「NOVATION Circuit」製品レビュー:2シンセ+4リズム・マシンという仕様のダンス・ミュージック生成機

NOVATION Circuit

REVIEW by Taichi Master 2016年6月1日

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NOVATIONと言えば、筆者のファースト・アナログ・シンセがBass Stationでした。レイブ・カルチャー発祥の地イギリスらしく、一貫してクラブ・ミュージック向けの機材を打ち出しているメーカーという印象があります。そんな同社がリリースする新しい一体型ダンス・ミュージック制作マシンが、このCircuitです。

単三電池×6でも駆動可能
的を絞った計128の音色を搭載

Circuitは32個のパッド、8つのノブ、さらにスピーカーを搭載し、単三電池×6でも動作するなどスタンドアローンでの使用が可能です。2パートのポリフォニック・シンセと4パートのリズム・マシン、そしてグリッド・ベースのシーケンサーを組み合わせ、各パートにはリバーブとディレイも装備。マスターには専用のノブを備えたフィルターが搭載されており、トータルの出音にハイパス/ローパス・フィルターをかけられます。シンセ部には同社Novaシリーズのエンジンを搭載しているとのことで、伝統とも言えるブリブリしたシンセ・ベースから鋭い切れ味のリードまで、非常に現代的でダンス・ミュージック向けのサウンドが64個プリセットされています。リズム・マシン部は、明記はされていませんが同社のDrum Stationに近い印象。ROLAND TR-808/909のエミュレーションを基本としたドラム・サウンドが64個プリセットされています。

シンセ部と合わせて計128個のプリセットは今どき少ないように感じますが、Circuitにはディスプレイが無く、32個のパッドを使った直感的な音色選択を基本としているので、32×4バンクで128個になっているのです。以前、エンジニアの渡部高士さんが“人間が完全に把握できるプリセットの数は128個までで、それ以上は覚え切れないから無いのと同じ”と言っていましたが、Circuitを使ってみると、なるほどその通りだと実感します。

 

スケール指定機能を装備
DAWとは異なる“ノリ”が楽曲に加わる

プリセットは最近のトレンドであるEDM、テック・ハウス、トラップ系のものが中心。サウンドの傾向としては、非常にクリアでハイファイな今っぽい鳴りに感じました。シーケンサーは最大128ステップですので、トラップで多用される高速ハイハットなども難なく打ち込めます。

では、シンセでオリジナル・パターンを打ち込んでみましょう。“Sessions”ボタンを押しながら32個のパッドから新しいセッションを選びます。“Synth 1”を選択すると32個のパッドのうち上2段が鍵盤、下2段がステップ・シーケンサーになります。パッドですので通常の鍵盤配列ではありませんが、スケールを設定できるのでどのパッドを押さえてもそのスケールから外れず、破たんの無い演奏が可能です。ちなみにCircuitのボタンとパッドはすべて自照式で、モードによって光り方や色が違うため、慣れると今どのモードなのか一見してすぐ分かります。

パッドを押さえていい感じのフレーズができたら録音ボタンを押せばすぐに記録でき、ミスタッチなどは下2段のステップからデリートすればよいので、手早く次から次へとフレーズを作成できます。

リズム・マシンは一度に2パート打ち込めるようになっており、上段2列の16個がキック、下段2列の16個がスネアのステップ・シーケンサーという感じでパターンを作成していきます。入力した個所のパッドが光る、いわゆる“TR-REC方式”で入力していく方法と、リアルタイムでパッドをたたいて入力する“MPC方式”の2つがあります。なお、このパッドはベロシティ・センシティブに対応していますので、強弱をつけた入力が可能です。

1パートにつき8個のパターンを持てますので、今度は“Patterns”モードに入り、再生しながらパッドでパターンを選択して切り替えていきます。これだけでもう曲っぽくなってきました。パターンの作成、編集、切り替えなど、すべての工程を再生を止めることなく行えるので、例えばライブ時にその場でゼロからトラックを作り即興演奏するなんてことも可能。その際、8つのノブにはマクロでそれぞれカットオフやレゾナンスなどよく使うパラメーターが自動でアサインされますので、リアルタイムでダイナミックな変化を付け、その動きを記録することもできます。

本体ではユーザーが音色自体を作成するような細かいエディットはできませんが、Mac上で動作するエディターがリリースされたので、そちらを使うと音色を作れます。本体にはMIDI入出力が用意され、USB経由でコンピューターとMIDIのやり取りが可能なので、DAWからCircuitの音源を鳴らしたり、外部MIDI鍵盤からCircuitのシーケンサーに入力もできます。

Circuitの音源は6パートですし、“あれもこれもできます”的な優等生タイプではないですが、ダンス・ミュージックのトラック制作に的を絞ってすべてを直感的に操作できるので、楽曲にDAWベースの制作と異なるノリが出てくるのは間違いありません。実は既に実機を所有しているのですが、触っていて本当に楽しいです。DAW全盛の時代に単体のハードウェアを使う意義をあらためて提示する、音楽的な“ソウル”を持ったマシンだと思いますし、長く愛用していくことになりそうです。

 

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年5月号より)

 

NOVATION

Circuit

オープン・プライス(市場予想価格:43,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪パッド:RGBバックライト、ベロシティ・センシティブ対応パッド×32 ▪ボタン:RGBバックライト対応ファンクション・ボタン×28 ▪ノブ:RGBインジケーター対応ノブ×8 ▪シンセ・プリセット:64 ▪ドラム・プリセット:64 ▪外形寸法:240(W)×35(H)×200(D)mm ▪重量:950g

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