「MAKE NOISE 0-Coast」製品レビュー:Eurorackの雄が初めて作り出したセミモジュラー・シンセサイザー

MAKE NOISE 0-Coast

REVIEW by 深澤秀行 2017年4月13日

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ここ数年のモジュラー・シンセの熱い波を起こし、最先端でけん引し続けるEurorackメーカーの一つ、MAKE NOISEのモジュールの数々は、ウェスト・コースト・スタイルのシンセサイザー(SERGE、BUCHLAなど)に影響された製品が多く、またその個性的なデザイン=機能と相まって人気と実力を兼ね備えています。そんなMAKE NOISEが満を持して、テーブルトップ型のセミモジュラー・シンセ、0-Coast(ノー・コースト)を生み落としました。早速チェックしていきましょう。

フィルター/カットオフを搭載しない
新しいスタイルのシンセ

冒頭でも触れましたが0-Coastという名前から想像できるのは、“イースト・コーストでもウェスト・コーストでもない、新しいスタイル”ということでしょう。確かにパッと見た感じ、フィルター/カットオフなどのツマミは見当たりません。本機を上から見ると、7本の白い縦ラインでセクションが分けられているほか、さまざまな信号経路が白とゴールドのラインで描かれています。

上部のゴールド・ラインは、オシレーターの倍音生成とその出力の経路で、トライアングル・コアのVCOが、SLOPEでコントロールされたOVERTONE/MULTIPLYによって変調。さらに基音/倍音それぞれがBALANCEで音量調節されDYNAMICSでまとめられるさまが描かれています。

一方パネル下部のゴールド・ラインは、MIDI信号をCV/Gateに分けて、ピッチと発音の経路が書かれ、同じく白のラインはモジュレーションの入力端子からどのパラメーターをコントロールするかの経路が示されています。何をやっているか分からなくなったときは、これらのラインを眺めてみるとヒントが隠されているかもしれません。

▲写真①  0-CoastのOSCILLATOROVERTONE/MULTIPLY、SLOPEのセクション。オシレーターはトライアングル・コアのアナログVCOで、それをOVERTONE/MULTIPLYセクションで倍音をコントロールしながら音作りをする。さらにSLOPEセクションで、さまざまなニュアンスを付けることができる

▲写真① 0-CoastのOSCILLATOROVERTONE/MULTIPLY、SLOPEのセクション。オシレーターはトライアングル・コアのアナログVCOで、それをOVERTONE/MULTIPLYセクションで倍音をコントロールしながら音作りをする。さらにSLOPEセクションで、さまざまなニュアンスを付けることができる


 

VCOは三角波とパルス波を搭載
アナログ回路のトライアングル・コアを採用

それでは7つのセクションを左から一つ一つ見ていきましょう。一番左がMIDI部分。付属のMIDIケーブルから入力された信号はAとBの2チャンネルにCV/Gateコンバートされ、Aはインターナル信号、Bは独立したCV/Gate出力を通して利用できます。入力されたMIDI信号は、アルペジエイターやレガートはもちろん、MIDIクロックとの同期も可能です。

続いてのCTRLセクションは、TEMPOインプット、タップ可能なCLOCK OUT、ステップ・ランダム信号とマルチ出力、+/−アッテネートなどが並んでいます。同社Wogglebugをほうふつさせる部分です。

そしてその隣がOSCILLATORセクション。トライアングル・コアのアナログVCOで、同社DPOやSTOに通じるオシレーターです。FMインプットもあります。この0-Coastは、基本的にこのオシレーターとその隣のセクションにあるOVERTONE/MULTIPLYでコントロールする倍音での音作りが中心となります。しかし、オシレーター出力にはパルス波も選択できるので、パルス波のOUTを最終列のBALANCE INに入力すると、基本波形(三角波)と倍音のバランス・コントロールが、パルス波と倍音のコントロールになります。

続くOVERTONE/MULTIPLY部分が、0-Coastの音作りの心臓部です。最も特徴的なのは、基本波形(三角波)とこのセクションで作り出す倍音を、最終段のBALANCEツマミでコントロールできること。シンセにはさまざまな波形のエディット手段がありますが、“倍音の量をコントロールできる”ことが、フィルターらしいフィルターが存在しない新しいスタイルのシンセの名を冠する理由かもしれません。

次のSLOPEセクションは、CYCLEボタンにより繰り返し可能なファンクション・ジェネレーターで、下のRISEはアタック、FALLはディケイ/リリースと考えてください。SLOPEのCV OUTとMULTIPLYのCV INは、モジュレーション・ソースとして内部結線されているようなので、設計者としては一番のオススメなのでしょう。MULTIPLYにはかけたくなくて、コレでFMがしたいんだ!ということならば、MULTIPLYのCV INツマミを0にします。SLOPEは高速なLFOも余裕で生成するのでFMに使えるのです(写真①)。

SLOPEは同社のモジュール、MathやFunctionを思わせるパラメーターで、エンベロープ的な使い方に限らず、CYCLEボタンでLFOとしても使えます。普通のLFOとの違いは、RISE/FALL/RESPONSEツマミによってさまざまな波形が生成可能なことと、RISE/FALLにはモジュレーションがかけられること。例えばRANDOMをTIME MOD INにかけるとクロックに同期したランダムなタイミングでSLOPEの波形やCYCLEされる速度が変化するので、ランダムですがウォブル・ベースのような効果は簡単に得られます。またこのセクションの特徴として、CYCLEさせないでTRIGに入力した信号のタイミングでも使えますし、EoC(End of Cycle)という出力からCYCLEのゲートも出るので積極的に活用できそうです。

CONTOUR列は基本的にはVCA/ENVのこと。ONSET/SUSTAIN/DECAY/RESPONSEでさまざまな時間的音量変化を作り出します。鍵盤などのMIDI入力だけでなく、CLK OUTなどをCONTOUR TRIG INに入れてローパス・ゲート的に使うのも良いでしょう。

そして最終列の出力部分ですが、上段のBALANCEは本機の基本波形である三角波形(パルス波も選択可能)と倍音のバランスをコントロールします(写真②)。中段のDYNAMICS部は、マニュアルによると“イーストコースト・スタイル・シンセシスの代表的存在、MOOG MinimoogのLoudness Contour回路からインスピレーションを得た”と書かれています。どういった回路なのか知りたいところですが、パッと触った感じはボリュームではなくフィルターかな?と思ったくらいの音色変化がありました。さまざまな倍音生成が可能な本機において、このDYNAMICSコントロールはローパス・フィルターに通じる効果があるので重宝するでしょう。

▲写真② パネルの一番右側列にあるBALANCEのつまみで、本機のオシレーターと倍音のバランスを調整できる

▲写真② パネルの一番右側列にあるBALANCEのつまみで、本機のオシレーターと倍音のバランスを調整できる


 

ステップ・シーケンサーやDAWなど
外部機器との連動性も抜群

一通りの機能を見たところで、具体的な使用例を挙げてみましょう。KORG SQ-1やARTURIA Beatstepなどのステップ・シーケンサーとの相性は抜群。ディレイやリバーブなどのコンパクト・エフェクター類も音色に多彩な変化をもたらせるので気持ちが良いです。また、外部入力にも対応しており、任意の音をGATE INに入れれば0-Coastをトリガーできますし、MIDIクロックにも同期します。ELEKTRON Analog RytmやAKAI PROFESSIONAL Rhythm Wolfなどのリズム・マシンを入力してみたところ、相性も良かったです。気分によってはリズム・マシンを流しつつ0-Coastをドローン・モードにして倍音変化させるだけで不気味なトラックの完成です。もちろんAPPLE iPhoneなどからトラックを入力すれば、0-Coastのシンセシスとトラックを同時に鳴らすことも可能です。

DAWとの組み合わせもソフト・シンセとは違う直感的な操作や、想像を超えた音色の変化でトラックに特徴を与えるでしょう。例えば筆者は、APPLE MacBook Pro上のABLETON Liveで、NATIVE INSTRUMENTS Komplete Audio 6からベース・トラックのMIDIデータを0-Coastへ送り、0-Coastの音声出力をLiveに戻して使用してみたら、予想外の変化で楽しめたし、こういったことがハードウェアの醍醐味でもあると思いました。

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同価格帯のテーブルトップ・シンセの選択肢にはDOEPFER Dark EnergyやMOOG Minitaurなど多数存在します。しかしそのどれにも似ていない独特な音/倍音を作り出せる本機は、楽曲に何かほかの人とはひと味違うアクセントを求める人や、DAWなどの音楽制作環境に個性的でコンパクトなシンセを求める人はもちろん、モジュラー・シンセに興味はあるがベーシックなシステムを組むのは予算的に難しい人にもオススメです。MIDI関連の機能も装備し、ほかに何も必要としない本機の機能と価格を考えると、常軌を逸した製品であることは間違いありません。本機だけでも、DAWやモジュラー・システムに組み込むことも容易なので、手に入れない理由は見つからないでしょう。

 

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サウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より)

 

MAKE NOISE

0-Coast

オープン・プライス(市場予想価格:59,800円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪VCO:三角波、パルス波(トライアングル・コアのアナログVCO) ▪外形寸法:139.7(W)×37(H)×228.6(D)mm(ゴム足、ノブを含む) ▪質量:764g ▪付属品:パッチ・ケーブル(メーカー純正品)、 ステレオ・ミニMIDIケーブル、ACアダプター

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