「SE ELECTRONICS V Kick / V Beat」製品レビュー:ドラム収音に特化したカプセルを内蔵するダイナミック・マイク2機種

SE ELECTRONICS V Kick / V Beat

REVIEW by yasu2000(origami PRODUCTIONS) 2019年6月3日

SE-V-BEAT/kick

SE ELECTRONICSは、マイクだけでなくマイク・スタンドやポップ・ガード、リフレクション・フィルターなどのアクセサリーまで幅広く製造しているブランドだ。今回はドラムに向いた同社のマイク、V KickとV Beatを紹介する。

V Kickは周波数特性を切り替え可能
計4パターンの異なるサウンドを実現

V Kickはバス・ドラム用、V Beatはスネア/タム用のマイクだ。両方とも頑丈にできていることが見た目からも感じ取れる。マイク・スタンドとマイク・ケーブルを接続するコネクターがカプセル側のボディと別になっているため、重みのあるマイク・ケーブルを使用するとき、もしくは演奏中引っ張られてしまったときにマイクの角度が変わりにくいようになっているのが特徴だ。角度調節の接続部分に負担が少ない分、劣化しにくくて長持ちすることは間違いないだろう。さらに、コネクターが下方向に並んで固定されているため、占有面積が少なく配線整理がスムーズにできる。

▲V Kick/V Beat共に、XLR端子がスタンド・マウント部と並んで配置されている。配線の整理やマイクの角度調整が行いやすい

▲V Kick/V Beat共に、XLR端子がスタンド・マウント部と並んで配置されている。配線の整理やマイクの角度調整が行いやすい

V Kickに内蔵されたDMC7 SBカプセルは、特殊アルミニウム・ボイス・コイルを使用した同社のマイク、V7/V7Xと同じ技術を採用して楽器用にカスタムしたもの。V BeatもV7と同じ技術を使ってカスタムされたDMC7 Xカプセルを搭載する。指向性がスーパー・カーディオイドなので近接効果を容易に調整可能。周囲の音、特にシンバル類のかぶりを軽減してくれる構造になっているとのことだ。

両マイクに内蔵されたカプセル・サスペンションはショック・マウントを不要にし、振動によるノイズを軽減してくれるという優れもの。別売りのV Clampを使用すれば、リム部分にクリップを引っ掛けて固定も可能だ。

▲リム部分に引っ掛けて固定し、垂直方向の調整が行いやすくなるV Clamp(6,000円)。ケーブル端子と干渉しないように小さなナットを採用している。ネジは3/8インチ径となっており、他社製マイクも設置可能だ

▲リム部分に引っ掛けて固定し、垂直方向の調整が行いやすくなるV Clamp(6,000円)。ケーブル端子と干渉しないように小さなナットを採用している。ネジは3/8インチ径となっており、他社製マイクも設置可能だ

V Kickの背面には周波数特性カーブを切り替えられる2つのスイッチが付いている。左側のスイッチはサウンド全体に影響し、classicでは温かな丸みのある音、modernではローエンドとハイエンドを強調したアグレッシブな音に。右側のスイッチは高域に影響し、classicでは中高域をブーストしつつ丸みのある音、modernではよりクリアでトランジェントに富んだ音になるという。2つのスイッチを組み合わせて4パターンの異なるサウンドを実現可能だ。各パターンに共通しているのは、低域(30~60Hz)がずっしりしていること。シンバル類がかぶる高域は抑えられていてミックスがしやすい。全体的に前に押し出されてくっきりした音だが、オフマイクをレイヤーすることで奥行きと厚みのあるリッチな音になる。

▲V Kickの本体背面には周波数特性のカーブを変更する2つのスイッチが備わっており、classicとmodernの2種類を切り替えられる。左側のスイッチはサウンド全体、右側のスイッチは高域用だ。計4パターンの組み合わせが可能

▲V Kickの本体背面には周波数特性のカーブを変更する2つのスイッチが備わっており、classicとmodernの2種類を切り替えられる。左側のスイッチはサウンド全体、右側のスイッチは高域用だ。計4パターンの組み合わせが可能

次は4パターンそれぞれのサウンドの特徴を説明しよう。“左側=classic/右側=classic”にした場合は明りょうな中域と程良い硬さの高域が得られてミックスしやすい。ちょうどビーターの音域が強調されているので埋もれることが無く、ロックやポップスに合いそうな感じだ。“左側=classic/右側=modern”は明りょうで柔らかいイメージの中高域で、アコースティックな曲に合いそうな印象。“左側=modern/右側=classic”では低域が強調されてざらっとする感じで、ヒップホップやローファイなビートに合いそうだ。AKG D112と相性が良く、オフマイクにD112を立ててレイヤーすると中域のふくよかさが足される。いろいろなオフマイクと混ぜるにはもってこいのパターンだろう。“左側=modern/右側=modern”は高域が強調される感じだが、中域がモッチリとしていて、“左側=classic/右側=classic”のパターンと真逆なイメージ。明るさと柔らかさがあり、聴き心地が良い。

 

重心が低く抜けも良いV Kick
明りょうで程良い硬さのあるV Beat

ドラム・セットにV Kick/V Beatを設置し、筆者がよく使うマイクと聴き比べてみた。バス・ドラムに使用したV Kickは先述通り、どのカーブ設定でも低域がずっしりしていて音が前に出る感じだ。中低域(90Hz~130Hz)の厚みは普段セットするマイクほどではないが、全体的に重心が下にあって、かつ抜けが良い。スネア・トップに使用したV Beatは中高域が明りょうで抜けも良く、程良い硬さがある。スネア・ボトムのV Beatは中域に厚みが合って太く明るい音。スネア・トップとスネア・ボトムをそれぞれV BeatとSHURE SM57にして混ぜ合わせると、今っぽい明りょうさと立体感、昔っぽい懐かしさと奥深さがあるハイブリッドな音になった。タム/フロア・タムでの使用でも、中域に厚みがあり程良い音の硬さを感じる。奥行きは普段使用するマイクの方があるが、V Beatは前に押し出されてくっきりする印象だ。

V Beatを使用したスネアとタムは、普段のセッティング時よりも半音ほどピッチが低くなったかのように感じた。ドラムのチューニングではなく、マイクを変えるだけでトーン・ダウンができるというのは有効活用できそうだ。

今回、ドラムのトップにはNEUMANN U87 AIをステレオで使用した。音に奥行きのあるマイクなのでV Kick/V Beatと相性が良く、全体のドラム・サウンドがずっしりとしつつ、明るく立体感のあるサウンドになる。前に出てくる印象のV Kic
k/V Beatと、奥行きのあるそのほかのマイクを混ぜ合わせることで新たなドラム・サウンドに変えることが可能であり、組み合わせによってあらゆるジャンルに対応できるだろう。

 
サウンド&レコーディング・マガジン 2019年6月号より)
 

SE ELECTRONICS

V Kick / V Beat

V Kick:29,800円、V Beat:22,800円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
●V Kick ▪形式:ダイナミック(DMC7 SBカプセル) ▪ボイス・コイル素材:アルミニウム ▪マグネット素材:ネオジム ▪指向性:スーパー・カーディオイド ▪周波数特性:20Hz〜19kHz ▪感度:0.2/0.4mV/Pa(–69/–75dBV) ▪インピーダンス:300Ω ▪出力端子:XLR ▪外形寸法:60(φ)×135(H)mm ▪重量:468g ●V Beat ▪形式:ダイナミック(DMC7 Xカプセル) ▪ボイス・コイル素材:アルミニウム ▪マグネット素材:ネオジム ▪指向性:スーパー・カーディオイド ▪周波数特性:30Hz〜19kHz ▪感度:2.0mV/Pa(–54dBV) ▪インピーダンス:300Ω ▪出力端子:XLR ▪外形寸法:61(φ)×110(H)mm ▪重量:347g

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