欧米の新旧ヒット・ソングから隠れた名曲まで、特に印象的な英詞を紹介するLOVEいっぱいのコラム『LOVEレト』。15回目はアヴェンジド・セヴンフォールドの2007年のアルバム『アヴェンジド・セヴンフォールド』収録のバラード「ディア・ゴッド」。これは2009年12月28日に急死したドラマー James “The Rev” Sullivanが参加した最後のアルバムになってしまったの。
「Dear God」by Avenged Sevenfold
ツアー中(being on the road)のステージ、オフステージの模様を繋ぎ合わせたMV。グラマラスな生活を想像しがちだけど、自分の人生を捧げてもいいと思える仕事には寂しさが付き物ってことね。
アメリカのバンドが国内ツアーを行うときは車やバスでの移動がほとんど。熱気溢れる華やかなステージと対局にある移動中は、自宅や故郷に残してきた恋人や家族に対する想いが募ってしまうもの。そんな心情を表したのがこの曲ね。
「A lonely road, crossed another cold state line」(何もない道路、また無情な州境を越えた)とき、「Miles away from those I love, Purpose hard to find」(愛する人たちから遠く離れ[た寂しさに]目的が何かを見失いがちになる)のは想像に難くないわよね? ここでの「those I love」は「those who I love」を短くしたもので、「those who〜」は「〜する人たち」の意味。本来この「who」は「whom」なんだけど、アメリカでは「whom」は古くさい言い方に聞こえるみたいであまり使わないようよ。
ライブ後に次の町に向かって長距離移動を始めることが多いから、休憩でバスを降りても、「There’s no one here while the city sleeps and all the shops are closed」(町が寝静まり、店も閉まっている今、僕はひとりぼっち)なわけ。そりゃあ、人恋しくなるわよ! そして「Dear God, the only thing I ask of you is to hold her when I’m not around」(神様、僕が今、唯一願うことは、彼女をこの手で抱くこと。彼女の横にいないときでも)。無理と承知で神頼み……裏返せばホームシックを感じるくらい「彼女」(=恋人や奥さん)を愛しているってことだし、遠く離れている現状がその想いを増々強くさせるのね、きっと。
I found you, something told me to stay
(君と出会ったあと、僕の中の何かが離れちゃダメと言ってた)
I gave in, to selfish ways
([でも]その言葉を抑えたんだ、ワガママを通すために)
And how I miss someone to hold
(そして腕の中にいるべき人への思慕が募る)
When hope begins to fade…
(希望が色褪せ始めると……)
短いセンテンスで緩急を入れながら情景を綴りつつ、しっかり韻を踏んでいるので流れがとてもスムーズなことにみんなも気付くはず。単語の音を心地よくメロディに乗せるコツがここにあるんじゃないかしら。
Journeyの「Faithfully」が20世紀のlove song on the roadなら、この曲は21世紀のそれ。Behind the scene(舞台裏)を綴った佳作ね。
中山美樹(Miki Nakayama)