ユウイチロウ“ICHI”ナガイ氏 UAD/Apolloシリーズ・ソフトウェアv9.1を語る

レポート by 篠崎賢太郎(サウンド&レコーディング・マガジン編集部) 2017年3月29日

IMG_2613

先日、UNIVERSAL AUDIO UAD/Apolloシリーズのソフトウェアがバージョン・アップし、v9.1へと進化した。Windows 10環境でのマルチユニット接続(Thunderboltモデル)や、FireWire接続モデルでのConsole 2ソフトウェア対応、そして5種類の新しいプラグインが追加。来日中の同社インターナショナル・セールス・マネージャー、ユウイチロウ“ICHI”ナガイ氏に聞いた。

── v9.1がリリースされましたね。

ナガイ 昨年のv9.0で、Thunderbolt接続によるWindows環境のサポートが実現しました。お客様にはMac/Windowsといったプラットフォームや所有モデルを気にすることなく、UADを使っていただきたいと思っていますので、今回もそうした点の改善に取り組みました。まず、FireWire接続モデル(Mac/Windows)をお持ちのお客様はConsole 2(UADのI/Oソフト)を今まで使うことができなかったのですが、v9.1から対応可能となっています。また、Macでは既に対応していたマルチユニット(Thunderbolt端子を持つApolloインターフェースを最大4台までカスケード接続して、I/Oのルーティングなどができる機能)に、Windows 10環境も対応しました。

── マルチユニットの例として、どんな使い方が考えられますか?

ナガイ お客様のニーズはいろいろで、アンケートを取っても全員一致することはありません。その中でも、4基のプリアンプ、豊富なアナログ/デジタル入出力、2系統のヘッドフォンを備えたApollo 8のプロファイルはかなり多くのユーザーたちのニーズをカバーします。ドラム録りなどマイクプリの数が必要な人にはApollo 8Pが最適です。さらにアウトボードやシンセを多く使うケースでは「マイクプリが無くても、良質なA/Dさえあればいい」と考える方も多く、そういう用途にはApollo 16が選ばれやすいですね。また、Apollo Twin MK2はモニター・コントローラーとしての役目のほか、小型なのでモバイル用途でも使えます。これらは単体でも十分な働きをしてくれますが、特徴を組み合わせることでさらに面白いことができる……例えば自宅のブースに演奏者とApollo 8をセッティングして、コントロール・ルームからApollo Twin MK2のトークバック・マイク経由でやり取りをするなど、2つの部屋を使った作業の際にマルチユニットが効果的です。一つの大きなシステムをいきなり組むよりも、1つ1つがインターフェースとして独立しつつ、マルチユニット時にはDSPパワーを合わせて使えるという現代的な考え方に基づいており、私たちはこれを“モジュラー方式”と呼んでいます。

── 同じバンド/ユニットのメンバーが1人1台、Apolloシリーズを持って録音データをやり取りし、最後のミックス時には全員のモデルをつなげてDSPパワーを増やすという方法も考えられますね。

ナガイ その通りです。ただしApollo Twin MK2のみ、マルチユニット内に入れられる数が1台となっています。

── v9.1から加わった新しいプラグインについても教えてください。

▲ v9.1から加わった新しいプラグイン5種類

▲ v9.1から加わった新しいプラグイン5種類

ナガイ いろんなユーザーがいらっしゃる中で、もちろんコアはエンジニア/プロデューサーです。ただ、最近はクリエイターの方も多いですし、ギタリストのユーザーもかなり増えてきていいます。今回は、UNIVERSAL AUDIOが作ったものがSSL 4000 E ChannelStrip CollectionとMoog Multimode Filter Collectionの2種類、サード・パーティ製がBrainworx bx_subsynth Subharmonic Synth、OTO BISCUIT 8-bitEffects、Fuchs Overdrive Supreme 50 Amplifierの3種類という計5種類で、前述のユーザーたちすべてをカバーするラインナップになりました。

新プラグイン①
SSL 4000 E Channel Strip Collection

(Unisonテクノロジー対応のプリアンプ & チャンネル・ストリップ)

ナガイ 既にSSLのプラグインも出していますが、今回はUnison対応のチャンネル・ストリップということでゼロから作り上げました。エミュレートのモデルとなるハードもSSLがJENSEN製トランスを組み込んだモデルを送ってくれたので、それを元にプラグイン化しています。Unison対応なので、あのSSLのヘッド・アンプで録音をすることが可能です。

新プラグイン②
Moog Multimode Filter Collection

(マルチモード・フィルター)

ナガイ 新しく加わったMoog Multimode Filter XLは、既存のMoog Multimode Filter Legacyのバージョン2とも言えるプラグインです。私たちが出しているUADプラグインは、ほとんどが実機を丸ごとエミュレーションしたものですが、MOOGに関しては新しい試みを毎回しています。既に出ているMoog Multimode Filter Legacyも、基本はMoogerfooger、インプットはMinimoog、そしてMinimoog Voyagerのモジュレーションを追加しており、実物が存在しないものでした。今回のバージョン2では新たな機能としてシーケンサーを組み込み、さらにフィルター・タイプにノッチも加わりました。また、Sub37が元になった部分もたくさんありますね。効きも滑らかなので、フィルター好きの人には楽しいプラグインになっていると思います。ディストーション・セクションも何かをひずませたいというときに通すと面白いですよ。

新プラグイン③
Brainworx bx_subsynth Subharmonic Synth

(サブハーモニック・シンセサイザー)

ナガイ レコーディング・スタジオの秘密兵器=DBX 120XPを核としたサブハーモニック・シンセで、このプラグインではローエンドに3ボイスの低域を加えます。さらに時代のプロダクションに合うよう、トーン・シェイピングやサチュレーション、またM/Sでの低域コントロールも可能にしました。世界では“ローエンドをどう作るか”が勝負所になっていますよね。そういったベース・コントロールに役立つプラグインです。

新プラグイン④
OTO BISCUIT 8-bit Effects

(ビット・クラッシャー/ローファイ・マルチエフェクト)

ナガイ 元のモデルは“カルト・クラシック”とも言うべき知る人ぞ知るツールで、SOFTUBEがプラグイン化しています。いわば8ビット・クラッシャーで、リズム・マシンのようなステップ・シーケンサーによって、動きのある変化が楽しめます。特に、EDMのプロデューサーが音をどんどん加工していく際にピッタリですね。UADプラットフォームだけのリリースです。

新プラグイン⑤
Fuchs Overdrive Supreme 50 Amplifier

(ギター・アンプ)

ナガイ 1980年代のDUMBLE Overdrive Specialに敬意を表して開発されたチューブ・ギター・アンプ、FUCHS Overdrive Supreme 50をプラグイン化しています。元のDUMBLE Overdrive Specialはラリー・カールトンらが使ってきた、ちょっとひずみのあるギター・サウンドが得られるアンプですね。その第二世代とも言えるOverdrive Supreme50は、そのDUMBLEの基本回路を持ちつつ、使いやすいようにチューニングがなされています。プラグイン化を手掛けたのはBRAINWORXで、これもUADプラットフォームだけのエクスクルーシブ・リリースになります。

── それぞれ個性的なプラグインが登場しましたね。

ナガイ 提携ブランドからプラグイン化の要望も多いですし、サード・パーティ製も含めてこれからもたくさん作っていきたいと思います。今年はあと3回リリース予定がありますので、楽しみにしていてください。

 

TUNECORE JAPAN