豊富な入出力を備える高音質ヘッドフォン・アンプ&DAコンバーター

GRACE DESIGN M903

REVIEW by 伊藤圭一(Kim Studio) 2011年5月15日

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“うぁっ! 音が良い!!” それが、試聴時に同席したアーティストの第一声だった。続いて、”これって、ヘッドフォンが良いの? それとも、ミックスが良いの?”とわたしに聞く。まさかヘッドフォン・アンプでこんなにも音が良くなるとは、思えないらしい。”ミックスが良いに決まってるでしょ!”と言いながら、決して安価ではないが、それだけ価値のあるものだと実感した。
GRACE DESIGNは、マイクプリやスタジオ・モニターなど高音質な製品を多数リリースしているメーカー。今回レビューするM903はM901、M902と続くヘッドフォン・アンプの最新モデル。

多くの入力ソースと周波数帯域に対応
ピュアなサウンドを生み出す独自回路

M903は、4種類の豊富なデジタル入力の切り替えとDAコンバーター(2系統のライン出力)、それらのレベル・コントロールを兼ねたアウトプット・セレクターを備えるヘッドフォン・アンプ。またオプションだが、ワイアレス・リモコンM903RCU(オープン・プライス/市場予想価格13,125円前後)も用意。これらの機能を考えるとスタジオのモニター・システム、またはコンソールのモニター・セクション的な働きを持つと言える。

ではフロント・パネルの右端から見ていこう。まず電源ボタンだが、特筆すべき点は電源入力時にヘッドフォン・アンプのポップ・ノイズが無いことだ。これはメチャメチャありがたい。ヘッドフォン装着時に電源をオン/オフしても耳を痛めないのはもちろん、ヘッドフォン自体にダメージを与え寿命を短くする心配も無くなる。私は旧モデルのM901を使用しているが、非常に気になる点だっただけに、この進化はとてもうれしく思う。

次はロータリー・インプット・セレクター。S/PDIF、AES/EBU、TOSLINK、USBと現在使用されているほとんどの入力ソースに対応。サンプリング・レートは、24ビット/192kHzまで可能だが、WindowsマシンからUSB入力で96kHz以上のサンプリング・レートを使用する場合のみドライバーのダウンロードが必要(www.gracedesign.com/support/support.htm)。なおMacは専用ドライバー無しでOK。セレクター・スイッチの回りはゴムのラインで囲われ、安定性に優れる。スイッチ切り替え時のノイズも気にならない。

そしてサンプリング・レートを表示するインジケーターが続き、44.1/48/88.2/96/176.4/192kHzまで対応している。サンプリング・レートはデジタル入力されると自動的に数値を検知し点灯する(表示は無いが32kHzにも対応し、その場合は44.1kHzのインジケーターが点灯)。一番上のs-Lockという表示は、同社の特許によるPhase Lock Loop回路を意味し、入力されたデジタル・ソースのクロックをリジェネレートする。結果、ジッターの少ない信号を作り出すというもので、ピュアなサウンドが得られる。

高性能なDAコンバーターを搭載
スピード感のある締まった音質

VOLUMEと書かれたロータリーは、音量以外にロータリーをプッシュすることで、ヘッドフォン・アウトとそれ以外に2系統(TRSフォーンとRCAピン)のライン出力を選択することが可能。この2系統のアウトは、パワード・スピーカーなどに送り、モニター・コントローラー的に使用すると便利だろう。DAWやオーディオ機器との組み合わせで、2系統のモニターを瞬時に切り替えられるスタジオ・システムが超高音質で組めることになる。あるいは、純粋に高性能なDAコンバーターとして使用することも考えられる。ヘッドフォンとラインの各アウトは±9.5dBまでの間を0.5dB単位でレベル補正することが可能。そのため聴感上の音量差を補正できる、極めて便利なプロ仕様だ。

またレベル・コントロールの精度が素晴らしく、小音量のL/Rのバランスも全くと言っていいほど崩れない。さらに先述のリモコンM903RCUを使うことにより、アウトプット・チャンネルの選択、レベル・コントロール、モノラルやミュートなども容易に行うことができてすこぶる便利だ。

音質は、GRACE DESIGNならではのピュアさを維持したまま、現代的なスピード感のある締まった音質にモディファイされている。ヘッドフォンでは低域がコモる傾向があるので、ヘッドフォン・モニターには最適なチューニングだと思う。

私はM901以外にもGRACE製品を愛用しており、サラウンド・モニター・コントローラーのM906なども使用している。個人的にはM906に備わっているヘッドフォン・アンプのファットな音質が好みだが、今回のテストで現代的なサウンドを持ったM903という好敵手が登場したと感じた。

これだけ豊富な入出力を備えていると単なるヘッドフォン・アンプとしてのみならず、さまざまな活用法が考えられる。リファレンスとなるDAコンバーターとヘッドフォン・アンプを持つことは、CDなど市販のメディアと自分が制作中の一ミックスを全く同じ条件で比較試聴することできる。クリエイターには心強い味方になるであろう。

▼リア・パネル。左からデジタル入力×4系統(S/P DIF、USB、TOSLINK、AES/EBU)、アナログ出力×2系統(TRSフォーン、RCAピン)、アナログ入力×2系統(RCAピン、XLR)

 

サウンド&レコーディング・マガジン 2011年6月号より)

撮影/川村容一

GRACE DESIGN

M903

210,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪周波数特性/22Hz〜120kHz(±0.25dB)、12Hz〜260kHz(±0.5dB)、4Hz〜600kHz(±3dB)▪サンプリング周波数/32/44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz▪ビット・レート/24ビット▪外形寸法/216(W)×43(H)×210(D)mm▪重量/2.2kg

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