小型ながら18イン/18アウト、USB/FireWire対応のオーディオI/O

RME Fireface UCX

REVIEW by 草間敬(KURID INTERNATIONAL) 2012年5月1日

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 ドイツの老舗メーカーRMEから、ハーフラック・サイズの新しいオーディオI/Oが登場した。外見はFireface UCの後継機という雰囲気だが、実際は上位機種Fireface UFXがコンパクトになったような進化だ。音質もさることながら、TotalMix FXというDSPミキサー・ソフトの充実ぶりに驚かされた。これはEQやコンプなども完備した”デジタル卓付きのオーディオI/O”じゃないか! 今やどんなDAWでも、ほぼすべてのオーディオI/Oから自分の気に入ったものを自由に選べるようになった。メーカーにとっては戦国時代を迎えているわけだが、そんな中でもユーザー側からひときわ注目度の高い本機はどんなものなのか? 早速チェックしてみよう。

原音忠実で中域の解像度が高いサウンド
iPadにも接続して使える

まず簡単にFireface UCXの主な特徴を挙げよう。接続はFireface UCがUSB 2.0だけだったのに対し、本機にはFireWireも追加された。Mac/Windowsで使用可能で、Core Audio/ASIO/WDMのオーディオ・ドライバーに対応。最高24ビット/192kHzの録音ができる。さらに、この価格帯では初のクラス・コンプライアント・モードを搭載し、APPLE iPad Camera Connection Kit経由でiPad/iPad2でも使えるようになった(iOSの仕様で24ビット/96kHzまで)。

オーディオ入出力はアナログ8ch、S/P DIF×1系統、ADATオプティカル×1系統(S/P DIFオプティカルへ切り替え可能)という、最大で18chの入出力が可能。アナログ入力には2基のプリアンプも搭載する。そしてMIDI入出力が2系統に、ワード・クロックの入出力も完備。さらにREMOTEという端子には別売のRemote Control(写真①/本機の初回200台限定パッケージにも同梱)を接続し、特定チャンネルのボリューム調整やミュートなど、自分で設定した操作ができる。

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 ▲写真① 本機のチャンネル・ボリュームやミュートなど任意に設定したコントロールが可能な別売のRME Remote Control(オープン・プライス/市場予想価格14,700円前後)。Fireface UCXの初回200台に限り無償同梱される

続いて音質について。音を文章で表現するのはとても苦手な僕だが、一言で言うと非常に良かった……ってこれではレポートにならないので(笑)、もう少し具体的に書こう。RMEらしく飾り気は少なめだが、中域をちゃんと再生するサウンドに好感が持てる。さらに、外部からワード・クロックを供給した状態と内部クロックで聴き比べてみた。僕が自宅で使っているクロック・ジェネレーターは一昔前の機種なのだが、Fireface UCXで試したところ内部クロックの方が好印象だった。メーカー資料にも”ジッター抑制技術SteadyClockの機能により、内部/外部クロックを問わず高精度なAD/DA変換を実現”とあるが、これは嘘じゃないと思った。Fireface UCXの内部クロックは、一昔前の専用機のそれを上回る精度を持っていると言える。最新のルビジウム・クロックなどをFireface UCXに供給すれば、さらに広がりと奥行きのある音場を得ることができるだろう。マイクプリも全く問題なく使えるクオリティで、+48Vファンタム電源を使ったコンデンサー・マイクでの録音はもちろん、ダイナミック・マイクでも十分なゲインを得られた。かなり増幅してみたが、ノイズも全然気にならない。

またiPadにも接続してみたが、これも素晴らしかった。パソコンのDAWにつないだときと同様の印象で、色付けの無い素直な音&中域の解像度が素晴らしい。iPadの仕様上、出力は2chに制限されるが、アプリによっては複数入力も可能だ。

ミキサー・ソフトのTotalMix FXを付属
内蔵エフェクトのかけ録りも可能

次にFireface UCXの大きな特徴である、TotalMix FXを見ていこう。昨今のオーディオI/Oの多くは、録音時にモニター音の遅延を防ぐために本体内部でインプットをDAWとモニターに分岐する、ダイレクト・モニタリング機能が付いている。TotalMix FXはこれをさらに発展させ、一般的なデジタル・ミキサーを内蔵しているかのような多機能なものになっている。これは既にFireface UFXにも組み込まれているが、このUCXにも全く同じものが搭載されたというわけだ。

Fireface UCX内部にはTotalMix FX専用のDSPが2つ積まれており、1つは内部ミキサーの機能をつかさどっている。もう1つはコンプレッサー/EQ/ディレイ/リバーブなど内蔵エフェクト群専用のもので、そのDSPパワーの範囲内で自由にエフェクトを使うことができる。画面①がTotalMix FXの実際の画面だ。上段はFireface UCXのインプット、中段はDAWからのプレイバック出力、下段がFireface UCXのアウトプットという配列になっている。各トラックのフェーダー隣に表示されている”EQ”"D”などのマークをクリックすると、EQやコンプが表示されるようになっている(エフェクトがONになったトラックは、そのマークがオレンジ色に変わる)。またスパナのようなマークをクリックするとインプット・レベル、MS設定(TotalMix FXはMSデコーダー機能も備えている)、リバーブ、ディレイなどへのセンド量なども設定可能だ。

 

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▲画面① TotalMix FXのミキサー画面。上段がハードウェア・インプット、中段がソフトウェア・プレイバック、下段がハードウェア・アウトプットという配列。各インプット・チャンネル下のポップアップ・メニューから出力先を選択し、それぞれへのレベルを設定できる。例えば、Mic 1に入力された信号をFireface UCXすべてのアウトから独立したレベルで出力したり、DAWから入力された16ch分の信号を個別のミックス・バランスにして出力するといったルーティングが可能

そのセンドであるが、このミキサーにはセンドという概念がリバーブへの経路しか存在せず、ほかはPAなどでよく使われるマトリクス・ミキサー的なルーティングになっており(センドで考えると18のセンド・バスがあるということになる)、トラック下のポップアップ・メニューによって各アウトプットへのレベル表示が切り替わる仕組みだ。これはRMEの伝統的なシステムだが、ユニークさと自由度の高さにちょっと面食らうかもしれない。でも慣れればあらゆる場面でベストな環境を構築できるだろう。

TotalMix FXのエフェクトをさらに詳しく見てみよう。インプットにはEQ/コンプ/リバーブ&エコー・センド、DAWプレイバックはリバーブ&エコー・センド、アウトプットはEQ/コンプ/リバーブ&エコー・リターンを用意。EQはローカット+3バンド、コンプはエキスパンダーとオート・レベルという動的なレベル補正がセットになっている。これらのエフェクトは1つのDSPで賄う仕組みになっており、DSPパワー上すべてをONにはできない。しかし実際に試してみたところ、S/P DIFを除く16chのインプットすべてのEQ+ローカット、コンプorオート・レベル、リバーブ+エコーをONにすることができた。用途を考えればDSPパワーは必要にして十分だと思う。

また、これら内蔵エフェクトはいわゆる”かけ録り”にも使える(画面②)。加えて下段のアウトプットにある”Loopback”というボタンを押すと、ハードウェアのアウトプットではなく、DAWへの送りフェーダーとして使うこともできるようになっている。このかけ録りも実際に試してみたところ、DAWソフト付属のベーシックなEQやコンプと同等に使えるという感じで、全然効かないとか、変に効き過ぎるとか、そういう違和感は無く、とても素直な印象だ。録音時のモニターやかけ録り用途ではローカットやコンプは十分に実用レベルだし、録りたい音と相性が良ければ積極的な音色作りに利用するのも良いと思った。

 

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▲画面② TotalMix FXとは別にあるFirefaceのプリファレンス(初期設定)画面。Options項目にある”EQ+D for Record”にチェックを入れれば、EQやコンプのかかった音をDAWに録ることが可能だ。サンプリング・レートも192kHzにまで対応している

以上、主な特徴を挙げたところで、Fireface UCXはどういう用途に向いているかを考えてみよう。最近は少ない予算でレコーディングをする機会も多く、リハーサル・スタジオにノート・パソコンを持ち込んで録音というケースも珍しくない。こんなときに本機があれば、セットアップがかなり早くなると思った。もともとRMEは低レイテンシーがウリで、本機もAD/DA変換時の遅れはわずか21サンプルしかない。かけ録り用のEQやコンプも不要で、ルーティングの自由度も高いため、メンバーそれぞれへのキュー・システムを内蔵しているようなものだ。また、Mackie ControlやOSCに対応したiPad/iPhoneのアプリでTotalMix FXをコントロールすることも可能なので、ハード・シンセなどと組み合わせたライブ・パフォーマンスでも便利に使えるかもしれない。

パソコン関連機材の移り変わりは結構早い。アップグレードせずに使い続けようとしても、故障したときにその規格自体が無くなっていて部品が手に入らない、なんてこともよくある話だ。そんな中、本機はUSBとFireWireの両接続に対応し、かつRMEのドライバー・ソフトの開発力を考えれば、相当長い期間使えるのではないかと思う。音も良く、コスト・パフォーマンスも非常に高い製品なので、オーディオI/Oを買う予定の方は、ぜひ候補に加えることをお勧めする。

 

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▲リア・パネルの端子群は、上段が左からUSB 2.0、FireWire 400、リモート&MIDI(MIDIは付属のブレークアウト・ケーブル経由で2系統の入出力を使用可能)、ワード・クロック入出力(BNC)、ADAT入出力(オプティカル)、S/P DIF入出力(コアキシャル)。下段にはアナログ出力×6、アナログ入力×4(共にTRSフォーン)を用意。フロント・パネルにもアナログ入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ×2、TRSフォーン×2)を備える

サウンド&レコーディング・マガジン 2012年5月号より)

RME

Fireface UCX

オープン・プライス (市場予想価格/145,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

問い合わせ
シンタックスジャパン
TEL: 03-3560-6645 http://synthax.jp/

【SPECIFICATIONS】
▪接続タイプ/FireWire 400、USB 2.0 ▪オーディオ入出力/18イン、18アウト ▪最高ビット&レート/24ビット、192kHz ▪マイクプリ/2基 ▪周波数特性(DA&ライン出力)/44.1kHz時:1Hz~20.4kHz@-0.1dB、96kHz時:6Hz~45kHz@-0.5dB、192kHz時:5Hz~90kHz@-1dB ▪外形寸法/218(W)×44(H)×155(D)mm ▪重量/1.5kg ▪Mac/Mac OS 10.5以降、INTEL製CPU、OH CI互換FireWire 400端子もしくはUSB 2.0端子 ▪Wiindows/Windows 7/Vista/XP SP2以降(すべて32/64ビット対応)、OHCI互換FireWire 400端子もしくはUSB 2.0端子 ※USB接続時はINTEL Core 2 Duoシリーズ以上のCPUが必要(INTEL Atom/Celeron/PentiumおよびAMD製CPUは動作対象外)

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