欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVE レト』。17回目はフーバスタンクの2003年のセカンド・アルバム『ザ・リーズン』収録のタイトル曲「ザ・リーズン」。フーバスタンクの名を世界的に知らしめた大ヒット曲。このアルバムは現在までアメリカ国内だけで230万枚以上売れている名盤よ。
「The Reason」by Hoobastank
アルバムからの2枚目のシングルとしてリリースされたこの曲。シンプルな音、シンプルなメロディゆえ、歌詞がとてもよく聞こえるわよね。
この『The Reason』というアルバムについてボーカルのダグ・ロブはこう言っているの。
「A lot of it is about asking questions or questioning all that people see. It’s not all about religion. “Out Of Control” is about that and about opening your eyes after being blinded by being devoted to anything」
——このアルバムの内容は、みんなが普通に見聞きしていることに疑問を投げかけることについてだ。全部が全部、宗教や信心に関することじゃない。「Out of Control」は宗教的かな。盲目的に何かに自分を捧げた後で目覚めるという内容だから。
親や周囲の人間から「これは正しい」や「これは間違っている」と言われたことに対して疑問を抱く……これは若くても年をとっても大事なこと。疑問を持つことで自分なりの正解を導き出せるから、「周りがそうだから」と言われたことを鵜呑みにしないで、辛くても苦しくても考えることが重要なの。そうやって考えた後で辿り着いたことのひとつがこの曲。
I’ve found a reason for me(自分にとっての理由を見つけたよ)
To change who I used to be(過去の自分を変える理由を)
A reason to start over new(新たにやり直す理由を)
And the reason is you(それが君なんだ)
「I have to say before I go」(行く前に伝えなきゃダメなんだ)と言っているくらいだから、別れを決意した歌ね。でも、新たに始める決意を導いた一番の理由が「君」ということを知って欲しい、と。「君」とのさまざまな経験、「君」に与えた苦痛と流した涙を受け止められる人になれたらよかったのに、それができないからこそ、この言葉を伝えたい、と。(歌詞を読んでみてね!)
誰しも「I’m not a perfect person」(僕は完璧な人間じゃない)なのだから、過ちに気付き、それを認め、そこから一歩踏み出すことが本当に大切だと思うわ。苦悩や苦痛からしか人は学べないもの。歌詞としてはありきたりな言葉が続くけど、だからこそ聞く者が自分を投影できる核心をついたものになっているの。作り手の自己顕示欲を乗り越えた後の言葉の力強さは言霊として聞く者の心に響くというお手本のような曲よ。
中山美樹(Miki Nakayama)