.apple.com/jp/album/use-your-professor!/id321481607
- トラックリスト:
- Yie Are Kunfu Nintendo
- Atari
- Step
- Peace
- Ninja
- Itsuka
- Wait A Minute
- Act Art
- Asian Movie
- Use Your Professor!
1枚目は、スタイリッシュかつナンセンス、というお名前の2人組ユニット。
1曲目「Yie Are Kunfu Nintendo」、2曲目「Atari」と曲名にもある通り、80年代のゲームミュージックを思わせるような、どこか懐かしさも感じさせるエレクトロニカとなっています。
「Itsuka」という曲では「いつか」という日本語音声のサンプリングを挟み込んだり、「Ninja」という楽曲があったり、親日の雰囲気も漂っています(グッズには「スタイリッシュナンセンス」とカタカナでユニット名がプリントされたTシャツもありました)。
どの曲もチルな雰囲気で耳にはよく馴染むけれど、パンチが足りないなと感じていたのですが、ライブを一度観たらその印象は大きく覆されることに。原曲は骨組みだけ残して肉付けをマシマシに、やせ形の優等生を体育界系のマッチョに仕立て上げたかのような変貌ぶりにドキリとさせられました。
とくにJuneのドラム演奏がかなりパワフルでやられます。
ときにはこんな感じでドラムセットを床に並べ、あぐらを組んだ右ひざでバスドラムのペダルを踏んだりするような、ワイルドな演奏を披露していたこともありました。
主に作曲やキーボード演奏を担当するPokは、シラパコーン大学という芸術大学で音楽制作を教えたり、音楽レーベル「Panda Records」を主宰するなど精力的に活動。タイの音楽界を盛り上げています。
Desktop Error
- アルバム名:Keep Looking At The Window
- リリース年:2014年
- https://itunes.apple.com/jp/album/keep-looking-at-the-window/id814506211
- トラックリスト:
- กุญแจผี / Ghost Key
- ควันจางลา / Kwan Jang La
- เปลี่ยนทิศ / Pian Tid
- เปลือยเปล่า / Nude
- ไม่ต่าง / Mai Tang
- ปัจจุปันนา / Pud Ju Pun Na
- น้ำค้าง / Nam Khang
- พัก / Rest
- พบพาลาจาก / Pop Pa La Jak
- ต่างด้าว / Alien
- นิทานวันวาน / Ni Tan Wan Wan
シンガポールのフェスに出演したり、2013年の夏には日本でのツアーを成功に収め、いまタイで最も盛り上がっているインディーバンド「DESKTOP ERROR」。彼らが今年2月にリリースした2ndアルバム『Keep Looking At The Window』。そのリリース記念ライブの会場で購入しました。バンド名もさることながら、アルバム名もコンピューターが動作してくれなくて呆然としている様子を想起させます。
バンド名から勝手な想像をして、てっきり打ち込み系の音楽なのかと思っていたのですが、ライブ冒頭はタイの伝統楽器を混ぜたアコースティック・セット。繊細で緊張感のある音の展開に、否が応でも引き込まれます。後半は打って変わってギターをかき鳴らす熱い演奏で、バンドの振り幅の広さには驚きました。
アルバム一枚を通して聞いても、曲調の移り変わり方にバランス感覚のよさを感じさせられます。何度も繰り返し聴きたくなる名盤です。
おかしな名前はキャッチー。
かっこよさは別にして、一度耳にしたら頭から離れなくなります。さらに楽曲が良ければ、名前とのギャップにトドメを刺され、恋に落ちてしまうことは必至。「アホな名前だなー」って思った瞬間から、そんな策略にまんまとハマッてしまっているのです。
なんも考えないで付けたような名前でも、綿密にイメージ戦略がなされているのかもしれません。腹黒いなあ~。
国を問わず「なんでそんな名前?」っていうバンド名は時々目にしますが、彼らもきっとそういうことだと思うことにしました。
いしいこうた

1988年生まれ。編集者。Webマガジンの編集などを経て2013年3月より意味もなくバンコクへ引っ越す。編著書に『GIF BOOK』(BNN新社)など。環ROY『ワンダフル』MVには5秒間タイっぽい映像を混ぜておきました。