現代的な機能を持ちライブ・プレイも対応可能なTB-303クローン機

ACIDLAB Bassline 2

REVIEW by Q'HEY (MOON AGE / REBOOT) 2010年8月15日

bassline_main

操作性も良く現代的な機能を持ちライブ・プレイでも活躍するTB-303クローン

ACIDLAB Bassline 2 133,140円

1982年に発売され2年弱で生産中止となって以降たたき値で売られていたROLAND TB-303。1987年に最初のアシッド・ハウスの誕生とともにあのビキビキ・サウンドを生み出す機材として注目を浴び、アシッド・テクノとしてリバイバルした1993年には初期を超える一大ブームとなり、中古市場でプレミア級の高値で取引されるようになりました。このアシッド・サウンドの流行はいったん沈静化したものの、そのリバイバルが幾度となく起きています。現在がまさにその何度目かの時期で、リカルド・ヴィラロボスなどが積極的に取り入れている上に、リッチー・ホウティンがなんとプラスティックマン名義の活動を再開させたところでもあります。 リバイバルは起こっても、TB-303自体の製造が終了して20年以上経ち、故障などにより実機の数もどんどん減って入手が困難になっていく中、ハード/ソフト問わず幾多ものクローン製品がこれまで世に送り出されてきました。そんな製品を目にするたび”またその話か”と感じた読者も少なくはないでしょう。初期は”これがクローン?”と言いたくなるくらいオリジナルから程遠かったものもあったし、”これぞ決定版!”と言われたかなり近いサウンドを出すものもありました。ボク自身も1995年辺りにHyper CubeJuniorという名で、TR-909、TR-808、TR-727、SH-1、Juno-106にTB-303を3台使うという構成で、単体シーケンサーもコンピューターも使わないライブ・ユニットをやっていたこともあって、TB-303には深い思い入れがあります。今回TB-303の最新のクローンであるACIDLAB Bassline 2の機材レビューをさせていただくに当たって、実際にあれこれ操作してみると同時に、手持ちのTB-303とも比較してみることにしました。

デジタルなエミュレーションは一切無い完全なるアナログ・マシン

まずこのACIDLABは、ドイツの南端に位置するローゼンハイムにあり、大手企業で高精度な計測器のデザインなどの経歴を持つKlaus Süßmuth氏が、世界中を魅了して止まないビンテージ・シンセサイザーの再現に燃えて設立したもの。まず最初に本機の前身に当たるTB-303のクローン機、Basslineを発表し高い評価を得ます。その後ROLANDのリズム・マシンTR-808クローンであるMiamiと共に発表したのがこのBassline 2です。MiamiはTR-808同等の、Bassline2はTB-303同等の音源回路を採用していて、アナログ・モデリングという名のデジタルなエミュレーションは一切無い、完全なるアナログ・マシンです。Bassline 2のVCO×1、VCF×1、VCA×1、同時発音数1、波形がノコギリ波と矩形波の2種類という構成はTB-303と全く同じ。ルックスは”シルバー・ボックス”の異名を持つTB-303同様スクエアなシルエットの銀の筐体を持ち、変にレトロだったり未来的だったりする要素は排除されたシンプルでベーシックなデザインで、堅牢なイメージを醸し出しています(写真①)。

bassline_b

▲写真① シルバー・ボックスのほかにブラック・ボックスも用意されている。手持ちの機材と合わせて選択できる

分かりやすい方法で2種類の打ち込み方を採用

ではこの製品にオリジナルのTB-303と同じフレーズのパターンを打ち込み、同時演奏してそのサウンドを聴き比べてみたいと思います。

まずパターンのプログラミングです。TB-303のパターンの打ち込みはかなり特殊な手順を踏んだもので、取扱説明書を読むなり第三者の説明を聞かない限り、パッと見でできるものではありません。頭の中で思い描いたフレーズをすぐに形できるようになるには慣れが必要で、最初は楽譜やピアノ・ロールのようなものを書いて、それを見ながら打ち込んでいくといった作業が必要です。しかしこの難解なシステムを逆手に取り、適当に打ち込んで偶発的に面白いフレーズを生み出すというのがTB-303のだいご味とする人も多いことでしょう。ただし同じフレーズの発展系を作ろうと思った場合、結局一音ずつ解析して別のパターンに丁寧に打ち込み直すしかないという状況に陥ります。つまりTB-303にとってこのシーケンサー部はある意味強みととらえられる一方で最大の弱みでもあったのです。その点をBassline 2では分かりやすい方法を採用することで解決しています。打ち込めるパターン数は、8個のパターンを打ち込めるパターン・グループが12個あって合計96個になります。打ち込み方にはタップ・ライトとステップ・ライトの2通りあります。 まずPATTERNツマミで打ち込みたいパターン・グループを選び、パネル手前にあるキーボードの白鍵を模した8個の白いボタンからパターンを選択します。タップ・ライトではMODEツマミでTAP WRITEを選び、START/STOPボタンを押すと1〜16のステップ・インジケーターが走りますので、タイミングに合わせてキーボード・ボタンで演奏します。ボタンを押した瞬間は音が鳴りませんが、次の周回で演奏した通りにキーのLEDが光って発音します。キーボード・ボタンを押し続けるとその間同じ音程を入力することができます。誤った場合はそのタイミングでCLEARボタンを押せば消去されますし、CLEARを押し続けることで全体を消去できます。SLIDEやACCENTに関してもタイミングを見計らってリアルタイムに打ち込んでいきます。

ステップ・ライトではMODEツマミでSTEP WRITEを選び、START/STOPボタンでスタート。16個のステップ・インジケーターの最初の1個が点滅するので、キーボードで音程を入力します。WRITE/NEXTボタンを押して次のステップに音程を入力したいステップまで進み、同様に打ち込んでいきます。修正するにはそのステップまで進んで別のキーを押すかCLEARボタンを押します。これは現在主流となっているTR式の打ち込み方をベースにした手法なので、非常に明快ですが、面白いと思ったのはタップ・ライトの方でした。まず同一のキーを16ステップ分押し続け、次に適当なタイミングでオクターブ・キーを押します。1回押せばそのキーが1オクターブ、2回押せば2オクターブ変わります。次いでオクターブが変わるタイミングのところを見計らって(あるいは適当に)SLIDEを打ち込んでいくことで即興でアシッドなフレーズの出来上がりです。

またROLLというTB-303には無いオリジナルな機能を持っていて、スタート・ポイントに当たるステップを次々と変更することによって数多くのバリエーションを作り上げていくことが可能。感心したのは、パターン・プレイ中であってもタップ・ライトやステップ・ライトに移行して、シーケンスを止めることなく次々と新しいパターンを打ち込めて、またパターン・プレイに戻ったりできるところ。これはライブで使用する上で大きなアドバンテージです。またこの流れを止めずに直感的なパフォーマンスができることこそがハードウェアを使う最大の魅力でしょう(写真②)。

bassline_2

▲写真② 本家TB-303にはないROLL機能で、よりハプニング性に富んだフレーズを構築可能

パターンを打ち込んだらパネル上部にあるフィルター部のコントロールをしてみましょう。TB-303はリアルタイムでコントロールすることを想定していなかったので、ツマミは非常に小さい上に重みがあって、指に力を入れる必要があるし、握り続けていると指先に跡がついてしまって痛いです。それぞれが配置されている間隔が短いのも難点。本機のツマミ類は握りやすい大きさで触感もいい存在感のあるアルミ削り出しのパーツを使っていて、気持ちよく操作できます(写真③)。

bassline_3

▲写真③ それぞれのツマミは非常に堅固にできており、かつ軽やかに操作可能だ

分聴き比べしたところTB-303とほぼ同じ音質

ではステップ・ライトで本機とTB-303に全く同じフレーズを打ち込んで、いよいよ音の聴き比べです。本機はDIN SYNCのマスターとして機能するので、DIN SYNCケーブルでTB-303のSYNC IN端子と接続してスタート・ボタンを押し、ミキサーで両方の音を切り替えながらCUTOFF、RESONANCE、ENV MOD、DECAY、ACCENTなどをいろんな位置にして比べてみました。答えは至ってシンプル。全く同じと言っていいでしょう。ツマミの位置によって若干音が明るく感じたりざらついた感じのするところもありますが、数台のTB-303を聴き比べたときに感じたわずかな個体差程度のものじゃないかと思います。クローン機にとって最大の難所であると同時に最も重要なポイントであるSLIDEとACCENTの聴こえ方はしっかり再現できています。ボリュームも同じ位置にすればほぼ同じレベルになります。

本機を単体で聴いたなら、TB-303じゃないと言い当てることができる人ってほとんどいないんじゃないかと思います。CV/Gateを出力してビンテージ・アナログ・シンセのコントロールできる点も同じですが、TB-303では単にスルーするだけだったAUDIO INで、本機を外部音源に対するフィルターとして機能させることができるようになったり、本機のカットオフを外部から変調させることができるFM INがなどがあって、かゆいところに手が届く程度の機能拡張を遂げた以外は、実にオリジナルに忠実。しかしやっぱこの音はいつの時代も気持ちいいし、シンプルな操作で最大の効果をもたらすフィルターの素晴らしさも改めて実感しました。高値で取引きされているオリジナルTB-303ももちろん魅力的ではありますが、故障してもメインテナンスを受けることがほぼ不可能であるというリスクを冒すよりは、操作性も良く現代的な機能を持ちライブ・プレイでも活躍するこのBassline 2を選ぶのが正解と言えるかもしれません。

bassline_rear

▲リアパネル。左から電源スイッチ、ACアダプター端子、オーディオ・アウト(TRSフォーン)、ヘッドフォン(ステレオ・ミニ)、ACCENT、Gate、CV、オーディオ・イン(TRSフォーン)、FM IN、DIN SYNC(IN/OUT切替)、MIDI IN

『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年8月号より)

ACIDLAB

Bassline 2

133,140円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪最大同時発音数/1音 ▪パターン数/最大96=8パターン×12パターン・グループ(1パターン最大16ステップ) ▪トラック数(ソング数)/12 ▪入出力/モノラル・マスター・オーディオ・アウト(TRSフォーン)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、フィルターFMイン(ステレオ・ミニ) ▪CV/Gateアウト/1V/Oct、V-Gate(+12V)、Accent(+12V) ▪MIDI/IN(同期のみ) ▪DIN SYNC-24/IN/OUT共用ジャック(切替式) ▪外形寸法/258(W)×43(H)×170(D)mm ▪重量/1.1kg

TUNECORE JAPAN