3つのシンセをレイヤー可能な新次元のソフトウェア・シンセサイザー

FXPANSION DCAM:Synth Squad

REVIEW by 高山博 2010年1月15日

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それぞれ独立して使用することも可能な3つのソフト・シンセと、それらを統合する1つのプラットフォーム・ソフトから成り立つソフト・シンセ

FXPANSION DCAM:Synth Squad 34,400円

高品位ドラム音源、BFDで知られるFXPANSIONが、新たにソフトウェア・シンセサイザーDCAM:Synth Squadをリリースした。マニアックでありながら、使いやすい製品作りで知られる同社だけに、どのような製品になっているか興味津々、さっそくチェックしてみよう。

直感的に操作できるアナログ・シンセStrobe

DCAM:Synth Squadは、それぞれ独立して使用することも可能な3つのソフト・シンセと、それらを統合する1つのプラットフォーム・ソフトから成り立っている。

中でも最もとっつきやすいのはStrobeだろう(画面1)。パネルを一見して分かるように、典型的な1オシレーター・タイプのアナログ系シンセだ。ただし、そこはFXPANSIONのシンセ、さらに突っ込んだ音作りも行える。

▲画面1 Strobe。1オシレーター方式に特化しており、素早い音作りが可能なので、ライブなどでも使用可能だろう

一見、一基のみに見えるオシレーターだが、スタック/デチューン機能により5オシレーター・ユニゾンの分厚いサウンドも可能である。波形ごとに2オクターブ下までのサブオシレーターも加えられ、重低音ベースも楽勝。むしろ、そこらへんの下手なマルチオシレーターよりも簡単に音作りが行えるほどだ。

また、音作りのカナメともいえるモジュレーション・ルーティングでも、ユニークなTransModシステムを装備。これは、ソースを選び、ターゲットのつまみを動かすだけで、モジュレーションがかかる仕組みだ。ソフト・シンセらしく、結果は中央画面に波形でグラフィカルに表示されるので、実に快適に作業することできる。

肝心の出音も良好だ。基本的には滑らかなアナログ系サウンドなのだが、フィルターがダイオード歪を発生するようデザインされているので、オーバーロードさせたときの挙動が気持ちいい。内蔵アルペジエイターを使って、アシッドなフレーズを演奏させたり、あるいはアナログ・パーカッションなどをループさせると抜群。テクノ、ハウス系の音作りにも最適だ。

 

クロス・モジュレーションに特化したCypher

かつての高級アナログ・シンセでは、クロス・モジュレーション(FM)やリング・モジュレーション、さらにはオシレーター間でピッチ(位相)を同期させるシンクなどを装備していた。こういった複数のオシレーターを干渉させたアグレッシブな音色は高級機の証でもあったのだ。

Cypher(画面2)は、これらの機能に的をしぼった3オシレーター・タイプのシンセだ。つまり単なるオシレーターの重ね合わせであればシンプルなStrobeで、それ以上の複雑なプログラミングはCypherで、というわけで実に合理的だ。

▲画面2 Cypher。3オシレーター・タイプで、FMをはじめ複数のオシレーターによる変調機能を主眼として開発されている。デュアル・フィルターやアルペジエイターも搭載

複雑といっても、全体の構成は基本的にはアナログ・シンセと同様だ。アルペジエイターやTransModシステムも装備されているので、Strobeからの移行も容易だろう。もちろん、このCypherでも、FXPANSIONらしいユニークな機能拡張がなされている。

FMでは、アナログ・ライクなパラメーター構成でありながら、アナログでは不可能なスルー・ゼロ変調が可能になっている。詳しい解説は煩雑になるので避けるが、これはYAMAHA DX7などに見られる機能で、きれいなピッチ感のある音色を得るには不可欠だ。実際のサウンドも、アナログの荒れたクロス・モジュレーションと、デジタルFM的な整理された音色の良い所どりで、両方のサウンドが得られる。シンク・モジュレーションでも、過激なリード・サウンドなどでおなじみのハード・シンクだけでなく、まったりしたベースなどにも最適なソフト・シンクも可能、両方の間をつまみで自由に行き来できる。

 

電子キーボードをよみがえらせたAmber

▲画面3 Amber。電子キーボードをよみがえらせたような古典的なシンセサイザー。3種類のコーラス・エフェクトによる昔懐かしい音色が特徴

個人的に最も面白かったのが、このAmberだ(画面3)。いわゆるストリングス・マシンや電子オルガン、MOOG PolymoogやKORG PS-3000シリーズのような擬似ポリフォニック・シンセを再現している。特にユニークなのは分周方式のオシレーター。電子キーボードらしい、独特の薄くチープなサウンドはほかにはないものだ。もちろんフィート方式によってオクターブ上や2オクターブ上の音を重ねられる。このオシレーターにフィルターを組み合わせたものが2系統あり、それらをミックスあるいはキー・スプリットしてパッチを作成する。

この手の電子キーボードに欠かせないのが、コーラス・エフェクトだが、これもマニアックでおもしろい。3種類を切り替えられるのだが、その名前が、1975/1981/1984となっていて、選ぶといかにもあの時代の音になる。電子ストリングスや、ショワショワしたポリシンセ、チープな電子オルガンなど、ポップな音色が簡単に作成できるのがうれしい。またフォルマント・フィルターも装備し、昔懐かしい電子クワイア音色もバッチリだ。

 

すべてを統合しさらなるパワーを与えるFusor

▲画面4 Fusor。3台のシンセを統合し、さらなる音色を生み出すセミ・モジュラー仕様のプラットフォーム。インサート・エフェクトやミキサーなど分かりやすく配置されている

これらユニークな3台のシンセを統合するのがFusor(画面4)。Fusorでは、3つのスロットに任意のDCAMシンセを読み込んで、レイヤーやスプリットできる。さらに、全体にエフェクトをかけたり、アルペジオを設定したりして、一つのパフォーマンス音色にできる。マニアックなところでは、3シンセ間のモジュレーションも可能。例えばStrobeのLFOでAmberにモジュレーションをかけたりできるわけだ。実際に音を聴くまでは、レイヤー・サウンドが出るだけだと思ったが、それだけではない。個人的には、AmberとCypherの組み合わせが気に入った。電子キーボード独特のスペーシーなサウンドと、粘っこいアナログ・シンセを同時に鳴らすのはとても面白い。

筆者自身BFDシリーズのユーザーでもあり、同社のミュージシャン・フレンドリーな製品作りには、日ごろから好感を持っている。使いやすく、しかも何か独特の親密さがあるのだ。ユーザー・インターフェースやネーミングのセンスなどにちょっとした遊び心のようなものがあり、しかも見た目やオシャレ感覚を過度に売り物にするわけでもない。冗談好きで腕利きのミュージシャンと仕事しているような快感がある。このDCAM:Synth Squadも、まさにそんな製品。ほかのソフト・シンセとは一味も二味も違う魅力があるのでぜひ実際に触ってみてもらいたい。

 

『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年1月号より)

FXPANSION

DCAM:Synth Squad

34,400円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪Mac/Mac OS X 10.5.7以降(INTELプロセッサー対応、PowerPCには非対応)、INTEL Core2.4 GHz以上のCPU、1GB以上のRAM、350MB以上のハード・ディスク空き容量、Audio Units/VST/RTAS(Pro Tools 7.4cs5以降)/スタンドアローン対応▪Windows/Windows XP SP3 32ビット/Vista 32ビット、INTEL Core 2.4GHz以上のCPU、1GB以上のRAM、350MB以上のハード・ディスク空き容量、VST/RTAS(Pro Tools 7.4cs5以降)/スタンドアローン対応

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