「ASPEN PITTMAN Center Point Stereo Spacestation V.3」製品レビュー:一台でステレオ感ある音像を再生できるパワード・スピーカー

ASPEN PITTMAN DESIGNS Center Point Stereo Spacestation V.3

REVIEW by 西川文章 2016年3月27日

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Center Point Stereo Spacestation V.3(以下CPS SS V.3)は、その名前の通り一つの場所(キャビネット)からステレオ再生を可能にするという非常に画期的なパワード・スピーカーです。どうやってそれを実現しているのかを見ていきましょう。

M/S方式で300°の指向性を実現
しっかりした中心と広がりを両立

通常のステレオ再生は、L側/R側の2台のスピーカーを使い、一定の距離を空けて空間に配置した上で、L/Rそれぞれ別の音を出力。それを空間上で合成して広がりを持った定位と音像を表現するというものですよね。ただこのL/Rステレオ・システムには問題があって、厳密に言えば左右のスピーカーのちょうどセンターでなければ、制作者が意図した正しい音像を聴けません。この“スイートスポット”以外の場所ではバランスの崩れた音を聴いているとも言えます。とはいえ、クラブやライブ・ハウスに遊びに行って“真ん中以外で聴いてはいけません!”と言われたら踊れないし、楽しくないですよね。

でも、もし同じ会場にいる全員が演奏者も含め場所にとらわれず、全く同じ音で聴くことができたらもっと楽しいはず。CPS SS V.3は1つのキャビネットからステレオ再生を可能に、しかも300°の非常に広い指向性を持つので、会場のあらゆる場所がスイートスポットになり、均一な音響空間を体感&共有できるという可能性を持ったスピーカーです。

最初にCD音源を再生してみましたがビックリしました。一般的なステレオ・スピーカーとは全く違います。まず考え方が全く違う。L/Rステレオではないのです。この製品は“3Dステレオ”を謳っているのですが、その意味が分かりました。ものすごい広がりを持って聴こえるのですが、土星のようなイメージの音像と言えばいいのでしょうか、中心にしっかりとサウンドがあってその周りを囲むように音が広がっていくという感じがします。“中心”と“広がり”とでのステレオ再生になっています。

再生方式はいわゆるM/S方式で、入力されたL/Rの音源をまず電気的にMid(センターの音像:L+R)とSide(広がりの音像:L−R)にエンコードし、それぞれフロント・スピーカー、サイド・スピーカーから出力しています。フロント側は3ウェイ構成で、8インチ・ウーファーに加え、その左上に中高域を担当する同軸ユニットを実装。サイド・スピーカーは6.5インチ・ユニットです。部屋の中を歩き回っていろいろな場所で聴いてみても、ほぼ違和感無く均一に音が広がっていました。

また本体には“WIDTH”というつまみが付いていて、これで広がり具合を調節することもできます。野外と屋内など、反射の環境が違う場面で、正面とサイド側に起こる音の差異を補正することが可能です。

 

リバーブ成分をサイド側に送ることで
広がりのあるギター・アンプとしても使用可

ブランド・オーナーのアスペン・ピットマン氏はFENDERやAMPEG、BOGNERなどのギター・アンプ設計にかかわってきた方とのこと。CPS SS V.3はアコースティック・ギター用アンプとして使用しても素晴らしいとのことでしたので、アコギでも試してみました。カフェなどでの小規模ライブを前提として、ミキサーを用意。そこにアコギを接続し、ステレオ・リバーブをかけた状態でミキサーのステレオ・アウトからCPS SS V.3に入力しました。ギターの音は、率直に良かったです。もっとラインで拾った“ぺたっとした音”になるかと思っていましたが、まさにギター・アンプで鳴らしているような深みのあるマイルドなサウンドがしました。それにステレオ・リバーブを足していくと、素晴らしい広がりを持った、包み込まれるようなサウンド。このスピーカーはこういう使用方法がベスト・マッチするんだろうと思います。

例えば、アコギとボーカルをミキサーに接続してステレオ・リバーブを付加します。するとフロント・スピーカーから各楽器の生音がしっかり再生され、サイド・スピーカーからリベーブが広がっていくといったイメージになります。またキーボードやシンセなどのステレオ・ソースの楽器用に、モニター・スピーカーとして使うのも良いと思います。これらの楽器は直接CPS SS V.3へ接続できますので、より簡単にこのスピーカーのサウンドの恩恵を受けられるでしょう。

また、フロント・スピーカーはハイ/ミッド、それぞれのユニットの出力を調整できますので、いわゆるEQと同じように音質調整も可能。大きな会場で、より大きな低音が必要な場合は、サブウーファーにつないで音を補強することもできます。

§

小規模のアコースティック・ライブではこのスピーカーとミキサー、リバーブがあれば、ミュージシャンのモニターとオーディエンス用FOHスピーカーとを兼ねることができ、均一に素晴らしい広がりを持ったサウンドを会場内に届けることができそうです。また、もちろん、ギターなどアコースティック楽器のモニター用として、ステレオ・シンセやキーボードのモニターなどにも良いと思います。今までに無い新鮮なサウンドを提供してくれる、とにかくまず一度聴いて体感してみてほしいスピーカーですね。

▲リア・パネル。左からライン入力L/R、サブウーファー出力(以上すべてフォーン)。CPSコントロールは、LEVELが全体の音量、WIDTHがサイド・スピーカーの音量。SPEAKER CONTOURは中域と高域の補正機能

▲リア・パネル。左からライン入力L/R、サブウーファー出力(以上すべてフォーン)。CPSコントロールは、LEVELが全体の音量、WIDTHがサイド・スピーカーの音量。SPEAKER CONTOURは中域と高域の補正機能

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年3月号より)

 

ASPEN PITTMAN DESIGNS

Center Point Stereo Spacestation V.3

オープン・プライス(市場予想価格:89,800円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪アンプ出力(RMS):フロント・ウーファー/10 0W、サイド・スピーカー/100W、ミッドレンジ・ドライバー/40W、スーパー・ツィーター/40 W ▪周波数特性:100Hz~20kHz ▪THD:0.009%(typical)、0.1%(max) ▪外形寸法:279(W)×457(H)×279(D)mm ▪重量:12.7kg

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