【音響設備ファイルVol.36】THE BOTTOM LINE

音響設備ファイル by Text:Yuki Nashimoto Photo:Noriaki Yasuda 2018年5月25日

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今回訪れたのは歴史あるライブ・ハウス、名古屋THE BOTTOM LINE。かつてニューヨークにあった同店名のフランチャイズとして誕生し、昔のアメリカンなクラブの雰囲気を楽しめる空間だ。今回新たにBOSE ShowMatch DeltaQアレイ・スピーカー/サブウーファーを導入したとのことで、その使用感について伺った。

ボーカルが奇麗に出るアレイ・スピーカー

 名古屋駅から電車で10分、今池駅の3番出口を降りてすぐの場所に位置するTHE BOTTOM LINE。レトロな雰囲気のライブ・ハウスで、木目調の床が居心地の良さを感じる造りになっている。ボトムラインジャパンの社長、蔵原郁智氏がオープンの経緯について語ってくれた。

 「ニューヨークの名門クラブであるTHE BOTTOM LINEをそのまま日本に建てようというコンセプトで、フランチャイズ契約を結んで1989年にオープンしました。ロゴの上にALLAN PEPPER&STANLEY SNADOWSKYと小さく書いてあるのは、本店オーナーたちの名前なんですよ。その2人がここに来て、店内の色合いなどを決めて造られました。当初はタワー・オブ・パワーやスタッフなどの海外アーティストを中心にライブが行われていまして、それをきっかけに全国的に当店の名前が認知されていきました」

▲左からボトムラインジャパンの社長の蔵原郁智氏、同社音響の宮川慧氏

▲左からボトムラインジャパンの社長の蔵原郁智氏、同社音響の宮川慧氏

 30年近く営業している老舗だが、音響機材は時代に合わせて意欲的にアップデートしているそうだ。その中でも最も新しい機材がBOSE ShowMatch DeltaQアレイ・スピーカー/サブウーファー。メイン・スピーカーにSM5×12、サブウーファーには18インチ・ユニットを搭載したSMS118×12を設置しており、パワー・アンプは同社のDSPを内蔵したPowerMatch PM8500Nを採用している。「BOSEさんとは縁があって導入するに至ったんです」と音響の宮川慧氏が導入の経緯について話す。

 「以前BOSE F1 Model 812の試聴会を当店でやっていただいたのがきっかけです。それからShowMatchのデモ機を貸していただいて、実際にライブで鳴らしたときの使用感を確かめることができました。長い期間貸していただき、乗り込みのPAの方々からもポジティブな意見を聞くことができたので、それも加味して導入することになったんです」

▲ステージ右側に設置されているShowMatch DeltaQアレイ・スピーカー/サブウーファー。上からメイン・スピーカーのSM5×6、サブウーファーにSMS118×6。メイン・スピーカーのウェーブ・ガイドは、上から3つ目までが水平70°、そこから下は水平100°にセッティングされている。また、サブウーファーはカーディオイドで使用しているため、中段がステージ側を向いている。写真左側のインフィルとして設置されているスピーカーは、同社のRoomMatch Utility RMU108。ステージ左側も同様のセッティングだ

▲ステージ右側に設置されているShowMatch DeltaQアレイ・スピーカー/サブウーファー。上からメイン・スピーカーのSM5×6、サブウーファーにSMS118×6。メイン・スピーカーのウェーブ・ガイドは、上から3つ目までが水平70°、そこから下は水平100°にセッティングされている。また、サブウーファーはカーディオイドで使用しているため、中段がステージ側を向いている。写真左側のインフィルとして設置されているスピーカーは、同社のRoomMatch Utility RMU108。ステージ左側も同様のセッティングだ

▲会場の両脇にスタックされているのは、パワー・アンプのBOSE PowerMatch PM8500N×5。上から2つがメイン・スピーカーとインフィルに使用されており、下の3つはサブウーファーに割り振られている

▲会場の両脇にスタックされているのは、パワー・アンプのBOSE PowerMatch PM8500N×5。上から2つがメイン・スピーカーとインフィルに使用されており、下の3つはサブウーファーに割り振られている

▲1階にある系列店のBL Cafe。最初はこちらでShowMatchが試されていたのだが、THE BOTTOM LINEの広さでも使用できると判断されて導入に至った

▲1階にある系列店のBL Cafe。最初はこちらでShowMatchが試されていたのだが、THE BOTTOM LINEの広さでも使用できると判断されて導入に至った

 経営者視点からも良いスピーカーであると語るのは蔵原氏。導入時の価格とランニング・コストに優れていると語る。

 「まず、コスト・パフォーマンスが非常に優れていますね。他社製品で同じクオリティのものをそろえると、あと倍近くはかかると思うんです。また、BOSEのアンプは電源効率が良く作られているので、電気代が安く済むんですよ。これは経営者にとって非常にありがたいことですよね。価格面からのメリットだけではなくサウンドも納得のクオリティで、低域から高域までものすごく滑らかです。導入してからさまざまなジャンルで鳴らしていますが、オールマイティに美しい響きが得られています。アーティストからも“ステージ上に音が回ってこなくて演奏しやすい”と、良い評判をいただいています。それに加えて機材のメインテナンスを考えたときにBOSEは日本法人があるので、パーツ供給や修理を迅速に対応してもらえるという点も大きなポイントでした。導入時の誠実な対応もあり、アフター・ケアに関しても信頼できるメーカーだと思っています。ライブ・ハウスでは機材トラブルはつきものなので、大事なところですよね」

▲2階席からの写真。メイン・スピーカーShowMatch SM5の上部が、こちら側を向いていることが分かる

▲2階席からの写真。メイン・スピーカーShowMatch SM5の上部が、こちら側を向いていることが分かる

▲テーブルが置かれた2階客席後方の様子。こちらもレトロな良い雰囲気だ。主に関係者席として開放しているが、今後は客も入れるようにしようと考えているそうだ

▲テーブルが置かれた2階客席後方の様子。こちらもレトロな良い雰囲気だ。主に関係者席として開放しているが、今後は客も入れるようにしようと考えているそうだ

 気になる音質の話が出てきたところで、宮川氏が実際に使用した感想を詳細に教えてくれた。

 「フルレンジ・モジュールは8インチ・ウーファー×2とコンプレッション・ドライバー×4の2ウェイにもかかわらず、すごくフラットですね。解像度も高く、EQをかけたときに0.5dBくらいの差でも顕著に分かります。会場が真四角でないということもあり、音の反射やカバー・エリアなどの問題を抱えていたのですが、ShowMatchに変更してからはさまざまな点が改善されました。2階席でも音がダイレクトに届くようになりましたし、会場の後ろにいても低域を十分感じられるようになったんです。ウェーブ・ガイドを変えて水平指向性をコントロールできるのもクリアなサウンドに大きく貢献していると思います。中でもShowMatchを導入して一番良かったのは、ボーカルがすごく奇麗に出るようになったことです。“かつてないボーカル・クラリティ”とうたっているだけあります。音質も良いのですが高域から低域までハウリング・マージンが高く、無理なく音量を上げられるんです。近年増えているアイドルのライブでは声の音量を上げることが少なくないので、非常に恩恵を感じています。そういった点で時代にマッチしたスピーカーだと思いますね。PAをする上で歌がしっかり聴こえることが一番大切だと思っているので扱いやすいです」

▲PAのモニター用に設置してあるBOSE RMU206。モニタリングの補助として会場後方の上部左右に設置してあり、「お客さんにはあまり気付かれないんですよ」と宮川氏。パワー・アンプはステージ横のPowerMatch PM8500Nを使用している

▲PAのモニター用に設置してあるBOSE RMU206。モニタリングの補助として会場後方の上部左右に設置してあり、「お客さんにはあまり気付かれないんですよ」と宮川氏。パワー・アンプはステージ横のPowerMatch PM8500Nを使用している

 

Danteネットワークで構築されたシステム

 コントロール・システムについても宮川氏に話を聞かせてもらった。コンソールのYAMAHA CL5をはじめとした機材は、接続にDanteを採用している。

「ネットワーク接続にすることで、瞬時にどの機材にもアクセスできるようにしています。EQやディレイをトータルでかけるときに、オーディオ・シグナル・プロセッサーのBOSE ControlSpace ESP-4120を使用しています。コンピューター画面上の分かりやすい図を見ながら操作できるので、直感的に処理ができます。CL5は日本でも指折りの導入数を誇るコンソールだと思うので、乗り込みのPAエンジニアも迷わず使えることが一番の利点です。以前はアナログ・コンソールを使用していたのですが、デジタルになったことで細かいところまで聴こえるようになり、ミックスした状態でもチャンネルごとの変化がさらに分かるようになりましたね。内蔵エフェクトの種類がかなり充実していて効きもばっちりなので、アウトボードを使用せずに、内部エフェクトだけで完結できるようになりました。内蔵エフェクトはプレミアム・ラックをよく使うのですが、一番使うのがダイナミックEQです。そのほかにマルチバンド・コンプレッサーやRUPERT NEVE DESIGNS Portico 5043のシミュレーターもよく使用しています」

▲メインコンソールのYAMAHA CL5。宮川氏いわく「最初はフェーダー数が少ないかなと思ったんですけど、レイヤーをうまく使えば全然足りますね」とのこと

▲メインコンソールのYAMAHA CL5。宮川氏いわく「最初はフェーダー数が少ないかなと思ったんですけど、レイヤーをうまく使えば全然足りますね」とのこと

▲コンソールの横に設置されたラック・システムで、上からYAMAHA SPX2000、ROLAND SDE-3000、TC ELECTRONIC D-Two、YAMAHA RI8-D、BOSE ControlSpace ESP-4120、FURMAN Rack Rider RR-15。上部のコンピューターは、ESP-4120の操作用として使用している。アウトボード類は乗り込みPAの要望があったとき用に念のため設置しているとのこと

▲コンソールの横に設置されたラック・システムで、上からYAMAHA SPX2000、ROLAND SDE-3000、TC ELECTRONIC D-Two、YAMAHA RI8-D、BOSE ControlSpace ESP-4120、FURMAN Rack Rider RR-15。上部のコンピューターは、ESP-4120の操作用として使用している。アウトボード類は乗り込みPAの要望があったとき用に念のため設置しているとのこと

▲ステージ袖にあるYAMAHA PM5D-RH。通常はCL5でモニター・スピーカーをミックスしているが、モニター・スピーカー用のPAエンジニアがいるアーティストの場合、こちらも使用できるようにしている

▲ステージ袖にあるYAMAHA PM5D-RH。通常はCL5でモニター・スピーカーをミックスしているが、モニター・スピーカー用のPAエンジニアがいるアーティストの場合、こちらも使用できるようにしている

 スタンディング約700人、着席約300人のキャパシティでShowMatchの音を聴けるライブ会場は国内ではまだ無いと思われるので、THE BOTTOM LINEでその音をチェックしてみてほしい。

 

ALL BOSE PRO SPEAKERS試聴会(名古屋)

6月13日(水)、14日(木)、この名古屋THE BOTTOM LINEにて、BOSEのプロフェッショナル向けスピーカーを体験できる“ALL BOSE PRO SPEAKERS試聴会”が開催される。THE BOTTOM LINE常設のShowMatch DeltaQ Array Loudspeakerから、パーソナルPAのS1 Proまで多くの製品を体験できるチャンス。詳細は下記まで
https://probose.jp/news/allbosepro_nagoya/
 
ALLBOSESPEAKERS

■関連リンク

THE BOTTOM LINE
http://www.bottomline.co.jp/

BOSE ShowMatch DeltaQスピーカー
https://probose.jp/cat_product/showmatch/

サウンド&レコーディング・マガジン2018年7月号より転載

TUNECORE JAPAN