「SPITFIRE AUDIO London Contemporary Orchestra Strings」製品レビュー:100以上に及ぶアーティキュレーションを備えたストリングス音源

SPITFIRE AUDIO London Contemporary Orchestra Strings

REVIEW by 佐藤賢太郎(Wiseman Project LLC) 2017年7月6日

スクリーンショット-2017-06-21-13.19.393(シャープ強)

主に映画やメディア音楽用の高品質オーケストラ・ライブラリーを開発している英国SPITFIRE AUDIO(以下SA)のラインナップに、London Contemporary Orchestra Strings(以下LCOS)が加わりました。既存のオーケストラ・ストリング音源とは趣が異なる本製品をチェックしていきます。

 

特殊奏法のサンプルも収録
動的な要素が感じられるサウンド

SAからは、既に主力シリーズとして大編成、室内楽編成、ソロ弦のそれぞれ異なるオーケストラ・ストリングス音源が発売されています。ほかにもさまざまな作曲家や演奏家を招いて制作された特化型のコンセプト・シリーズも発売していますが、今回のLCOSでは現代音楽を主なレパートリーとするロンドンのオーケストラ、London Contemporary Orchestraを起用。映画音楽や現代の弦手法では多用されながらも、既存のオーケストラ音源から漏れていた特殊奏法に焦点を当てた小編成のストリングス音源です。SAのほかのストリングス音源と同じく、LCOSもMac/Windowsに対応し、NATIVE INSTRUMENTS Kontaktフォーマットで、Kontakt 5や同社から入手できるフリーのソフト・サンプラーKontakt 5 Playerで動作します。

GUIは、これまでのSA製品を踏襲しており、同社のソフト音源を既にお使いならばすぐに分かるでしょう。メインの画面でマイク・ポジションやミックス設定、リバーブ設定、選択された奏法やコントロール・チェンジ(CC)の確認が可能です。また、ベロシティ・カーブの変更、トランスポーズ、ラウンド・ロビン設定、CCアサイン変更なども行うことができます。

LCOSは、①バイオリン6人、②ビオラ4人、③チェロ3人、④コントラバス2人とオクターブ上でチェロ3人、という変則的なカテゴリーで録音されています。各セクションごとに、メインに使われる奏法をまとめたパッチ、各奏法のパッチ、音型の長短で分けられたパッチ、そして負荷の軽いLite版のパッチがあります。ハーモニックス、スル・タスト、スル・ポンティチェロ、バルトーク・ピチカートなどの通常の弦ライブラリーでは拡張版に収録されるような奏法を始め、動き/ランダム要素/ノイズ要素を加味したサステインやトレモロ、通常の調弦以外の開放弦奏法、弦をこする、弓を強く押しつけて弾く、テイル・ピース側で弾く、といった特殊奏法を収録。通常のサステイン、スタッカート、スピッカートも収録されていますが、いわゆる“スタジオで完ぺきに一音をムラなく収録した”という静的なものではなく、動きや生命力といった動的な要素が感じられる音になっています。

 

音色の透明感が秀逸な弱音系
大編成による分奏も再現可能

LCOSでは、複数のマイク・ポジションとエフェクト処理されたサウンドを選択可能です。奏者近くで収音したClose、部屋鳴りも録音したRoomのほかに、実験的な音加工が施されたFX1とFX2、CloseとRoomを使ったMix1、そしてコンプ処理が施されたMix2の計6つが用意されています(画面①)。LCOSの出音はドライな傾向で、この点はエア・スタジオで録音されたSAの主力シリーズと異なりますが、マイク・ポジションで選べるRoomマイクと搭載されたリバーブとの組み合わせで既存のライブラリーにもなじみます。また、音加工が施されたFX1やFX2は新たなアイディアを生むきっかけになるでしょう。ほかにも、スタッカートなど短い音価の奏法に関しては、自分でプログラムしたリズム・パターンをDAWのテンポとシンクしてアルペジエイターのように自動的に演奏することができる“OSTINATUM”という機能も付いています(画面②)。

 

▲画面① MIC MIXでは、複数のマイク・ポジションをブレンドできる。左からClose、Room、エフェクトがかけられたFX1とFX2、本製品の録音に携わったエンジニアのジョー・ルベルによってマイク・バランスが取られたMIX1とMIX2が用意されている

▲画面① MIC MIXでは、複数のマイク・ポジションをブレンドできる。左からClose、Room、エフェクトがかけられたFX1とFX2、本製品の録音に携わったエンジニアのジョー・ルベルによってマイク・バランスが取られたMIX1とMIX2が用意されている

 

▲画面② OSTINATUMという機能では、リズムと旋律のパターンをプログラミングしてアルペジエイターのように使うことができる。画面右上のグレー部分でノートの長さや音程、音量などを設定することが可能

▲画面② OSTINATUMという機能では、リズムと旋律のパターンをプログラミングしてアルペジエイターのように使うことができる。画面右上のグレー部分でノートの長さや音程、音量などを設定することが可能

 

収録されているサウンドの中で、弱音系の音は特殊奏法の効果、そして少人数の録音ならではの音色の透明感が特に秀逸な出来です。大編成で可能な、セクション内でパートを分割して演奏する分奏(ディヴィジ)の効果も各パッチで複数音を鳴らすことで対応でき、通常のライブラリーではできない雰囲気や音空間を作るといった使い方も可能です。

LCOSは、“今までのサンプルではできなかったサウンドを可能にするストリングス音源”という表現がピッタリの製品です。著者が携わることの多い映像やゲームの音楽には、いわゆる調性音楽でよく使われる音素材や楽音だけでは対応できない音楽が多いのも事実です。特殊奏法を扱いやすい形にまとめたLCOSは、既存のオーケストラ・ライブラリーの穴を埋めるものに仕上がっています。既に一般的な奏法をカバーしているオーケストラ音源などを所有するユーザーにとって、新たな音世界を広げる道具となることは間違いありません。一般的な音素材では限界が来ていると感じるなら、LCOSをぜひ検討してみてはいかがでしょうか?

 


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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年7月号より)

SPITFIRE AUDIO

London Contemporary Orchestra Strings

33,810円(価格は為替相場によって変動)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪Mac:OS X 10.10以降 ▪Windows:Windows 7以降 ▪共通項目:INTEL Core Duo 1.66GHz以上、4GB以上のRAMを推奨、28.1GB以上のディスク空き容量(インストール時は56.2GB以上が必要)、インターネット接続環境(オーソライズ時に必要)

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