「OVERLOUD TapeDesk」製品レビュー:アナログ・コンソールとテープ・マシンの音を再現するプラグイン

OVERLOUD TapeDesk

REVIEW by 星野誠 2017年8月1日

MainTapeDesk

OVERLOUDは、今年になってから“GEMシリーズ”と名打ったビンテージ・ハードウェアのモデリング・プラグインを次々と発表しています。今回はその第3弾となるTapeDeskをレビューしていきましょう。

 

3種類から選べるコンソール・モデル
プリアンプによるひずみを得られる

パッと見て、テープ・マシンのシミュレーターだと分かりますが、製品名はTapeDe“c”kではなくTapeDe“s”k。そう、テープ・マシンだけでなく、コンソールのサウンドも再現できるプラグインです。Mac/Windowsに対応し、AU/VST/AAXのほか、スタンドアローンでもリアルタイム・エフェクトとして動作します。TapeDeskはプリアンプ・セクション、テープ・マシン・セクション、ミックス・バス・セクションからなっており、テープ録音の時代の“コンソールのプリアンプで増幅し、テープ・マシンに送られ、再びコンソールに戻ってサミングされた音”を目指して開発されたとのこと。ファイナル・ミックスを録音するものではなく、マルチトラック・レコーダーでの一連のワークフローを一つのプラグインで再現することを目的としているようです。調整するパラメーターの数は少なく、異なるセッティングを試せるA/B切り替えや、VU/PPMのメーター切り替え、アンドゥ/リドゥを装備しており、ユーザー・フレンドリーな製品になっています。この手の“サチュレーション”を扱うプラグインはCPU負荷が気になるところですが、筆者のAPPLE MacBook Pro(INTEL Core I7、16GB RAM)+AVID Pro Tools⎜HDXの環境では、96kHzで100ch分を立ち上げても余裕でした。これならマスターやドラムのミックス・バスに挿すだけでなく、各トラックに気兼ねなく使うことができますね。

それでは各セクションを細かく見ていきましょう。選択できるコンソール・モデルは3種類。S4000/N80/T88という名前から察するに、どれもイギリス製ですね(画面①)。コンソール・モデルを切り替えると、左側のプリアンプ・セクションと右側のミックス・バス・セクションの両方が変わります。プリアンプだけ別のモデルにする、ということはできません。プリアンプ・セクションはシンプルで、TRIMのつまみとMIC PRE(トランス・シミュレーション)のオン/オフ、そして見慣れないTOLERANCESというボタンがあります。TRIMは純粋なインプット・レベルではなく、ドライブ量といった感じでしょうか。数値を+10にしても10dB増加するわけではなく、3dBほどの変化だけです。これはプリアンプでの飽和によるひずみ感の調整用ですね。TOLERANCESボタンは、個体差による音の微妙な違いを再現する機能です。

 

Cap

▲画面① TapeDeskで選べるコンソールのモデルは3種類あり、イギリス製の有名なコンソールをエミュレートしたS4000/N80/T88を収録している。使える機能は同じだが、それぞれモデルとなったコンソールの特徴的なプリアンプのサウンドを再現している

 

 

ナチュラルな音のテープ・マシン・セクション
テープ・スピードで高域の鳴りが変わる

最初にテープ・マシン・セクションをオフにして、コンソール・モデルごとの違いをチェックしました。S4000はオールマイティに使えそうな音です。TRIMでインプットを上げていくと、ディテールは崩さずにじんわりひずんでいきました。高域/低域共に若干のなまりが生じて、中域をジェントルにプッシュしてくれます。N80はリッチでオープンなサウンド。ワイド・レンジになることで耳障りな音も気にならなくなり、豊かな中低域が再現されました。しかし、入力レベルによってバリッとしたひずみが顕著に表れてきます。一番ひずみの変化が感じられるモデルでした。T88は、N80とは対照的な印象でタイトな低域。ギターのエッジなどの派手な帯域が持ち上がる感じです。元気なサウンドで、ギター・ロックによくマッチしそうですね。TRIMによる変化もS4000とN80の中間くらいで、中低域からひずんでいく印象。変化が大きいので、バスよりも個々のトラックに挿すと良い結果が得られそうです。

次はテープ・マシン・セクションです。このプラグインが発売された当初、テープ・スピードは15ipsもしくは7.5ipsの切り替えのみでしたが、現在は30ipsも追加されました。まずはVUメーターが0付近を振る2ミックスにTapeDeskを立ち上げたときの状態(テープ・スピードは15ips)で使ったところ、非常にナチュラルな音で鳴りました。ペタッと張り付くこともなく、グワッと左右に広がることもなく、低域のコンプ感と高域のロールオフがしっくりくる変化です。30ipsにすると、ロールオフしていた高域がグッと戻ってきてワイドレンジになりますね。ローエンドの変化よりも高域の変化に耳が行きます。用途としてはバス・インサートに良さそうですね。7.5ipsでは高域がかなり丸くなるので、低音楽器や高域が痛く聴こえるパーカッションなどに向いていそうです。BIASのつまみでは、ノーマル設定か3dB分のオーバー・バイアス設定を選べます。つまみをOVERにすると、高域にコンプ感が増し、少しに音が張り付いたように聴こえました。

TapeDeskは、“もっとナチュラルにトランジェント・ピークを抑えてほしい”“各チャンネルに挿して、それぞれを細かく設定したい”と思っている方にお薦めです。このクオリティでCPU負荷がかなり少ないことに驚きました。これからもGEMシリーズに期待しています。個人的にはAAX DSPに対応することを願うばかりですね。

 


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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年8月号より)

OVERLOUD

TapeDesk

オープン・プライス(市場予想価格:23,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.6以降 ▪Windows:Windows Vista以降 ▪共通項目:INTEL Core I3 1.4GHz、4GB以上のRAMを推奨 ▪対応フォーマット:AU/AAX/VST/スタンドアローン

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