「ULTRASONE Signature Studio」製品レビュー:Signature Proの音質を継承した音楽制作向けのヘッドフォン

ULTRASONE Signature Studio

REVIEW by D.O.I.(Daimonion Recordings) 2017年5月26日

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高級ヘッドフォン・メーカーの代表格といったブランド・イメージのULTRASONE。筆者も同社Edition 8を所有しています。購入したときは“ヘッドフォンに16万円とかエラい時代になったな”と思った反面、その前のフラッグシップ機Edition 7の価格(40万円以上)のせいで“大分安くなったなぁ”という思いもあり、購入を決意した記憶があります。ここでレビューするSignature Studioは、ULTRASONEの中でもEdition 8系モデルと双璧を成す高級機=Signature Proの弟分という立ち位置。プロトタイプの時期から見本市などで注目されており、単にSignature Proの廉価版というニュアンスではない印象です。

 

空間表現が自然で耳に痛くない音
ミキシング用途にマッチしている

Signature Proに関しては、1年前に本誌の企画で試聴した際かなり良い印象だったため、この弟機のことも気になっておりました。Signature Proからの変更点は、ハウジングの素材が変わったところと、ヘッド・バンドおよびイア・パッドがエチオピアン・シープ・スキンからプロテイン・レザーになった点が主。音をつかさどるドライバーや“S-Logic Plus”(一般的なヘッドフォンと違い、鼓膜の延長軸上に音を出さず、外耳に音を反射させることで自然な広がりを認識させる技術)は変更無し。つまり“基本設計を踏襲しつつ、見た目や触感などの音に影響が少ない部分でコスト・ダウンを図った”という感覚です。

Signature Proと比較すると、装着感や音の距離感はかなわないものの、空間の自然さや高域にキツさが無いところなど、ミキシング用途という点では本機の方が好みです。ULTRASONEヘッドフォンの立ち位置の違いとして、Edition 8系の製品はリスニング向け、Signatureシリーズは音楽制作用という感覚があります。Edition 8は音源のアラがなるべく目立たないように、正確さよりも心地良さを重視しつつチューニングされていて、聴いていて楽しいヘッドフォン。それに対し、良い音というより各帯域の音量差や左右の位相、音の立ち上がりやスピードなどを色付けなく正確に再生するのがSignatureシリーズだと思います。なので音楽を楽しく聴くというよりは、音の違いを聴き分ける用途にバッチリです。

 

 

各帯域の量感の差が分かりやすい
位相にシビアでM/S処理などに向く

Signature Studioでアメリカのトップ40をザっと聴いてみたところ、ある程度平均的かと思っていた音質がかなりバラついているのが分かりました。一聴して素晴らしいと感じたのは、ミキシング時に施されたイコライジングへの反応。例えば、高域を上げて派手にしただけで帯域ごとの音量配分がうまくいっていない曲は、如実にやせて聴こえたりしました。また、シビランスの処理がうまくできていないものはとにかく痛く聴こえたりしたので、ミキシングにおいて処理の必要な部分がデフォルメされて再生されるようです。派手な曲はより派手に、地味な曲はより地味に、雑な処理がされた曲は聴きづらく、丁寧に処理された曲は曲に吸い込まれるように聴こえます。

再生する周波数の範囲はかなり広い印象で、上から下まで完全に把握可能。例えばEDM系だとローの位置が高く、そこにかぶらないようリバーブが配置されているのが分かります。トラップ系のヒップホップだと、サブベースがたっぷりと入っていて重心がかなり低いことが分かったり、その曲のミキシング・エンジニアがボーカルのスーパー・ハイをうまく扱っているか否かなど、各帯域の量感の差や重心が非常に分かりやすい。また音の立ち上がりについてもかなりシビアで、コンプによるアタック調整などの際も変化が分かりやすかったです。

そして特筆すべきは、定位の再現力の高さ。海外の音楽制作系サイトなどでは、ここ数年M/S処理の記事を目にすることが非常に多いのですが、それと呼応するように昨今の楽曲にもM/S処理でステレオ感を大げさに強調したものが多いように思います。Signature Studioは左右の位相に関してもかなりシビアで、プラグインで処理している最中“ここまでは良いけど、これ以上だとやり過ぎ”というあんばいが、今まで使ったモニター機器の中で一番分かりやすかったです。M/S処理のチェック用途のみでも、本機の購入を考えたほどです。空間の表現に関しては、高級機にありがちな変に広く再生している感が無く、リバーブでの処理がしやすいです。

装着感は、さすがにSignature Proのようなエチオピアン・シープ・スキンによる柔らかさはありません。ヘッド・バンドには若干の硬さを感じますが、それでもトータルでは全然悪くないです。ほかのULTRASONEの高級機のような見た目のエレガントさも感じませんが、安っぽさも全く無く、これくらいが使用時に変に気を遣わない感じでちょうど良いかもしれません。価格はSignature Proの半額以下。ミキシング時の音の変化が分かりやすいので、そういった用途ではかなり買いの機種かと思います。

 

▲付属の専用収納ボックスとともに。ケーブルは着脱式で、写真のものは3m長のカール・ケーブル。1.2m長のストレート・ケーブルも付属する

▲付属の専用収納ボックスとともに。ケーブルは着脱式で、写真のものは3m長のカール・ケーブル。1.2m長のストレート・ケーブルも付属する

 

 


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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年6月号より)

ULTRASONE

Signature Studio

オープン・プライス(市場予想価格:66,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪形式:密閉型ダイナミック ▪テクノロジー:S-Logic Plus、低域電磁波低減ULE ▪インピーダンス:32Ω ▪周波数特性:8Hz〜40kHz ▪マグネット:NdFeB ▪ドライバー:40mm径チタン・プレイテッド・マイラー ▪出力音圧レベル:98dB ▪重量:290g(ケーブルを含まず)

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