「INTERNET Ability 2.5 Pro」製品レビュー:音源の追加や作編曲機能の向上を果たした国産のDAWソフト

INTERNET Ability 2.5 Pro

REVIEW by 山中剛 2018年2月27日

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ドイツやアメリカ、フランスなどが強い勢力を持つDAWソフトのシーンで、互角に競えるポテンシャルを秘めた日本製のWindows用DAW、INTERNET Ability Pro。このソフトが標準搭載音源の追加や操作/表示に関しての機能強化をもってバージョン2.5へとアップデートしました。バージョン2.0のユーザーは無償アップデート可能となっており、内容もなかなか充実しています。

モーフィングやモジュレーションにたけた
2種類の新搭載シンセ

INTERNETはSinger Song Writer(通称SSW)というDAWも発売しており、システム・エクスクルーシブなども駆使しつつ、MIDIによる細密なプログラミングで作品を完成させたい“MIDI職人”たちからディープな支持を集めてきました。そのSSWをベースとしながらも新たな作編曲の機能を搭載し、2014年に登場したのがAbility Proです。古くからMIDIにかかわっている人たちにはよく知られた話ですが、前身のSSWはシーケンス・ソフト時代に国産のものとしては最大級のヒット製品で、1980〜90年代にかけて多数のプロダクションで使用されたCOME ON MUSIC MIDI Recomposerをルーツに持っています。つまりAbility Proは、MIDIに関して名馬の血統を受け継いだサラブレッドであり、若いDAWでありながら欧米のベテランたちに引けを取らないほど、現場の技術とノウハウを蓄積したものと言えます。

具体的なバージョン・アップの内容をチェックしましょう。まず音源は、LINPLUG MorphoXとLINPLUG Octopusの2種類のシンセが加わりました。MorphoXは、その名の通り画面上のモジュレーション・ホイールで2つの音色を手軽かつ自在にモーフィングできるのが特徴で、内蔵の16ステップ・シーケンサーを併用すれば曲の展開に応じた動きのあるサウンドとフレーズを簡単にジェネレートできます。Octopusは、2つのモジュレーション・マトリクスを備えたシンセとなっており、多彩な音色が魅力。全8つのオシレーターとサンプラー、32のエンベロープ・ジェネレーターなどを自在に組み合わせる音作りには、多少の知識が必要であるものの、シンセ・マニアにとってはたまらない面白さがあります。

▲新たに標準搭載されたシンセの一つ、LINPLUG Octopus。画面左上にオシレーターとフィルターの周波数変調のためのマトリクス、その右下には通常のモジュレーション・マトリクスを備えている

▲新たに標準搭載されたシンセの一つ、LINPLUG Octopus。画面左上にオシレーターとフィルターの周波数変調のためのマトリクス、その右下には通常のモジュレーション・マトリクスを備えている

このほか、従来から備わっているFXPANSION BFD Eco(ドラム音源)やUVI Grand Piano Model D(ピアノ音源)、NATIVE INSTRUMENTS Komplete Elements(ソフト・バンドル)なども有用なので、オーソドックスな音色からエッジの効いたサウンドまで網羅的に作成できます。ビギナーの方であれば、当面音源を買い足す必要はないでしょう。

 

ブラウザー上でMIDIデータのスコアや
オーディオ・データの波形を表示可能

MIDIの機能面では、まずピアノロール画面での“コード構成音で背景色を色分け”がとても気に入りました。コード・トラックで指定した和音に基づき、ルート(赤色)/3度の音(水色)/5度の音(緑色)などに個別の背景色が付くもので、コード・チェンジに合わせて変化します。メロディや和音のトップ・ノートと、コードとの関係が一目で確認でき、作編曲時にかなり重宝します。加えて、ステップ・シーケンサーのベロシティ段階ボタンの搭載も出色。ステップ・シーケンサーでは、以前からステップごとにベロシティを設定できましたが、段階ボタンによりグラフ表示も可能になったので、強弱の視認性が飛躍的に向上しました。またマウスによって複数ステップの数値変更が同時に行え、より感覚的にフレーズを作れるようになっています。

MIDIの便利機能はまだまだあります。コード進行に応じてMIDIパターンの音高やフレーズそのものを変化させる“コンポーズ・アレンジ・リミックス支援機能”は旧バージョンからおなじみですね。今回は、その素材であるMIDIファイルを管理するメディア・ブラウザーが改良され、カーソルを合わせたファイルをスコア表示できるように。オーディオについては波形が表示されるので、フレーズ選びが一段と楽になりました。バンドルされているファイルはMIDIのコード進行が430種類、メロディ付きのコード進行が300種類、オーディオ(ACID形式)が70ジャンル分の4,100種類です。

▲メディア・ブラウザーの一部。画面左に見えるファイルの一覧でMIDIファイルにカーソルを合わせると、楽譜が表示されるようになった

▲メディア・ブラウザーの一部。画面左に見えるファイルの一覧でMIDIファイルにカーソルを合わせると、楽譜が表示されるようになった

ミキサーにもアップデートが見られます。フェーダーやパン、エフェクト・センドなどの各種コントロールにマウス・ポインターを持っていけば、それらをクリックすることなくマウス・ホイールやコンピューター・キーボードのアロー・キー(矢印キー)で動かせるようになりました。クリックの一手間が減ったことによる操作感の変化は思いのほか大きく、一度慣れてしまうと元には戻れないでしょう。

ほかにも、より手軽になったスコア画面のレイアウト調整やCD作成機能のDDPエクスポートへの対応(!)など、ここには詳細を書き切れないトピックも幾つかあります。それらの新機能による利便性や機動力のアップはもちろんですが、Ability Proにはステップ・エディター(イベント・リスト)でのテン・キー/アロー・キーによるキビキビした操作感という個性的な魅力もあります。旧バージョンのユーザーはもちろん、今回初めてAbility Proを知ったという方もINTERNETのWebサイトに試用版が用意されているので、ぜひともチェックしてみることをお勧めします。


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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年3月号より)

INTERNET

Ability 2.5 Pro

通常版:54,000円(パッケージ)/36,000円(ダウンロード)、クロスグレード版:33,000円(パッケージ)/28,000円(ダウンロード)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
【REQUIREMENTS】▪Windows:Windows 7/8.1/10(いずれも32/64ビット)、INTELもしくはAMDのデュアル・コア・プロセッサー、4GB以上のRAM、24GB以上のディスク空き容量、1,280×800ドット以上のフル・カラー・ディスプレイ

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