「SPITFIRE AUDIO BT Phobos」製品レビュー:4つのサウンド・ソースと3つのIRで音作りが可能なソフト・シンセ

SPITFIRE AUDIO BT Phobos

REVIEW by 井筒昭雄 2017年8月1日

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オーケストラからシネマティックまで、ハイクオリティなソフト音源をリリースしているSPITFIRE AUDIOから登場したBT Phobos。作曲家であり、エレクトロニック・ミュージックの先駆者でもあるBTと共同開発された、今までに無かった全く新しいタイプのソフト・シンセとのこと。早速チェックしていきましょう。

 

ユニークなサウンド・ソースを
約20GB/2,000種類内蔵

この音源の一番の特徴は、20GB、2,000種類を超えるというユニークなサウンド・ソースを、独自のコンボリューション・エンジンに組み込むことができるという点。つまり、リバーブのインパルス・レスポンスをそのまま音色に使って演奏することができるという、今までにない新しい発想なのです。ソフトはMac/Windowsに対応し、VST/AU/AAXに準拠。これまでの同社製品とは異なり、DAWにプラグインとして直接立ち上げることが可能です。

プリセットはBTのほか、クリスチャン・ヘンソンやリチャード・ディヴァインなどが手掛けた、650種類以上を収録。650ともなると“いい出会いがあるといいな”という感じで探りながら、実際に幾つか音を出してみました。文字通りリバーブ成分がそのまま音色になっているので、ロング・トーンだけを弾いてみても深みと変化があります。これはやはり長いスパンでの変化や緩急が求められる劇伴などの映像音楽に特化しているのではないでしょうか。例えばリズムの下にはわせたりするだけでも音楽的な時間軸が形成され、雰囲気を醸し出してくれます。アンビエント/ドローン系はもちろん、リズミカルなものや無調のモーション音色、重厚感のある“HIT”まで、すべてのプリセットを把握するには長い旅になりそうですが、パっと出した音色からのインスピレーションで曲を作ってみるというのもアリでしょう。

音色は、サウンド・ソースをロードできるモジュールが4つ(1〜4)と、3種類のコンボルバー(インパルス・レスポンス/W、Y、X)モジュールがあり、そこを通った音量バランスをコントロールして生成します。サウンド・ソースが2,000種類以上ともなると、理想の音色にたどり着くのが困難と思われますが、キーやテンポのほか、パッド系かループ系かの2つに絞り込むことができ、さらにATOMOS、DARK、ELECTRONIC、ORGANIC、VOCAL……といったカテゴリーから探すこともできるのでとても助かります。名前による検索も可能です。

 

サウンド・ソース/コンボルバーともに
それぞれ細かく音色エディットが可能

4つのモジュールにロードしたサウンドは、ADSRエンベロープで視覚的に音作りができます。ハイパス・フィルターのほかDRYとWETのノブも見えていますが、数字部分をクリックすると、CONTROLSというさらに細かく設定できる画面が開きます(画面①)。これらを設定して、元音のバランスとIRモジュールへ送る量を調整します。

 

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▲画面① サウンド・ソースの音色設定画面(CONTROLS)。表に出ているADSR、ハイパス・フィルター、DRY/WETの設定だけでなく、パンやフィルターのQ、ローパス・フィルターなど、さらに細かい設定を数値を見ながら行える。コンボルバーもほぼ同様の設定画面で音作りが可能となっている

 

そのコンボルバーですが、こちらもADSRで視覚的にコントロールが可能。W/Y/Xをクリックすると、サウンド・ソースと同様CONTROLSの画面が開きます。そして、設定したコンボルバーの音量は、中央の逆三角形の中で1〜4の数字を任意に配置することで、バランスを取る仕組みになっています。例えば音色“1”を逆三角形の左上に持っていくと、“W”の成分が多くなります。

“1〜4”“W、Y、X”の各成分の鍵盤へのアサイン範囲も、画面下部のバーで、視覚的に設定できます。例えばリズミカルな音色を使って毎回弾く(鳴らす)鍵盤を変えることによって、単なるループではなく、毎回余韻のニュアンスの違うリズム・トラックを表現することも可能です。プリセットにも鍵盤の低音部にはベーシックなリズム、中音域には半分のテンポでとったリズム、高音域には小節頭にアクセントのついたリズム、と分けられたものもあり、場面に応じて展開や緩急を付けることもできます。本機にはさらにLFOを4基搭載しているので、本当に無限の音作りが可能でしょう。なお、音とは関係無いのですが、四隅に極小サイズで日本語のメッセージが幾つか書かれていて興味が湧きます。

では実際に緊張感のあるサウンドを念頭に置いて、鍵盤部分を4分割して音を選んでみました。1にキックのヒット音“120MONUMENTAL DRUM PART1”、2にドローン・パッド“METAPHYSICAL 54”、3はボウイング的なざらついた良いサウンド“VOICES IN MY HEADSTUNG”、最後の4に秒針のような音“REACH WINSHIELD BLINKERS”。この組み合わせだけでも複雑なサウンドになりますが、さらにコンボルバーにはWに“97 HEARTBREAK BEAT”、Yに“93 INTRUDER”、Xに“MASSIVE SPACE4”を設定。1と4をW、Yに寄せれば微かなゴースト・ビート効果を出し、X側に寄せればリズム・ピッチがついた不思議なサウンドが作れました。

BT Phobosは使い方次第で縦横無尽な表現ができるとても素晴らしい音源だと思いました。音色の組み合わせだけでもかなり多く、まだまだ使い切れていない充実の機能をたっぷり時間をかけて研究したいところです。

 


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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年8月号より)

SPITFIRE AUDIO

BT Phobos

29,180円 (価格は為替レートによって変動)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
REQUIREMENTS ▪対応OS:OS X 10.10以降、Windows 8以降 ▪対応フォーマット:AAX Native、AU、VST ▪共通項目:INTEL Core I5 2.8GHz以上のCPU、16GB以上のメモリ、64ビットOS&DAWの使用を推奨、35GB以上のハード・ディスク空き容量

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