ビンテージの質感とクリアな高域が特徴のコンパクトな1chマイクプリ

BAE AUDIO DMP

REVIEW by 甲斐俊郎(BOND&Co.) 2010年9月15日

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NEVE 1073モジュールをリプロダクツしたBAE 1073のマイクプリ部をコンパクトにした製品

BAE AUDIO DMP オープン・プライス(市場予想価格/134,000円前後)

開発から30年以上が経過しても、第一線で活躍し続けるNEVE 1073などのビンテージ・マイクプリ/EQモジュール。その多くは電源部とともにラッキングされて使用されていますが、BRENT AVERILL主宰のブレント・アヴェリル氏はブーム以前の早い時期からNEVEやAPIなどビンテージ・モジュールのノックダウン改造を手掛けてきた人物です。特にNEVE 1272のマイクプリ改造およびラッキングに関しては先駆者と言えるでしょう。良質なビンテージ・モジュールの安定確保が難しくなってきた近年では、社名もBAEと変更し、リバース・エンジニアリングによる完全なリプロダクトに取り組んでいる模様です。そして今回レビューするDMPはNEVE 1073モジュールをリプロダクツしたBAE 1073のマイクプリ部をコンパクトなボディにしたもの。非常にシンプルな機能だけフォーカスした製品です。早速チェックしていきたいと思います。

H入力ゲインと出力レベルのみのシンプルな操作性

本機の操作子は非常にシンプルです。入力ゲインと出力レベル……以上です。実質操作するところはその二カ所のみというシンプルさ。各ノブにはイギリスのMARCONIのパーツが使用され、外観もNEVEらしさを醸し出しています。入力はマイク入力のほかにDI入力が装備されており、これはベースやギターのライン録り時に重宝しそうです。気が利いているのはDI入力のスルー出力がある点。これにより本機はDIとマイクプリ一体型の機材として実戦的に使えることになります。DI入力付きマイクプリは少なくありませんが、DIスルー出力があるマイクプリはこれまで無かったのではないでしょうか。ベース・アンプの近くに置いてDI兼マイクプリとして使ってみたくなります。ベーシストがDI代わりにライブで使用するのもアリでしょう。本体上部にはハンドルが付いており、重量もさほどありませんので気軽に持ち運びができそう。この機動性も大きなアドバンテージとなりそうです。マイク入力へは48Vのファンタム電源が供給可能です。

まずはベースで試してみます。比較対象として、DIのCOUNTRYMAN Type 85からNEVE 1073とNEVE 1272それぞれのマイク・インへ入力する回線も準備。ファースト・インプレッションはファットかつスムーズ。荒さは少なめですが滑らかな高域と中低域で、パンチのある低域を聴かせてくれます。ビンテージのNEVEと比べるとやや腰高でひずみ感は少なめですが、印象は悪くありません。特に強めに弾いたときのトランジェントのつぶれ感はNEVE 1272に似た印象を受けました。ここではDMPの出力はフルに設定、入力ゲインでレベルを取っていましたが、出力レベルを下げて入力ゲインを上げていくと、また違った表情を見せてくれます。つぶれて荒れた質感が付加されていきますが、比較的NEVEよりもジェントルな印象です。

ボーカルではパンチのある低域音質の差が少ないマイク入力とDI入力

続いてボーカルでテスト。マイクはSOUNDELUX Elux 251で女性シンガーに歌ってもらいました。高域に特徴のある声質でしたが、本機の場合10kHz近辺がひずみ感が少なく奇麗に出ています。やはりこちらもパンチのある低域ですが、少しだけ膨らんだキャラクターを感じます。DI入力とマイク入力に大きな音質の差は感じられません。ここで本機をブース側へと移動させ、リモート・マイクプリ的にも使用してみます。ゲイン・コントロールのリモートはできませんが、本体の小ささから気軽に設置できると考えたからです。ブースからの回線がライン・レベルになった訳ですが、一枚膜が取れたような抜けの良さを感じました。電源部も一体のボディで、簡単に移動と設置ができるのも本機の大きな魅力の1つでしょう。

続いてアコギをSHURE SM57で収音。ストローク・プレイで、よりロック寄りのアプローチを試してみます。ここではコンプに銀パネルのUREI1176を使用しました。まずは本機ゲインでひずみ感を調整します。NEVE 1073だとこのゲイン・ノブを1ノッチずつガチガチと上げていくたびに心地良いひずみが付加されていき、ベストと思えるポイントが必ず見つかります。本機の場合も同じアプローチでサウンド・メイクが可能ですが、NEVEと比較すると1ノッチごとの興奮度は少ない感じです。どうしても同じノブで操作感が似ているためNEVEと比較してしまいますが、ビンテージ的質感を持ちながらクリアな高域を持つマイクプリと考えれば非常に優秀と言えます。

本機はDAWで自宅録音を行いながら、たまに生ベースやギター、ボーカルを録音する機会のある方にお薦めです。デスクトップにも置けるコンパクトさと使い勝手の良さ、さらに高品位なマイクプリを備えている実力派。自宅スタジオからライブまで大活躍してくれるでしょう。

BAE_front

▲フロント・パネル。入出はマイク入力(XLR)、ライン入力(フォーン)。出力はXLRを装備している。ツマミは入力ゲインと出力レベルのみになり、電源スイッチはリアに配置

『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年9月号より)

BAE AUDIO

DMP

オープン・プライス(市場予想価格/134,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪チャンネル数/1▪外形寸法/148(W)×110(D)×310(H)mm ▪重量/約3.3kg

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