「PROPELLERHEAD Reason 10」製品レビュー:新たなデバイスを多数追加したバーチャル・ラック型DAWの最新版

PROPELLERHEAD Reason 10

REVIEW by 山中剛 2018年1月26日

Reason10

バーチャル・ラックを中心とした独特なインターフェースと操作感が特徴のDAW、PROPELLERHEAD Reasonが、過去最大と言われる規模のバージョン・アップによりReason 10となりました。最初は内蔵された音源とエフェクト・デバイスによるMIDIプログラミング中心でスタートしたReasonですが、バージョン6で同社のオーディオ・レコーディング・ソフトRecordを吸収してオーディオ・トラックを装備、バージョン7でMIDI OUTに対応、バージョン9でオーディオ・トラックにピッチ修正機能を搭載、そしてバージョン9.5でVSTに対応して、従来の自己完結型の制作ツールから、より自由な制作環境を構築できる統合型のDAWへと進化しました。そして今回のバージョン10ではさらに現代のクリエイターのニーズに応えるべく、インストゥルメント/エフェクト・デバイスの追加、サウンド・ライブラリーの強化が図られています。それではReason 10に新しく追加されたデバイスたちをチェックしていきましょう。

 

3基のエンジンを搭載するEuropa
波形を分解/再構築できるGrain

Reasonが最初にリリースされたのは2000年なのですが、独自のGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)と操作感をぶれることなく今も貫いている点に感心してしまいます。使用する音源やエフェクトをラックにマウントするというシンプルで明解なインターフェースは、まだハードウェアからソフトウェアへの過渡期にいたユーザーに分かりやすさと安心感を与えてくれました。それから17年近い月日がたち、ソフトウェアが主流となった昨今ですが、音源/エフェクトを個別のバーチャルな機材として扱うReasonのGUIは、筆者のような世代に懐かしい感覚を、ソフトウェアから入った世代にはハードウェアに対する興味やあこがれのような気持ちを与えてくれるのではないかと思います。時代とともにGUIの果たす役割は少し変化しましたが、変わらないのは機材を扱う楽しさを随所に感じさせてくれる遊び心。そんなところに開発者たちのReasonに対するビジョンとこだわりがあるのではないでしょうか。

今回のバージョン・アップの大きな目玉と言えるのがEuropa(画面①)とGrain(画面②)という2種類のソフト・シンセ。Europaは多彩なオシレーター変調と通常のフィルターの前段に設置されたSPECTRAL FILTERによって、従来のシンセでは得ることのできない、動きを伴ったフィルター処理を可能にしています(画面③)。オシレーター、SPECTRAL FILTER、HARMONICS、UNISONの各セクションが3つずつあり、1組のセットがENGINEと呼ばれ、従来のシンセのオシレーター1基に相当します。2つのモジュレーターを持つオシレーター・セクションだけでもかなり音作りができますが、複雑かつ動きのあるカーブを設定できるSPECTRAL FILTERを組み合わせられるので、音作りの幅は想像を超えます。やはり得意なのは変調を生かした変化のある動的なサウンドで、一言でいえばエッジの効いた攻めのサウンドを得意とするシンセです。

▲画面① シェイプシフト・シンセサイザーのEuropa。3つのエンジンにはそれぞれオシレーター、SPECTRAL FILTER、HARMONICS、U NISONセクションが1つずつ装備されている。エンベロープ×4、LFO×3、モジュレーション・バス×8系統、エフェクト×6種類を搭載

▲画面① シェイプシフト・シンセサイザーのEuropa。3つのエンジンにはそれぞれオシレーター、SPECTRAL FILTER、HARMONICS、UNISONセクションが1つずつ装備されている。エンベロープ×4、LFO×3、モジュレーション・バス×8系統、エフェクト×6種類を搭載

 

▲画面② グラニュラー・シンセサイザーのGrain。サンプルをアサインし、4種類あるプレイバック・アルゴリズムでグラニュラー・シンセシスが可能だ。Europaと同じく、エンベロープ×4、LFO×3、モジュレーション・バス×8系統、エフェクト×6種類を備えている

▲画面② グラニュラー・シンセサイザーのGrain。サンプルをアサインし、4種類あるプレイバック・アルゴリズムでグラニュラー・シンセシスが可能だ。Europaと同じく、エンベロープ×4、LFO×3、モジュレーション・バス×8系統、エフェクト×6種類を備えている

 

◀画面③ SPECTRAL FILT ERは自在にカーブを描けるので、多彩な音作りが可能

▲画面③ SPECTRAL FILTERは自在にカーブを描けるので、多彩な音作りが可能

音源となるサンプルをms単位に分割し、再配置して合成するグラニュラー・シンセシスを用いたGrainも、タイプは違いますがEuropaと同様に攻めの音作りを得意としたシンセです。グラニュラー・シンセシスだけでも、素材となるサンプルからかなりかけ離れたサウンドが作れるのですが(画面④)、Grainはエフェクトを含めたほとんどのパラメーターに対してLFOやエンベロープ、ベロシティ、ランダム、ノイズなどをソースとして変調が行えます。波形を解体し、再構築するその発音/変調方法は、サンプリングされたフレーズや音から摩訶不思議で非現実的な響きを生み出すことが可能です。またEuropaとGrainに共通して言えることですが、かなり複雑なモジュレーションができるにもかかわらず、インターフェースはシンプルに分かりやすくまとめられています。この点はPROPELLERHEADの“Reasonのデバイスはこうあるべし”というポリシーと、それを実現する巧みさを感じました。

▲画面④ アルゴリズムには、グレイン同士をミックスするGRAIN OSCILLATORやLONG GRAINS、周波数成分を調整できるSPECTR AL GRAINS、テープ・マシン・タイプのTAPEが用意されている

▲画面④ アルゴリズムには、グレイン同士をミックスするGRAIN OSCILLATORやLONG GRAINS、周波数成分を調整できるSPECTRAL GRAINS、テープ・マシン・タイプのTAPEが用意されている

 

複合エフェクトのSynchronousは
3つのLFOで高度なモジュレートが可能

次に紹介するのはオーガニックなサウンドに特化した3種類のプレイバック・サンプラーです。Klang Tuned Percussionはグロッケンやオルゴール、カリンバなどの音階が出せるパーカッションの専用音源。Pangea World Instrumentsはサズやアンクルン、ビザール・シタールなどの珍しいエスニック楽器を収録しています。Humana Vocal Ensembleはコーラスやソロなどのヒューマン・ボイスに特化した音源です。これらのデバイスはシンプルで分かりやすい共通のパネル・レイアウトを持ち、アタックやリリース、フィルターなど、サウンドの微調整が簡単に行えることが魅力です(画面⑤)。

◀画面⑤ 新たに追加されたプレイバック・サンプラー系音源3種類。Klang Tun ed Percussion(画面上段)は音階を出せる打楽器を収録している。Pangea World Instruments(画像中段)は貴重な民族楽器音などが再生可能。Huma na Vocal Ensemble(画面下段)はソロ/アンサンブル・コーラスに特化しているデバイスだ

▲画面⑤ 新たに追加されたプレイバック・サンプラー系音源3種類。Klang Tuned Percussion(画面上段)は音階を出せる打楽器を収録している。Pangea World Instruments(画像中段)は貴重な民族楽器音などが再生可能。Humana Vocal Ensemble(画面下段)はソロ/アンサンブル・コーラスに特化しているデバイスだ

Radical Pianoはサンプリングと物理モデリングを併用したハイブリッド・タイプのピアノ音源です(画面⑥)。3台のピアノ(2種類のグランドとアップライト)をベースに、マイクのセッティングが違う音をブレンドしたり、鍵盤やダンパー・ペダルの発するノイズや共鳴具合を調整して、幅広い音作りができます。ユニークなのがCHARACTERというパラメーター。EQやコンプ/リミッターが複合されたようなプリセットを25種類用意しており、つまみ一つでダークでおとなしいキャラクターから過激で荒々しい音まで、多彩にサウンドを変ぼうさせることができます。

▲画面⑥ Radical Pianoは、サンプルと物理モデリングを組み合わせたピアノ音源。12種類のピアノ音色が用意されており、画面中央部にあるMICROPHONE BLENDで2種類をミックスして音作りが行える

▲画面⑥ Radical Pianoは、サンプルと物理モデリングを組み合わせたピアノ音源。12種類のピアノ音色が用意されており、画面中央部にあるMICROPHONE BLENDで2種類をミックスして音作りが行える

最後に紹介するのは、ディストーション(リング・モジュレーションやビット・クラッシャーのモードもあり)、フィルター、ディレイ、リバーブが1つになったマルチエフェクト、Synchronousです(画面⑦)。テンポに同期する高度なモジュレーション機能を持ち、3つのLFOをソースとして画面中央に並ぶ10個のエフェクト・パラメーターをモジュレートできます。1つのパラメーターを複数のLFOで同時にモジュレートできるので、“16分で揺れながら2小節かけて上昇する”というような複合的な動きも簡単に作れます。そのほか、別のデバイスからのCVでLFOの動きに変化を加えたり、逆に別のデバイスにLFOをCVとして出力することも可能。リズミカルかつ複雑な動きを持ったサウンドを生成できます。

▲画面⑦ Synchronousは3基のLFOを使って、搭載したエフェクトのパラメーターをモジュレートできるデバイス。背面のCVアウトを使ってほかのデバイス・パラメーターをモジュレートすることも可能だ

▲画面⑦ Synchronousは3基のLFOを使って、搭載したエフェクトのパラメーターをモジュレートできるデバイス。背面のCVアウトを使ってほかのデバイス・パラメーターをモジュレートすることも可能だ

今やDAWに欠かせない規格であるREXファイルやReWireを策定するなど、PROPELLERHEADは高い技術力を持ったメーカーです。そんなPROPELLERHEADが長年こだわりを持って開発を続けているReason。初代から一貫して継承されている、中低域に量感があり少し重心が低く感じる独特のサウンド・キャラクターも魅力的です。また、Reasonは単独での使用はもちろん、ReWireを使用してほかのDAWとコラボレートする形での機能拡張も得意。機能制限なく30日間使用できるデモも用意されているので、他社のDAWをお持ちの方も、自分の制作環境にどのような刺激を与えてくれるか試してみることをお勧めします。

 

 

 

 


link-bnr3

サウンド&レコーディング・マガジン 2018年2月号より)

PROPELLERHEAD

Reason 10

オープン・プライス(市場予想価格:35,000円前後/通常版、12,000円前後/アップグレード版)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
REQUIREMENTS ▪Mac:Mac OS X 10.7以降(64ビット)、マルチコアのINTELプロセッサー ▪Windows:Windows 7以降(64ビット)、マルチコアのINTELまたはAMDプロセッサー ▪共通項目:4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)、4GBのディスク空き容量(スクラッチ・ディスク・スペースとして最大20GB使用)、解像度1,280×768以上のディスプレイ

TUNECORE JAPAN