「OVERLOUD THU」製品レビュー:膨大なアンプ/エフェクトを収めたギター・アンプ・シミュレート・ソフト

OVERLOUD THU

REVIEW by 鈴木Daichi秀行(StudioCubic) 2019年5月7日

thu

OVERLOUDからギター・アンプ・シミュレート・ソフトのTHUが発売されました。筆者も前バージョンから使っており、待望のアップデートということで機能がどれほど進化したのかいろいろと試してみたいと思います。

アンプの真空管を換装して
オリジナル・アンプを作成可能

THUはMac/Windowsに対応しており、AAX/AU/VSTまたはスタンドアローンで動作します。89種類のギター・アンプ、4種類のベース・アンプ、50種類のギター・キャビネット、2種類のベース・キャビネット、77種類のペダル&ラック・エフェクター、18種類のマイク・モデルが収録されており、トータルするとなんと239種類! ギター&ベース・レコーディングに必要となるギアを自在にカスタマイズして、幅広い音作りが可能です。

ユーザー・インターフェースはすっきりとしていて非常に分かりやすいです。画面左上にプリセット・カテゴリーが表示され、その下にカテゴリー内の各プリセットが並びます。画面右側のコンポーネント・コラムにはアンプやキャビネット、エフェクトなど、収録されているすべてのモジュールがリストアップされており、使う際は中央画面の好きな位置にドラッグ&ドロップするだけです。

ギター・アンプでは、プリアンプの増幅素子を12AX7や12AT7、シリコン、ゲルマニウム・トランジスターから選べ、パワー・アンプでは6L6や6V6、EL34、EL84、KT88、5881、ソリッド・ステート、クラスA……と好きなものに変更することが可能。元のアンプを選び、真空管を変更するだけで自分だけのオリジナル・アンプを作り出すことができます。さらに面白いのは、連続可変で電圧の変更ができる点です。ノブを動かしたときのノイズもリアル! 本物のアンプではなかなか怖くてできない技ですね。

キャビネットを選ぶと、それに合ったマイクが自動でセッティングされます。もちろん好きなマイクを選び、ドラッグ&ドロップして位置を調整することも可能。キャビネットのプロパティ画面では、2種類のオンマイクの設定のほか、アンビエンスも5種類から選ぶことができ、ミックス・バランスの変更や2本目のマイクの位相反転、ハイパス/ローパス・フィルターなどの設定もできますマイク位置やブレンド具合を自在に変えられるアンプ・シミュレーターは多いですが、THUはキャビネット背面に立てたリア・マイクの音もブレンド可能。キャビネット背面を狙ったマイキングは実際のレコーディングでも行うテクニックです。

▲キャビネットのマイキング設定画面。マイクは2本立てることができ、モデルは18種類から選択できる。2本ともオンマイクだが、別途Ambienceという項目でオフマイクの音を加えることが可能だ。オンマイク2本のレベル調整以外にも、キャビネット背面のマイク、45°に傾斜してセッティングしたマイクの音もブレンドできる

▲キャビネットのマイキング設定画面。マイクは2本立てることができ、モデルは18種類から選択できる。2本ともオンマイクだが、別途Ambienceという項目でオフマイクの音を加えることが可能だ。オンマイク2本のレベル調整以外にも、キャビネット背面のマイク、45°に傾斜してセッティングしたマイクの音もブレンドできる

DAWでアンプ・シミュレーターを使う場合、ダイレクト音のインプット・レベル設定に悩むことが多いと思います。そんな悩みを解決してくれるのが、Input Level Adjustmentという機能。まず画面左上のLEVELというボタンをクリックしてメーターを表示させます。それからギター/ベースのボリューム・ポットを最大にして強めに弾き、メーターの緑色のゾーンに入るくらいのレベルになるように、インプット・レベルを合わせればOKです。アンプのひずみ加減などはインプット・レベルによって左右されてしまう部分なので、ここでしっかりリファレンスが取れる安心感は大きいですね。

 

信号のパラレル処理も可能
ライブで使えるルーパー機能も装備

エフェクターは定番のペダルから、レコーディングやミックスで使うラック・エフェクトまで網羅されています(ディレイだけでも9種類!)。ハードウェアのモデリングだけでなく、筆者がミックスでよく使用する同社のプラグイン、Breverb2と同じアルゴリズムのリバーブも搭載されていました。そのほか、倍音を付加して独特の浮遊感あるサウンドを得られるShimme
rが搭載されているところもポイントが高いですね。

2種類のアンプを同時に鳴らしたり、2種類のエフェクトを並列で処理したい場合は、SPLITTERとMIXERというモジュールを使うことで、信号の分岐やそれぞれのミックス・バランスが変更できるようになります。この機能を使えば、ヘビーなひずみにクリーン・トーンを混ぜてアタック感を強調したサウンドを作ったり、別々のアンビエンスで鳴っている音をマージしたりと、より深みのある音作りが可能です。

THUはライブ・パフォーマンスで使うことも想定しており、プラグインでは珍しくルーパー機能も搭載されています。MIDIコントローラーとの親和性も高く、割り当てたい機能を右クリックすると出てくるLearn global MIDIを選び、MIDIコントローラーのボタンを操作するだけでアサインができるのもとても便利だと思います。

最後に、THUに搭載されているRig Playerという機能を紹介しましょう。Rig Playerでは、エンジニアやミュージシャンがセットアップした実際のアンプやマイク、マイクプリ、部屋のアンビエンスなどをサンプリングした“リグ・モデル”を使用可能。独自技術のR2M(Rig to Model)によって、アンプ・サウンドがとてもリアルに再現されます。Rig Playerは真空管の変更などの細かいカスタマイズはできませんが、GainやEQなど、通常のアンプに搭載されている機能の調整は可能です。今後さまざまなアンプを使ったリグ・モデルが追加されると思うので、これからが楽しみな機能ですね。

THUは“アンプ・シミュレーターもここまで来たか!”と驚くようなサウンドに仕上がっています。リグ・モデルを含め、プリセットを選んでいくだけでも“使える”音がたくさん入っており、レコーディングからライブまで活躍できるとても完成度の高いソフトウェアだと感じました。

 
サウンド&レコーディング・マガジン 2019年5月号より)
 

OVERLOUD

THU

オープン・プライス(市場予想価格:27,500円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.7以降(32ビット/64ビット両対応)、AAX/AU/VSTまたはスタンドアローンで動作 ▪Windows:Windows Vista以降(32ビット/64ビット両対応)、AAX/VSTまたはスタンドアローンで動作 ▪共通:INTEL Core I3(1.4GHz)以上、4GBのRAM、1,280×800以上のディスプレイ解像度 ▪対応DAW:APPLE Logic Pro 9以上(M acのみ)、MainStage 2以上(Macのみ)、Garage Band 10以上(Macのみ)、Final Cut Pro X以上(Macのみ)、ABLETON L ive 6以上、AVID Pro Tools 8以降、COC KOS Reaper、MOTU DP 7以上、PRES ONUS Studio One、STEINBERG Cuba se 6以上、Nuendo 5以上

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