「SOFTUBE Transient Shaper」製品レビュー:音のアタック/リリースを自在にコントロールできるプラグイン

SOFTUBE Transient Shaper

REVIEW by D.O.I. 2015年8月3日

kick

筆者がエンジニアを始めた当時、音のアタック/リリースをコントロールする方法はコンプレッサーかゲートしかありませんでした。その後、アタック/リリースを一個のつまみだけで制御できるSPL Transient Designerが発売され、自分が知るほとんどのエンジニアが導入するほどの人気機材になりました。ミックスにおけるアタック/リリースは、楽曲全体のイメージに大きく影響を与える重要なポイント。その意味で需要も多く、近年はいわゆる“トランジェント系”のプラグインが、かなりの数リリースされています。SOFTUBE Transient Shaperは、その競争の激しい領域にあえて参戦しただけあり、非常にユニークなものになっています。

HI/WIDE/LOの周波数帯域ごとに
トランジェントを制御可能

本プラグインはVST/Audio Units/AAXに対応。まず最も目立つ位置にありながら、この手のプラグインでは見たことがないCROSSOVERなるパラメーターが気になりますが、数値表示から周波数を制御するものと推測できます。そしてSUSTAIN(リリース)とPUNCH(アタック)の右にHI/WIDE/LOの切り替えスイッチがあることから、このプラグインのキモはアタック/リリースを周波数帯域ごとに制御できることだと分かります。マルチバンド・コンプが山ほどリリースされている昨今、周波数別対応のトランジェント系プラグインも容易に思い付きそうですが、なぜか実現されていなかった仕様。いろいろなことがこのプラグインで可能になる気がしてきます。

では思い付いた手法を具体的に3ケース述べていきたいと思います。まず一番目は使用頻度が最も高いキックのコントロールで、“アタックは十分ながら低域の量感が足りない”場合。調整するのは基本的に中低域以下ですので、CROSSOVERを475Hzくらいにして、PUNCH/SUSTAINともにLOで2時くらいの位置に設定(メイン画面)。こうすることでアタックはそのままに低域の量感だけを増加させられ、いわゆる“太いキック”にできます。この際、PUNCH部分のスイッチはSLOWを選択。ここでアタックを点(FAST)でバチッとさせるか、面(SLOW)でゴツッとさせたいかを選べます。このパラメーターは効きが分かりやすく、今回のようにSLOWを選択すると、アタック以外でも低域の量感がモリッと増える印象になります。

次は“ちょっと淡泊なスネアにオケ中での存在感を付けたい”場合です。ミックス中はさまざまなトラックで高域成分が足されていくことが多く、スネアの存在感を増したい場合は逆に中低域にすき間を見つけて、そこから音が抜けてくるようにします。設定はCROSSOVERを1,300Hzくらいにして、SUSTAINをLOで2時、PUNCHをLOで1時くらいにし、スネアはアタックを“点”で意識させたいのでFASTに設定します。ディケイ部分が盛り上がることでアンビエンス的なニュアンスが付加され、存在感がありつつオケとのなじみも良くなりました。

 

ボーカルの粒立ちをそろえる
“禁断の”トランジェント制御テクニック

三番目はトランジェント系では禁断の技“ボーカルの粒立ちをそろえたい場合”です。まずはコンプやEQで音作りをします。通常の処理をすべて施してもまだ音がぬるく、しかしこれ以上コンプやEQをすると逆にうるさくなってしまいそうなときこそ、Transient Shaperの出番です。まずSUSTAIN/PUNCHともにHIで1時くらいに設定した状態でCROSSOVERのつまみを動かし、良い値を探ります。今回は650Hz辺りで良い雰囲気となったのですが、結果としてボーカルのアタックが適度に強調されて滑舌が良くなり、さらに低域のモッサリ感も、音をやせさせない程度にうまくスッキリさせられました(画面①)。ボーカルにトランジェント系をかけるのは、以前ルーティングを間違えてTransient Designerをボーカルにかけてしまった際に良さを発見し、それ以来よく使用している手法です。本プラグインはパラメーターも多いので、Transient Designerよりさらにうまく機能する印象でした。

◀画面① ボーカルでのセッティング例。テスト時はSUSTAIN/PUNCHともにHIで1時くらいに設定し、CROSSOVERは650Hz辺りに調整したところで、オケに埋もれず、かつうるさくないボーカルとなった

▲画面① ボーカルでのセッティング例。テスト時はSUS
TAIN/PUNCHともにHIで1時くらいに設定し、CROSSO
VERは650Hz辺りに調整したところで、オケに埋もれず、かつうるさくないボーカルとなった

Transient Shaperは一見パラメーターが多いように思えますが、操作はそれほど複雑ではなく、欲しいところを的確につかまえて、狙った音に持っていくことができました。トラック・メイクをしていて“さあミックス!”という段階で聴き直すと、音が足されていく過程で気付かないうちにドラムが埋もれていた……という経験がある方も多いと思います。そうした場合、取りあえずこのTransient Shaperで微調整することで、当初イメージしていた“ドラムの抜け感”に戻れるでしょう。またここまで触れていませんでしたが、一番右のCLIP/NO CLIPも音質変化が大きく、すべての音が出た状態でここを切り替えると、当該のパートがオケの中で出たり引っ込んだりするのを感じ取れると思います。地味ながら重要なパラメーターですので、こまめに切り替えて試すことをお勧めします。

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年7月号より)

SOFTUBE

Transient Shaper

11,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪Mac:OS X 10.8以降、INTEL製プロセ ッサー ▪Windows:Windows 7以降、INTEL Core Duo、AMD Athlon 64 X2以上のプロセッサー ▪共通項目:iLok USBと最新のiLok Lic ense Manager

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