「ZYNAPTIQ Unchirp」製品レビュー:圧縮が原因で起こるノイズや劣化を改善するプラグイン・エフェクト

ZYNAPTIQ Unchirp

REVIEW by 森田良紀(studio foresta) 2016年2月24日

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リバーブ成分の調整が可能という画期的なプラグイン、Unveilで有名なZYNAPTIQから、圧縮音源などで起こる耳障りなノイズ補正や、過度にコンプレッションされた音源のトランジェント修復などが可能なプラグイン、Unchirpが発売されたということで、チェックしていきたいと思います。Mac/Windows対応で、フォーマットはAAX/RTAS/Audio Units/VSTです。

小鳥のさえずりのようなノイズを除去
失われたトランジェントの回復も可能

Unchirpの主な機能としては、プラグイン名の“chirp”が“小鳥のさえずり”という意味があることから分かるように、低ビット・レートに圧縮したMP3音源などで発生する、小鳥のさえずりのようなノイズを抑制することが可能です。それに加え、極度に音圧を上げ過ぎてビートの抑揚すら感じられなくなってしまった音源に対して、トランジェントを修復することも可能となっています。

何はともあれ使ってみようということで、まずは説明書を読んでみましたが……これがもう人生で出会ったプラグインの中でも1、2を争うぐらい難解。何度も読み返して何とか半分くらいは理解できました。でもご安心を。そこはメーカーも分かっているようで、便利なプリセットが多数登録されています。圧縮ノイズ処理に有効な、MP3やAACのビット・レートに合わせたプリセットも豊富に用意され、ほかにも実用的に使えそうなプリセットが多数。この中から用途に一番近いプリセットを選び、そこから音源に合わせて微調整を行うのがよいように思いました。もちろんこのプラグインの動作原理を理解できる方はマニュアル操作も可能ですので、かなり突っ込んだ使い方もできる懐の深さはあります。

素材には低ビット・ノイズが含まれる、ノイズ・リダクション処理を過度に施したファイルを用意。狙ったノイズが含まれたものを作成できたので、これをUnchirpで処理すると、完全とは言えないまでも気になっていたさえずり音が抑制され、とても聴きやすいレベルまで補正が可能です。ノイズ・リダクションは音楽制作ではなかなか使う場面は少ないですが、映像現場で収録されるような音声処理などでは使用頻度の高い処理なので、とても役立つ機能となるのではないでしょうか。

また、音楽制作で活用する方法として、かなり強いコンプレッションをした音源も用意。これもある程度のトランジェントを感じられるように補正することが可能でした(画面①)。

▲画面① TRANSIENTSセクション。左が原音のトランジェント成分の量、右がUnchirpで合成したトランジェント成分の量。どの周波数帯に加えるかはグラフ上にカーブを描いて設定し、中央のトラック・ボール・スライダーで適応量を決める

▲画面① TRANSIENTSセクション。左が原音のトランジェント成分の量、右がUnchirpで合成したトランジェント成分の量。どの周波数帯に加えるかはグラフ上にカーブを描いて設定し、中央のトラック・ボール・スライダーで適応量を決める

ただしあまりやり過ぎると違和感を覚えるため、補正のかかり具合はほどほどにする方がよさそうです。ループ素材などでもう少しビート感を強めたい、はっきりさせたいときなどに有効ではないかと思いました。

 

高周波成分の復元機能を使って
エキサイター的な効果も得られる

基本的には低ビット・ノイズの除去とトランジェント補正という、2つの機能がベースとなっていますが、それらに追加して高周波成分を復元&付加する機能が備わっています(画面②)。一見よくあるエキサイターと同じ仕組みかと思ったのですが、そこは全く新しい技術を使っているとのことで、より自然な高周波成分の補正を可能としていました。ただしこちらも過度な使用は不自然になるので注意が必要です。

▲画面② TREBLE BOOSTセクションは、本来低ビット・レート化で失われた高域を倍音合成して補うものだが、エキサイター的な使用も可能。TYPEスライダーを下げると感度が高くなるが、ひずみが目立ちやすくなる

▲画面② TREBLE BOOSTセクションは、本来低ビット・レート化で失われた高域を倍音合成して補うものだが、エキサイター的な使用も可能。TYPEスライダーを下げると感度が高くなるが、ひずみが目立ちやすくなる

これらの機能からするとUnchirpはあくまでも状態の悪い音源を修復するだけと思われてしまいそうですが、問題の無い音源に対しても有効です。補正の効果をうっすらほどよくかけることによって、ちょっとしたアクセントを追加する、マスタリング的な使い方も可能でした。

一つ注意すべき点としては、膨大な演算が必要なためかCPU負荷がとても高いです。APPLE Mac Pro 12 Coreモデルでも、通常モード時でCPUメーターが60
%辺りになり、HDモード時は時折ノイズが出てしまうほど高負荷になりました。基本的には通常モードで調整を行い、その後HDモードでオフライン・レンダリングを実行するという使い方が正解のようです。

§

なかなか特殊なプラグインだと思いますが、日ごろノイズ・リダクション・ソフトを使い、それによって発生するノイズに悩まされている方にはとても有効なツールになると思います。さえずりノイズに悩んでいる方は一度試してみるのはいかがでしょうか。

ちなみに今回、Unchirpの効果のほどをチェックするためにワザと圧縮で劣化させたファイルを作成しようとしたのですが、最近のMP3エンコーダーは性能が格段に良くなっており、ビット・レートを低く設定してもさえずり音のノイズがほとんど生成されませんでした。そんなことからも圧縮ノイズ補正という機能を活用する場面は、過去の音源処理がメインになるのかなと思いました。

製品サイト:http://www.mi7.co.jp/products/zynaptiq/unchirp/

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年1月号より)

 

ZYNAPTIQ

Unchirp

オープン・プライス(市場予想価格:39,800円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.6以降、2.4GHz以上のデュアル・プロセッサー(クアッド・コア以上を推奨)、1GB以上のメモリー、60MB以上のディスク空き容量、AAX/RTAS/Audio Units/VST 2.4互換のDAWソフト(32/64ビット)、インターネット接続(アクティベート用) ▪Windows:Windows XP SP3/Vista/7/ 8、2.4GHz以上のデュアル・プロセッサー(クアッド・コア以上を推奨)、1GB以上のメモリ ー、60MB以上のディスク空き容量、AAX/R TAS/VST 2.4互換のDAWソフト(32/64ビッ ト)、インターネット接続(アクティベート用)

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