バイノーラル録音が可能なイアフォン一体型のコンデンサー・マイク

ROLAND CS-10EM

REVIEW by 田中誠(oscillator) 2010年8月15日

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3Dの臨場感を録音できるバイノーラル録音対応マイク

ROLAND CS-10EM 9,870円

今やポータブル・レコーディングは手軽になり、ちょっとした音声メモから、演奏のレコーディング、環境音録音まで、昔以上に音が扱いやすくなりました。さらには、3Dに対応したテレビや、音楽のサラウンド再生も大変身近になってきています。そんな中、3Dの臨場感を録音できるバイノーラル録音対応マイクが、あのROLANDから手ごろな価格で登場。早速チェックしたいと思います。

鼓膜に近い位置で録音できるエレクトレット・コンデンサー型マイク

そもそも、バイノーラル録音とは何か、軽くおさらいしておきましょう。人間は、2つの耳で音を聴いていますが、その際、音源からの直接音を聴いているわけではなく、人間の頭部の伝達特性などによって影響された音を鼓膜の位置で聴いています。バイノーラル録音とは、人間の頭部伝達特性などを考慮し、耳で聴こえている様子をそのまま録音できる方式なのです。これで録音した音は、ヘッドフォンなどで聴くと、あたかも、その場で耳で聴いているかのような3D的な立体感を味わえます!

とはいえ、今までは、高価なダミーヘッドと呼ばれる頭の形をした模型の耳に専用マイクを仕込んだものを使うのが主流で、敷居が高かったのも事実です。今回、ROLANDがリリースしたCS-10EMは、ダミーヘッドの代わりに、自分の耳にイアフォンのように装着して録音ができるプラグイン・パワー・タイプのエレクトレット・コンデンサー型ステレオ・マイクです。カナル型で、マイクとイアフォンが一体になっているので、モニターをしながら、鼓膜に近い位置で録音ができます。本体のマイク・ポジションはそんなに高くないので、目立ちすぎないのは良いですね。町中でいきなりダミーヘッドを取り出すのは、勇気が要りますから(笑)。

左右だけでなく奥行きも感じられ音が自分の周囲をぐるぐる周る

さてさて、ポータブル・レコーダーを使って、いろいろと録音してみましたが、さすがに、通常のステレオ・マイクとは、全然違います! 左右だけではなく、奥行きが感じられ、自分の周囲を音がぐるぐる回ります! 交差点での録音では、車が右斜め後ろから前へ通り過ぎていく様子がばっちり録れます。定番の公園録音では、鳥の鳴き声が、上や前後、左右から、360度のパンニングで録れました。これはすごいです! 左右の耳用にY分岐したケーブルを絞るスライド・チューブが付いているので、頭部にフィットさせれば、思った以上にケーブルのタッチ・ノイズが無いのも好印象。資料によるとマイク・ユニットには不織布が付いているとあり、ウィンド・スクリーンの代役になっているため、風切音にシビアにならず、適度な使用感を保っているのもよいです。手でマイクを持たずに録音できるのもよくて、電車内で録音しても全然目立ちませんでした。

もちろん、さすがにROLAND製だけあって、音楽用途にも十分に対応してくれます。打楽器やギターなどの生楽器を録音してみましたが、少しオフ気味な感じながら、このクラス帯としては、しっかりと録れました。普通と比べると、若干、低域と高域は弱めで中域に集まった感じもするのですが、逆に、キンキンした感じで録れてしまうわけでは無いので、むしろ音楽的には良いかもしれません。

また、一般的かもしれませんが、定位の分かりやすい、比較的アタックのはっきりした音色の方が3D的な味わいは強く感じれるので、パーカッション系やアコースティック・ギターなどを録音してミックスすることで、立体感が広がると思いました。今回私は、おもちゃ系の楽器周囲でまわりながら演奏してもらって録音し、ほかのオケとミックスしてみましたが、面白い効果が得られました。

注意する点は、通常のマイクに比べるとマイクとイアフォンが隣接しているせいかハウリングが起きやすいので、録音レベルをレベル・メーターを見ながら設定し、その後モニター出力を調整するのがよいでしょう。そうすればダイナミック・レンジも問題ありません。また、指向性マイクと違って、周囲の音を拾い気味なので、周りのノイズにはとても気を使った方がよいと思いました。

バイノーラル録音は、まだまだ、研究分野やフィールド・レコーディング・マニアのものだけと思っていましたが、この価格、音質、利便性なら、手軽に音楽制作にも使いたいと思えるものでした。また、欲しいものが増えてしまいました。

『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年8月号より)

ROLAND

CS-10EM

9,870円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪マイク形式/エレクトレット・コンデンサー型▪指向性/無指向 ▪周波数特性/20Hz〜20kHz ▪マイク音圧感度/−40dB(0dB=1V/Pa、1kHz) ▪SN比/60dB以上▪出力インピーダンス/2.2kΩ ▪消費電流/500μA ▪動作電圧/2V〜10V ▪イアフォン形式/ダイナミック型▪ドライバー/φ12.5mm ▪イアフォン感度/102dB(1mW、500Hz) ▪最大入力/200mA▪再生周波数帯域/15Hz〜22kHz ▪インピーダンス/16Ω ▪質量/約4.5g(コード、プラグ含まず) ▪コード/1.5m(Y型) ▪プラグ/φ3.5mmステレオ・ミニ×2 ▪付属品/イア・ピース(S/M/L)、ポーチ

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