30ch入出力&DSPエフェクト/ミキサー内蔵の多機能オーディオI/O

RME Fireface UFX

REVIEW by 本澤尚之(TOMISIRO、Language) 2011年1月15日

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ついに本命登場!と思った方も多いことでしょう。筆者も普段からRME Hammerfall DSP Multifaceをメインのオーディオ・インターフェースとして、自宅で、スタジオで(2台!)愛用しているのですが、こんな機能、あんな機能があったらいいなと思ってたものが全部入っています。めちゃくちゃ気になりますね。ということで、同社の新しいUSB/FireWireオーディオI/OであるFirefaceUFX、早速チェックしていきましょう。

十分な入出力端子がスタンバイ
高解像度のディスプレイも視認性良し

1Uサイズの本体は、奥行きも242mmとほどほどで、重さもわずか3kg。すごくコンパクトな印象です。しかし所狭しと並んでいる端子やディスプレイを見ると、いやいやこれは相当すごいスペックだろうなと想像できますね。まずは入出力から。本機は最大30イン/30アウト仕様です。内訳はアナログが12ch、デジタルが18ch(ADAT×2+AES/EBU)で、24ビット/192kHzまで対応しています。パソコンとの接続はUSB2.0とFireWire400のどちらでも可能。両方同時につないだときにはUSB2.0が優先されるようです。

フロント・パネルから順に見ていくと、まず目に入るのは、4つ並んだXLR/TRSフォーン・コンボ端子。12chあるアナログ入力のうち、4つはマイク/楽器入力用になります。いまさら言うまでもないですが、入力端子がリアにすべて配置されてるより、何chかフロントにあって抜き挿しできる方が便利。各端子の横には入力信号の有無、ファンタム電源のオン/オフ、TRSフォーン接続(ギターやベースなども直で接続できます)を確認できるLEDが付いています。

その隣にあるのが2系統のヘッドフォン端子。レコーディング時のモニタリングはもちろん、ミックスにも使えるピュアでクリアな音質です。が!ここで1つ残念だったのが、12chあるアナログ出力のうち4ch分は、このヘッドフォン・アウトにあてられてしまっているところです。複数のモニター・スピーカーを切り替えるようなセッティングを組んいでる場合は、メインのスピーカーやラジカセに出力があっという間に占拠されてしまうので、DAWのインサート用にアウトボードとの接続を確保したい人にとっては、ヘッドフォン端子はアナログ出力に数えてほしくなかったかもですね。とはいえ、2系統あるADAT端子を利用して、外部のAD/DAコンバーターを接続すれば多数の入出力を確保できます。

中央にはMIDI端子のINとOUT。リアにも1組あるので、合計32ch分のMIDI信号が送受信できます。隣の”MEMORY”と書かれたUSB端子は読者の方もものすごく気になるところでしょうが、これは文末まで引っ張らせてください(笑)。その右には、各デジタル入力、MIDI信号、コンピューターとの接続の有無を表すLEDが並んでいます。デジタル・シンクがうまくいっていない場合はここのLEDが点滅します。

そして、Fireface UFXを見た瞬間から気になっていたのがココ。大きなロータリー・エンコーダーと4つのキー、そして高解像度のカラー・ディスプレイと2つの小さなノブが並ぶセクションです。ロータリー・エンコーダーはモニター・ボリュームの調整用。エンコーダー・ボタンを押し込むごとに、メイン・アウト→ヘッドフォン1→ヘッドフォン2と切り替えられ、カラー・ディスプレイにその情報が表示されます。4つのキーは、各インプットのゲイン調整をする”MIC/GAIN”、全入出力および内蔵のDSPエフェクト(後述)へのセンド/リターンのレベル・メーターである”METERS”、各チャンネルの設定ができる”CAHNNEL”、そして各種セットアップや内蔵リバーブの設定ができる”SETUP/REV”。右のノブは上が1で下が2となり、ノブ1で設定したい入出力を選択し、ノブ2で設定する機能(セッティング、ローカット、EQ、コンプなど)を選択します。各チャンネルを切り替えながら特定の項目だけを設定していけるのはメチャクチャ便利。また、Mixというページを開けば、アウトプットごとにサブミックスを作成することもできます。

カラー・ディスプレイは小さいのにすごく見やすくて(写真①②)、最大30chの入出力や内蔵エフェクトのレベルが表示可能。しかもレベル・オーバーしたチャンネルは、バーが緑から赤になるためスピーディなセッティングにも適しています。

▼写真①② 高解像度のカラー・ディスプレイには、ページ上部のメイン写真のように入出力のレベルのほか、メイン・アウトプット・レベル(右)や内蔵リバーブのパラメーター(下)などの設定を表示可能。

……と、ここまで読んで”なるほど、FirefaceUFXは、単なるハイエンドのオーディオI/Oにあらず。もはや、EQ、コンプ、リバーブまで内蔵した、1台あったら何でもできるデジタル・ミキサーじゃん!”と気づいたアナタ。正しいです。その通り。コンピューターを使わずに、Fireface UFXの内蔵ミキサーのほぼすべてがコントロール可能で、セッティングも保存できるのです。レコーディングはもちろん、ライブでの複雑なモニターの構築もこれ1台持って行ったらできちゃうわけですね。

リア・パネルも見ていきましょう。右からTRSフォーン入力が8つ、XLRのメイン・アウトが2つ、TRSフォーン出力が6つ並びます。これらの入出力は個別にリファレンス・レベルが設定可能で、−10dBV/+4dBu/Hi Gainから選択できます。その隣はデジタル接続関連で、ワード・クロック入出力、ADAT入出力が2系統、そしてAES/EBU入出力を用意。REMOTEと書かれた端子は、ハードウェアのモニター・コントローラーを接続するためのものだそうです。

▼リア・パネル。左からMIDI OUT/IN、REMOTE端子、FireWire端子、USB端子、ワード・クロック入出力(BNC)、ADAT入出力×2系統、AES/EBU入出力、アナログ出力×8(XLR×2、フォーン×6)、アナログ・ライン入力×8(フォーン)。フロント・パネルには、マイク/ライン入力×4(XLR/フォーン・コンボ)、ヘッドフォン×2、MIDI IN/OUT、フラッシュ・メモリー用USB端子も備える

2つのAD構造による脚色の無いサウンド
内蔵エフェクトも積極的に使える

いよいよ、実際にAD/DAのサウンドを聴いてみます。まずはDAから。DAWから2ミックス音源を再生してみましょう。普段からRMEを使ってる自分にとっては、何とも素直に聴ける良い音。レンジが広くて、脚色されず、元気なものは元気に、優しいものは優しく聴かせてくれます。先ほど説明したロータリー・エンコーダーを使えば、メイン・アウトの音量を数字で確認できるので、”このメーターの振れ方でこれくらいの音量”というミックス時の感覚もつかみやすいです。

続いてAD。マイク入力をチェックしてみます。以前のRMEのマイクプリは”良いけど、専用のプリアンプがあったらそっちを使おうかな”という印象でしたが、今回かなり音が良くなっています。”味付けしない”というのがポリシーらしいのですが、ワイド・レンジでフラット、ボリュームを上げてもピーキーなところがなくて、小さい音量で聴いてもすっぽり抜ける部分がありません。ピュアな音色です。色付けが欲しいときには、ほかのプリアンプを使えばいいわけですからね。

ライン入力もチェックしてみましょう。あえてCDプレーヤーをつないで、ADの感触を聴いてみます。アコースティックものから音圧の高いクラブ系まで聴いてみましたが、すごく満足。音がやせずにしっかりピントが合っています。ひょっとして今までの同社製品より音が良くなっていないか?と思ったら、ADコンバーターにパラレル・コンバージョン・テクノロジーというものを採用してるのだそう。純正のADコンバーターを2つ備えることで超低S/Nと低ひずみ率を実現しているそうです。ぜいたくな仕様ですね。

で、先ほどからチラッと紹介しているように、本体内のDSPを使って、各チャンネルごとにEQやダイナミクス処理ができるほか、それぞれの入出力を内蔵リバーブ/エコーにセンドで送ることもできます。EQは補正的な役割の”素直系”を予想していたもののガッツリかかるし、倍音も付いてくる何とも魅力的な音色。コンプもこれまた、ピークを抑えるのに使ってください的なものだろうと予測していたのですが、積極的に音色/グルーブ作りにも使えます。またエキスパンダーとしても使え、ノイズ・ゲートにもなります。空間系エフェクトはリバーブとエコーの2種類あって同時に使えるのですが、センドが1系統しかないので、実質はどちらか片方もしくは両方いっぺんにしか使うことができません。リバーブはアンビエンスからホール系まであって、割と雰囲気のある響き方をしてくれてGOOD! エコーはステレオ/ピンポンなどのモードが選べて、これも使えるという印象でした。

Fireface UFXのDSPエフェクトはもちろん本体だけでも使えるのですが、付属のTotal Mix(画面①)というミキシング/ルーティング・ソフトでコンピューターから操作すれば、より快適にセッティングすることができます。Total MixからFireface UFXの現在のセッティングが一目りょう然なので、マイク入力のゲインや信号のルーティングなど全機能にアクセスできます。TotalMix上のパラメーターと本体のロータリー・エンコーダーはお互いに追従する仕組みになっていて、セッティングが完了したら、8つまで本体内のメモリーにシーンを保存しておくことも可能。録音時のダイレクト・モニタリング用、ミックス用、ライブ用という感じで、お気に入りをいつでも呼び出すことができます。そのほか、テスト/計測/解析ツールのDigicheckというソフトも同梱されており、スペアナ、位相メーター、ラウドネス・メーターなどをコンピューターのCPUパワーに頼らずに使うことができます。

▼画面① 付属のミキシング/ルーティング・ソフトのTotal Mix。内蔵のDSPミキサー/エフェクトの設定は本体だけでも行えるが、本ソフトを使えばよりグラフィカルに把握することが可能。ここでいじる設定はリアルタイムにFireface UFXに反映される。

ところで、RMEはサード・パーティのUSB/FireWireチップを使用しない唯一のオーディオI/Oメーカーだそうなんですが、そのおかげで他社製チップの性能に依存せずに、高速なデータ処理ができるとのこと。ファームウェア・アップデートもハード丸ごとできちゃうわけで、これがRMEの信頼と大きな評価につながってるわけなんですね。その姿勢は、内蔵の100MHzのマスター・クロック・ジェネレーター+SteadyClockという独自技術でジッターを抑制するなど、音質に対する取り組みにも生かされています。

ちなみに、近々のファームウェア・アップデートで、フロントのUSBスロットに指したフラッシュ・メモリーに、入力音をパラでWAV録音する機能が追加されるそうです。つまり、レコーディング中にDAWソフトがトラブったとしても、RME本体に入力されている音は、フラッシュ・メモリーでキープできるというわけですね。また、RMEの製品はすべてAVID Pro Tools 9で動作確認できているそうなので、Pro Tools用のオーディオI/Oとしても魅力的な存在です。

最後に、実際に使ってみた印象ですが、あまりにも期待通り過ぎて何も言うことはなかったです。これ1台でハイエンドな入出力環境を手に入れられるし、本体のみで”DSP内蔵の多機能な小型&軽量ミキサー”として使うことも可能。オールマイティかつハイスペックな製品を求めていた方には満足いくものだと思います。

サウンド&レコーディング・マガジン 2011年2月号より)

撮影/川村容一

RME

Fireface UFX

オープン・プライス(市場予想価格/230,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪周波数特性/ADライン入力1~8(リア):5Hz~21.5kHz(@44.1kHz、−0.1dB)/5Hz~45.5kHz(@96kHz、−0.5dB)/5Hz~66.5kHz(@192kHz、−1dB)、DAライン出力3〜8(リア):5Hz~22kHz(@44.1kHz、−0.5dB)/5Hz~45kHz(@96kHz、−0.5dB)/5Hz~80kHz(@192 kHz、−1dB)▪最大入力レベル/ライン入力1~8(リア):+19dBu、マイク入力9~12(フロント):Gain 0dB時/+12dBu&Gain 65dB時/-53dBu、インストゥルメント入力9~12(フロント):Gain 10dB時/+21dBu&Gain 65dB時/-34dBu▪外形寸法/483(W)×44(H)×242(D)mm(ラック耳含む)▪重量/3kg ▪Windows/Windows XP SP2以上、OHCI互換FireWire400端子(IEEE 1394a)またはUSB2.0端子(USBの場合はINTEL Pentium Core 2Duo以上のCPU)▪Mac/Mac OS x 10.5以上、OHCI互換FireWire400端子(IEEE 1394a)またはUSB2.0端子(USBの場合はPentium Core 2 Duo以上のCPU)

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