「NATIVE INSTRUMENTS/Traktor Pro 3」製品レビュー:タイム・ストレッチとピッチ・シフトの音質が向上したDJソフトウェア

NATIVE INSTRUMENTS Traktor Pro 3

REVIEW by Q'HEY 2019年2月8日

traktor pro 3

ハウス/テクノ・シーンのスタンダードとして愛用されているDJソフトのTraktor Proが、7年ぶりにバージョン・アップ。7年もの間バージョン・アップされていなかったのは、Traktor Pro 2がそれだけ完成度の高い製品だった証です。また、DJソフトは楽器と同様に自分が使いこんだものでパフォーマンスするわけですから、頻繁なバージョン・アップはプレイヤーにとってあまりありがたい話とも言えないのです。それを踏まえてどのような進化を遂げたのか、検証していきたいと思います。

Traktor Scratch Proの機能が統合
マスターに新たなリミッターを採用

まずTraktor Pro 2からの移行について。Traktor Pro 2を使用しているコンピューターにインストールする場合、既存のライブラリーや設定などを引き継いでくれるので、スムーズに移行できます。また、Traktor Pro 2とは別のディレクトリーにインストールされるのでTraktor Pro 2は上書きされず、今まで通りTraktor Pro 2を使用することも可能です。

以前はTraktor Pro 2とは別に、曲の頭出しやスクラッチなどをターンテーブルやCDプレーヤーでコントロールするDVS機能を備えたTraktor Scratch Proというソフトウェアあったのですが、Traktor Pro 3からDVS機能が統合されました。これでDVS機能のために追加のソフトを買う必要がなくなりましたね。Traktor Scratch Proが定めるミキサーやオーディオI/O以外でも、DVS機能が動作するようになったこともうれしいところです。

実際に起動してみるとグラフィックが新しくなっており、全体的に黒色が強くなっています。ですが、既存のユーザーを戸惑わせるような変化を遂げているわけではありません。説明書を確認せずとも機能がひと目で分かる上に、より洗練されて使いやすくなった印象です。具体的にはピッチ・フェーダーとチャンネル・フェーダーに目盛りが付いたり、チャンネル・フェーダーとマスターのレベル・メーターが大きくなったり……といった変更点が見られます。

レイアウトも変更されています。FX 1と入れ替えで表示されていたテンポとマスター・クロックのボタンが、以前ループ・レコーダーが表示されていた上段中央に大きく表示されています。その代わりに、ループ・レコーダーがFX 1と切り替えで表示されるようになったようです。

音質面も向上しました。極端なピッチやテンポの変更をしても音質の劣化が起きないように、タイム・ストレッチ/ピッチ・シフトのエンジンにZPLANE Elastique Proを採用しています。また、マスターのリミッターが改良されました。ClassicとTransparentの2種類のモードを用意していて、後者はコンプレッサーに近い自然な効きで、入力レベルが高くなってもひずまずに再生できます。マスターのレベル・メーターでリミッターがどの程度効いているのかを視覚的にとらえられるのもありがたいです。

▲マスターのレベル・メーター。赤い縦線のレベルでリミッティングがかかっている。ゲイン・リダクションのかかり具合は、レベルの上下に暗い赤色で表示される

▲マスターのレベル・メーター。赤い縦線のレベルでリミッティングがかかっている。ゲイン・リダクションのかかり具合は、レベルの上下に暗い赤色で表示される

ここからは新機能について。フィルター・ノブにエフェクトをアサインできるMixer FXが登場しました。ReverbやNoise、Dual Delay、Dotted Delay、Barber Pole……といったフィルターを含む9種類のエフェクトを用意。ノブは12時の位置がバイパスで、左右に動かすだけで効果的なアクセントを付けることが可能です。ミックス中にほかのデッキの音を邪魔することなく、DJプレイにマッチしたエフェクトを簡単に加えられます。

▲フィルターにエフェクトをアサインできる新機能Mixer FX。9種類のエフェクトを用意し、アサインするスロットを4つ設ける

▲フィルターにエフェクトをアサインできる新機能Mixer FX。9種類のエフェクトを用意し、アサインするスロットを4つ設ける

▲フィルター・ノブにアサインされたエフェクトは12時の位置がバイパスとなっていて、左右に回すとフィルターと同時にエフェクトがかかる仕様。画面では左側にBarber Pole(BRPL)、右側にDotted Delay(DTDL)をアサインしている

▲フィルター・ノブにアサインされたエフェクトは12時の位置がバイパスとなっていて、左右に回すとフィルターと同時にエフェクトがかかる仕様。画面では左側にBarber Pole(BRPL)、右側にDotted Delay(DTDL)をアサインしている

スクラッチやループに有効なFluxモードも進化を遂げました。Reverseボタンを押すと自動でFluxモードになり、解除時にほかのデッキと同期しながら、楽曲本来の位置に復帰できるようになっています。ほかにはデッキ内の波形の上に表示されるダウン・ビートのマーカーが各小節の頭だけハイライトで表示されるようになった、などの変更点があります。

 

ステージ上での視認性が向上
フィルター効果を伴ったMixer FX

さて、実際に使ってみましょう! グラフィックはつまみ周辺の白っぽかった部分が黒くなったおかげで、ステージ上で画面がちらつかずにしっかり見えるようになりました。

改良されたサウンド・エンジンが気になるので、試しにTraktor Pro 3とTraktor Pro 2で同じ曲のピッチ・コントロールを-30%にして再生。Traktor Pro 2ではキックの頭がダブって聴こえるのに対して、Traktor Pro 3では非常にクリアに聴こえたので驚きました。これならテンポが大きく異なる曲でも安心してミックスできそうです。

面白かったのは何と言っても新機能のMixer FX。すべてのエフェクトはフィルター効果を伴ったもので、既存のエフェクトとは動作が全く異なります。中でも気に入ったものは、ReverbとDual Delay、Dotted Delay、Barber Poleの4種類。個人的にはこれらのエフェクトをアサインして使おうと思いました。特に良いと思ったのがBarber Pole。こちらはフィルターなのですが、連続的にカットオフとレゾナンスが変化していき、回し切ってもレベルが落ち過ぎずに効果的なざらつきをもたらせるので、ミックスの組み立てに重宝しそうだと思いました。同じくReverbもざらついた質感です。Dotted Delayはノブを回すとディレイ・タイムが変化して、楽曲にスタッカートのような効果を生みます。Mixer FXのおかげで、DJプレイが楽しくなりそうです。

使いやすさと音質面を検証した結果、非常に充実したアップデート内容でした。Traktor Pro 3はコンピューターでのDJの可能性や楽しさを、大いに広げてくれるソフトです。

 
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サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より)
 

NATIVE INSTRUMENTS

Traktor Pro 3

フルバージョン:11,852円 アップデート・フルバージョン:5,815円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS 10.12以降 ▪Windows:Windows 7以降、64ビット ▪共通:INTEL Core I5以上のCPU、4GB以上のRAM、1GB以上のストレージ、インターネット接続環境(インストールおよびオーサライズ時)

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