「VIENNA SYMPHONIC LIBRARY/Steinway D」製品レビュー:多数のマイク・ポジションで収録したSTEINWAY D-274ピアノ音源

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Steinway D

REVIEW by 牧戸太郎 2019年3月5日

VIENNA_Main

オーケストラ音源の老舗、VIENNA SYMPHONIC LIBRARY(以下VSL)から、ピアノ専用音源のSteinway Dがリリースされた。そのサウンド、備わった機能をチェックしてみよう。

ハンブルク製のD-274をサンプリング
1鍵盤あたり約4,000サンプルを収録

Steinway Dの元となっているのは、1853年にアメリカ・ニューヨークで設立された世界的ピアノ・メーカー、STEIN
WAYのフラッグシップ・モデル“D-274”。STEINWAYはニューヨーク工場とハンブルク工場の2つの工場でD-274を製造しているが、Steinway Dはハンブルク製のD-274をサンプリングした音源となっている。

驚くべきはその膨大なライブラリー容量だ。1鍵盤あたり約4,000、1つのマイク・ポジションあたり約20,000ものサンプルを収録。その総容量は、5種類のマイク・ポジションが使用できるスタンダード・ライブラリーのみで117.9GB、さらに6種類のマイク・ポジションが使えるようになるエクステンデッド・ライブラリー(別売り)を含めると266.2GBにもなる。VSLの専用スタジオであるSynchron Stage Viennaで、同社が独自に開発したソレノイド(自動演奏機構)に基づいた精密な動作制御システム“ロボットの指”が演奏した音をレコーディングしたという。

Steinway Dは、同梱されている専用エンジンのSynchron Pianos(Mac/Windows対応、AAX/AU/VSTに準拠)で読み込んで使用する。画面上部中央に並ぶ“Play”“Mix”“Edit”で設定画面を切り替えることが可能。Play画面ではリバーブやマスター・ボリューム、ダイナミック・レンジの調整のほか、“Body”“Sympathetic”というパラメーターで共鳴音を調整できる。Mix画面は各マイク・ポジションの音量バランスを調整できるミキサーとなっており、選択したプリセットに必要なマイク・ポジションのサンプルがフェーダーに割り当てられる。Edit画面では、ダイナミック・レンジやMIDIの感度、余韻、そのほか演奏上の詳細な設定が可能だ。

▲Mix画面では複数のマイク・ポジションのミックス・バランスを調整できる。クローズやミッドのほか、サラウンド・マイク(エクステンデッド・ライブラリーに収録)も使用可能。あらかじめミックスされたRoom Mixを使えば、マシン・パワーを節約することもできる

▲Mix画面では複数のマイク・ポジションのミックス・バランスを調整できる。クローズやミッドのほか、サラウンド・マイク(エクステンデッド・ライブラリーに収録)も使用可能。あらかじめミックスされたRoom Mixを使えば、マシン・パワーを節約することもできる

画面下部に並ぶConcert/Intimate/Player/Pop/Ambience/Mightyは音色のプリセット。狙う音楽ジャンルやリスニング・ポジションに応じて、サウンドの設定やミックス・バランスを手早く直感的に変えることができる。

 

柔らかなルーム・アンビエンスを含み
キラキラした倍音をしっかりと再現

マイク・ポジションを“Room Mix”、音色プリセットは“Concert”を選択して試奏してみた。近年のヨーロッパのソロ・ピアノ作品で聴けるようなサウンドで、どちらかといえば少し明るめでドライな音色。木造のステージを思わせる柔らかなルーム・アンビエンスがミックスされており、ステージ上でピアノの音を聴いているような距離感がある。また、弾いた瞬間から減衰音に至るまで、キラキラした倍音を含んだSTEINWAY特有の音がしっかり再現されている。ロング・トーンやスタッカートなど、奏法に応じて違う減衰音のサンプルが割り当てられているほか、ハーフ・ペダリングやリペダリングなど、ペダリングに応じたサウンドの違いも忠実に再生された。ぜひリバーブを切り、ドライな音で確かめてほしいポイントだ。Mix画面のミキサーを見てみると、CondenserとMid 1がクローズ・マイクとして、Room Mixがルーム・アンビエンス・マイクとしての役割を果たしているのが分かる。このRoom Mixは、さまざまなマイク・ポジションがあらかじめミックスされており、マシン・パワーを節約することも可能だ。

次はマイク・ポジションを“Decca Tree Multi Mic”にして、音色プリセットは“Concert”を読み込んでみた。デッカ・ツリーのMain L/R、センターのMain Cがアンビエンス・マイクとしてフェーダーに割り当てられ、バランスを調整すると残響感や距離感が変化。ピアノ・ソロのほか、オーケストラや室内楽とのアンサンブルなど、さまざまな音像を想定して音を作り出すことができそうだ。エクステンデッド・ライブラリーに含まれるサラウンド・マイクを駆使すれば、5.1chでホール空間の臨場感を再現することも可能。映画のサウンドトラックなど、サラウンド音響で客席を包むという音楽的な演出も試してみたくなる。

Steinway Dのサンプリング元となったD-274は、クラシックのみならず、ロックやジャズなど、さまざまなジャンルのミュージシャンに愛され、“良い楽器の音色は、ジャンルを問わず万能に響く”ということを証明してきた。Steinway Dを使えば、その名器の表現力を限りなく忠実に再現でき、実際のスタジオ・レコーディングのようにマイク・ポジションなどの調整で狙ったサウンドに仕上げていくことができる。映画やドラマなどのサウンドトラックから、バンド・サウンド、ボーカル曲のピアノ・パートなど、さまざまなシーンで幅広く活躍させてみたい音源だ。

 
サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)
 

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY

Steinway D

35,600円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.10〜10.13、AAX/AU/ VST対応のDAW ▪Windows:Windows 7以降(64ビット)、AAX/VST対応のDAW ▪共通:INTEL Core I5/I7/Xeon以上のプロセッサー、117.9GB以上のハード・ディスク空き容量(エクステンデッド・ライブラリーを含む場合は266.2GB以上が必要、SSDの使用を推奨)、8GBのRAM(16GB以上を推奨)

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