「TAGO STUDIO T3-01」製品レビュー:独自のコーティングを施した振動板を搭載する密閉型

TAGO STUDIO T3-01

REVIEW by 森元浩二 2017年4月3日

T3-01_photo

TAGO STUDIO TAKASAKI は群馬県高崎市出身の作曲家/音楽プロデューサー多胡邦夫と高崎市が立ち上げた、プロフェッショナル専用のレコーディング・スタジオです。そのスタジオからオリジナル・ヘッドフォンのT3-01が発売されました。Webサイトによると、施設運営責任者である多胡氏が“コンピューターやスマートフォンなどで音楽を聴くことが主流となっている中、音楽で本当の感動を届けるためには、ヘッドフォンやイアフォンが最後の砦になる。音のプロフェッショナルたちの、音作りに込めた思いをそのまま届けたい。一流レコーディング・エンジニアやアーティストの要望と意見を集めた、TAGO STUDIOならではのヘッドフォンを作ろう”と、同じく高崎市に設計/開発拠点を構えるヘッドフォン/イアフォンのOEMメーカーTOKUMIとともに作り上げたようです。

ハウジングにはメイプルを使用
自然で奇麗な伸びのあるサウンドを狙う

では製品を見ていきましょう。レコーディング・スタジオで録音時のモニターとして使うことが前提のため、音漏れのしない密閉型のヘッドフォンになっています。ドライバー・ユニットはダイナミック型40mmの大口径を採用。本機のために新開発された振動板には、シルク・プロテイン・コーティングという特殊なコーティングが施されています。群馬県繊維工業試験場と共同研究開発した群馬県産シルクを、高い技術力で振動板に適するよう精練。それを溶液化してコーティングしており、伝統の素材と新しい発想によって、自然で奇麗な伸びのある音質を実現したとのことです。木目が美しい木製のハウジングは楽器でもよく使用されるカエデ材(メイプル)で、自然の温もりを感じるデザイン。家具や建築など、長年さまざまな木と向き合ってきた木工のプロフェッショナルである飛騨高山の企業、オークヴィレッジが製作し、モニター・サウンドに有利な原音に忠実かつナチュラルな響きが得られるとのことです。インピーダンスは70Ωと標準的で、出力音圧レベルは100dB SPL/mWと高能率。最大入力が1,000mWあるので、ライブ会場などの大音量の中でも十分な音量を鳴らすことができます。

イアパッドは手触りの良いファブリックと柔らかい革を組み合わせたもので高級感があり、着けたときのフィット感も抜群。遮音性もしっかり確保されています。ヘッドバンドはステンレスと革のパッドの組み合わせで、頭の小さい女性から私のような大きな頭でもまだ余裕があるくらいです。金属製で簡単な構造のため、折れるなどのトラブルも少ないと思います。重量は約321g(ケーブル含まず)で、同グレードのヘッドフォンと比べても標準的な重量ですが、秀逸なイアパッドとヘッドバンドの組み合わせで実際の重量よりも軽く感じられます。ずっと着用していても疲れが少なく、長時間の作業もしやすいでしょう。付属しているケーブルは1.8mで、L/R別々の両出しタイプ。金メッキのステレオ・ミニを採用し、ステレオ・フォーン変換プラグも用意されています。付属のケーブルはアンバランス接続となっていますが、高級ヘッドフォン・アンプなどで採用されているバランス接続のケーブルにも対応できる仕様です。

 

定位がクリアに感じられる
高解像度でバランスの良い音質

肝心の音質ですが、音楽制作で使用するヘッドフォンとしては最高峰と言っていい、素晴らしい音だと思います。特定の帯域を強調することのない良いバランスで、ヘッドフォンでは判断しにくい低域のひずみも手に取るように分かります。そして特筆すべきは定位がクリアに感じられること。パンを少し振っただけで、正確に音像が移動します。高解像度で、音数が多いオケでも各楽器の音のニュアンスがはっきりと分かり、ミックスの最終段階まで作業できるヘッドフォンになっています。これは生産量を抑え、ユニットの周波数特性と左右の誤差を厳しくチェックして組み上げている成果でしょう。また、ドライブするアンプの違いによる音質変化も少なく、使用する機器に装備されているヘッドフォン出力端子でも良いバランスで鳴りました。ヘッドフォン・アンプなどを用意しなくても、しっかりとしたサウンドが得られます。

世界有数の音響機器メーカーでも、ミックスで信頼して使えると思える機種はあまりありません。多胡氏からヘッドフォンを作りたいという話を聞いたときは、“評価できる製品を作り上げるのはかなり難しい。いや、無理なのではないだろうか?”と心の中で思っていました。完成した試作機を聴く際には、ダメだったらなんて言おうかと考えていたのですが、音が出て数秒でT3-01の完成度に驚き、よくここまで仕上げたものだと感銘を受けました。ヘッドフォンは幾ら正しく良い音がしていたとしても、製品の特徴によって見落としてしまう音というのがあるので、ミックスの際には幾つかのヘッドフォンを併用したほうがいいと思っています。私も信頼できる数種類のヘッドフォンを使っていますが、T3-01はそのグループに入れる、世界最高峰の音をしていると思います。“あまりにも褒めすぎだ”とお思いの方もいると思いますが、試聴機が設置されているショップもありますので、ぜひご自身の耳でT3-01の良さを確認していただきたいと思います。

◀付属しているケーブルは1.8m長で、両出しタイプ。こちらはアンバランス接続だが、T3-01はバランス接続のケーブルにも対応できる仕様になっている

▲付属しているケーブルは1.8m長で、両出しタイプ。こちらはアンバランス接続だが、T3-01はバランス接続のケーブルにも対応できる仕様になっている


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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年4月号より)

 

TAGO STUDIO

T3-01

54,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪形式:密閉ダイナミック型ヘッドフォン ▪ドライバー・ユニット:40mm径 ▪周波数特性:5Hz〜40kHz ▪出力音圧レベル:100dB SPL/mW ▪最大入力:1,000mW ▪インピーダンス:70Ω ▪プラグ:金メッキ・ステレオ・ミニ ▪ケーブル:1.8m長(Y型、着脱式) ▪重量:約321g(ケーブル含まず) ▪付属品:ヘッドフォン・ケーブル、ステレオ・フォーン変換プラグ、キャリング・ケース

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