「PROPELLERHEAD Reason 9.5」製品レビュー:独自のGUIをキープしつつVSTに対応したDAWソフトの最新版

PROPELLERHEAD Reason 9.5

REVIEW by 鈴木光人(スクウェア・エニックス) 2017年6月24日

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PROPELLERHEADは、1994年に波形編集ソフトのReCycle!でブレイクビーツ制作に変革を与えたメーカーです。またROLANDの名機をコンピューター上で再現したReBirth RB-338では、ソフト・シンセの認知度を高めました。2000年にはMac/Windows対応のワークステーション型ソフト・シンセ、Reasonを発売。Reasonは2011年にオーディオ・レコーダー・ソフトのRecordを取り込み、DAWソフトへと進化を遂げました。プラグインに関しては、独自の“Rack Extension”という規格のみをサポートしていましたが、最新版のReason 9.5でVSTへの対応がアナウンスされました。Reason 9.5は、Reason 9を購入し、ソフト内でオート・アップデートをかけることで無償入手できます。またReason 1〜8およびRecordのユーザーは、上記のアップグレード価格で手に入れることが可能。それでは早速レビューしていきます。

 

音源などをバーチャルに結線する仕様
強力なサンプラーやリズム・マシンを搭載

ReasonがほかのDAWソフトと大きく違うのは“バーチャル・ラック・システム”と呼ばれる独自のインターフェースです。プロジェクト画面をラックに見立て、“デバイス”と呼ばれる音源やエフェクトをマウントしていくこの環境。音楽制作とともにスタジオを構築するようなインターフェースは当初衝撃的で、同時に明解でした。

特に注目されたのが、デバイスのリア・パネル(コンピューター・キーボードのTabキーを押すと現れる)にある出力端子を使って、デバイス同士を自由にパッチングできる仕様。これは近年世界的ブームとなっているモジュラー・シンセの概念そのものです。ただしVSTには対応しておらず、それはReason自体が一つの楽器/ソフトであり、スタジオでもあるというユニークな発想によるものだったのではないかと考えています。そこでまずはあらためて、Reasonのデバイスや特徴について紹介しましょう。

まずはREX/REX2フォーマットのループに対応したループ・プレーヤーDr. OctoRex(画面①)。ReCycle! で作成したループなどをエディット&プレイバックできるデバイスです。ライブラリーとしては、リズム系と音階系のループを豊富にプリセット。読み込み後、GUI上の“COPY LOOP TO TRACK”ボタンを押すとシーケンサー上に一発でMIDI変換され、パターンをエディットできます。そして何より重宝するのが、ブレイクビーツ系のネタとその音質。妙にしっくりくるというか、“あの感じのブレイクビーツが欲しいな”と思ったときに、素早くネタ選びや変更が行えるのです。“高音質”なライブラリーは他社にもたくさんありますが、結局僕が欲しいブレイクビーツの質感はDr. OctoRexに行き着くようです。

 

▲画面① REX/REX2ループのエディット/プレイバックが行えるDr. OctoRex

▲画面① REX/REX2ループのエディット/プレイバックが行えるDr. OctoRex

 

次はRedrum(画面②)。ReBirth RB-338のステップ・ライト方式を採用したサンプル・ベースのリズム・マシンです。10tr仕様で、各トラックにWAV/AIFFのサンプルを1つずつ読み込むことが可能。ベロシティは3段階ですが、潔くて好感が持てます。Reasonならではの使い方としては、リアにある各トラックのGateアウトをほかの音源デバイスのGateインに接続し、その音源を制御するという方法(画面③)。これはキックにほかの音源の低音を重ねて鳴らすような同時作業に適しています。

 

▲画面② WAV/AIFFサンプルを読み込めるリズム・マシン・デバイス、Redrum。10tr仕様で、ステップ・シーケンサーを備える

▲画面② WAV/AIFFサンプルを読み込めるリズム・マシン・デバイス、Redrum。10tr仕様で、ステップ・シーケンサーを備える

 

▲画面③ RedrumのリアのGateアウトをシンセ・デバイスSubTractorのGateインに結線しているところ。Redrumから発音を制御できる

▲画面③ RedrumのリアのGateアウトをシンセ・デバイスSubTractorのGateインに結線しているところ。Redrumから発音を制御できる

 

続いてはNN-19。とにかくサンプリングが簡単です。GUI上のSAMPLEボタンをクリックすればサンプリング・スタート。録音を止めた瞬間にサンプルのアタックが検知されつつ、そのサンプルがC3にアサインされます。つまりわずか2クリックで、サンプルを鍵盤などで演奏できるようになるわけです。まさにDAW史上、最も手数が少ないソフト・サンプラーと言えるのではないでしょうか。

 

 

さまざまな音源方式のシンセ・デバイス
ミキサーは最高峰のアナログ卓を再現

次にシンセ・デバイスを紹介します。Reasonはバーチャル・アナログのSubTractorやマルチシンセシスのThor、グレイン・テーブル・シンセのMalström、GM系の音源モジュールID8などを標準装備。中でもThorは16ステップ・シーケンサーを内蔵し使い勝手が良いのですが、リアにGateインを1つ備えているので、個人的にはRedrumから出力したGateでコントロールすることが多いです(画面④)。また、Reason 9から追加された“Players”デバイスと組み合わせてコードを作ることも。例えばScales & Chordsでは、テンション・コードやオープン・コードの作成などが可能。ハーモニーやバッキングを作るときの助けになります(画面⑤)。

 

▲画面④ マルチシンセシスのシンセ・デバイスThor

▲画面④ マルチシンセシスのシンセ・デバイスThor

 

▲画面⑤ “Players”デバイスの1つ、Scales & Chords

▲画面⑤ “Players”デバイスの1つ、Scales & Chords

 

以上のデバイスで出した音は、内蔵のミキサーでまとめることができます。このミキサーはSSL XL9000Kの忠実な再現を目指したもので、各チャンネルにダイナミクス・エフェクトやEQ、インサート・スロット、エフェクト・センドなどを備え、マスターにはバス・コンプを搭載(画面⑥)。エフェクトは空間系やひずみ系など一通りそろっており、中でもゲートやフィルター、エンベロープ・ジェネレーターを組み合わせたAlligatorは予想外の効果を与えてくれるので、アイディア出しの際に便利です(画面⑦)。

 

▲画面⑥ ミキサーのチャンネル・ストリップ2ch分とマスター。チャンネル・ストリップにはダイナミクス・エフェクトや4バンド・パラメトリックEQ+ローパス/ハイパス・フィルターなどが見える。このEQには周波数アナライザーが付いており、ポップアップ表示させることが可能。下にスクロールするとインサート・スロットやFXセンド、パンポット、フェーダーなどが現れる

▲画面⑥ ミキサーのチャンネル・ストリップ2ch分とマスター。チャンネル・ストリップにはダイナミクス・エフェクトや4バンド・パラメトリックEQ+ローパス/ハイパス・フィルターなどが見える。このEQには周波数アナライザーが付いており、ポップアップ表示させることが可能。下にスクロールするとインサート・スロットやFXセンド、パンポット、フェーダーなどが現れる

 

▲画面⑦ パターン・シーケンサーやゲート、フィルター、エンベロープ・ジェネレーター、LFOなどを備えたエフェクト・デバイス、Alligator

▲画面⑦ パターン・シーケンサーやゲート、フィルター、エンベロープ・ジェネレーター、LFOなどを備えたエフェクト・デバイス、Alligator

 

 

VSTプラグインの動作はとても安定
内蔵デバイスと併用し新たな音作りが可能

冒頭でも触れた通り、今回のVer. 9.5からVSTに対応しました。立ち上げてみるとすぐにスキャンが始まり、あっけないほど簡単にコンピューター内のVSTプラグインを認識。読み込まないプラグインがあれば、環境設定の“高度設定”メニューからそのプラグインを格納しているフォルダーを指定すればOKです。画面左側のブラウザーには、ReasonデバイスとともにVSTプラグインの一覧が出現。思わず“おおお!”と声を上げてしまいましたが、試しにNATIVE INSTRUMENTS FM8をダブル・クリック(もしくはドラック&ドロップ)すると見事に立ち上がる! この妙な心地というか感動は何なのでしょうか。ほかのプラグインも一通り起動チェックしてみたところ、とても安定しています。これらVSTプラグインは、最初はブラウザー上にサムネイルが表示されませんが、GUIをポップアップさせて“スクリーンショット”の表示を押せば、サムネイルが出てくるようになります(画面⑧)。

 

▲画面⑧ NATIVE INSTRUMENTS FM8をVSTで立ち上げたところ。画面左のブラウザーにはスクリーンショット機能でサムネイルを設定している。画面右のラックにもサムネイルがあり、これをクリックするとプラグインのGUIが立ち上がる

▲画面⑧ NATIVE INSTRUMENTS FM8をVSTで立ち上げたところ。画面左のブラウザーにはスクリーンショット機能でサムネイルを設定している。画面右のラックにもサムネイルがあり、これをクリックするとプラグインのGUIが立ち上がる

 

VSTに対応したことで、例えばReasonのパターン・シーケンサーMatrixからREFX NexusをCV/Gateで制御しながら、AUXのCVアウトをNexusのモジュレーションCVインに接続してフィルター・カットオフを動かすなど、今まで不可能だったことも可能に。ReasonのCVマージャー/スプリッターSpider CVでMatrixからのCVを振り分け、Nexusのほかのパラメーターを同時に動かすのもよいでしょう。これは想像以上に新鮮で面白く“やっぱりReasonは面白い、そして変わった音が(も)出る”と、あらためて感じさせてくれます。

本稿執筆時(2017年6月8日現在)は、Reason 9.5とSTEINBERG Cubase Pro 9をReWire接続したところ、構造によるものなのか、VSTiが認識されませんでした。今後どんなアップデートが出てくるか期待大です!

 


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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年8月号より)

PROPELLERHEAD

Reason 9.5

オープン・プライス(市場予想価格:37,000円前後)、アップグレード/オープン・プライス(市場予想価格:12,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪Mac:OS X 10.7以上(64ビット)、デュアル・コア以上のINTEL製CPU ▪Windows:Windows 7以上(64ビット)、デュアル・コア以上のINTEL製またはAMD製CPU ▪共通項目:4GB以上のRAM(容量の大きなReFillやRack Extensionを使用する場合は8GB以上を推奨)、4GB以上のディスク空き容量(スクラッチ・ディスク・スペースとして最大20GB使用することがある)、1,280×768px以上の解像度のディスプレイ

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