音楽的で直感的、スムーズ作業を可能にする16chデジタル・ミキサー

PRESONUS StudioLive 16.4.2

REVIEW by 鈴木鉄也 2009年9月15日

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16chのデジタル・ミキサーに22イン/18アウトのオーディオ・インターフェースを合体

PRESONUS StudioLive 16.4.2 オープン・プライス(市場予想価格¥250,000円前後)

まさに自宅録音の味方!! 手ごろな価格でかゆいところに手の届いた製品をリリースし続けるPRESONUSが、16chのデジタル・ミキサーに22イン/18アウトのオーディオ・インターフェースを合体させたStudioLive 16.4.2をリリースしました。クラスA仕様で高ヘッドルームが特長のXMAXプリアンプを全チャンネルに搭載し、レコーディング・ソフトのCaptureも付属している など、宅録環境だけでなく、ライブPAとレコーディングを同時に行うなど、さまざまな場面で”使える” 本機。操作性も昨今のデジタル・ミキサーにありがちな、画面を見ながら操作するようなものではなく、アナログ・ミキサーのように直観的で分かりやすく、とても音楽的。では、早速各機能をチェックしていきましょう。

全入力とメイン/サブ/AUXなどにEQとダイナミクスを装備

まず入力ですが、16chすべてにマイク入力(XLR)/ライン入力(TRSフォーン)に加えて、アウトボードが接続できるインサート(TRSフォーン)が装備されています。マイク入力に搭載されたXMAXプリアンプは、ヘッドルームが+22dBもあるので、コンデンサーやダイナミック、それにリボン・マイクなどにも幅広く対応でき、レコーディングの幅が広がるでしょう。また、エフェクト・リターン用のAUX入力(TRSフォーン)もステレオ2系統用意されています。

出力はステレオ1系統のメイン出力(XLR、TRSフォーン)、モノラル出力(XLR)、ステレオ1系統のコントロール・ルーム出力(TRSフォーン)、6chのAUX出力(TRSフォーン)、4chのサブグループ出力(TRSフォーン)、それにch1-8とch9-16という2系統のD-subによるダイレクト・アウトも装備されているので、DIGIDESIGN Pro Toolsなどを使用する際は便利かもしれません。ほかにCDプレーヤーなどを接続するためのテープ入出力(RCAピン)とS/P DIF出力(コアキシャル)も1系統ずつ用意されています。

トップ・パネルには、全チャンネルと4つのサブグループ出力、メイン出力に100mmフェーダーを搭載。各チャンネルにはゲインつまみのほかにセレクト/ソロ/ミュートの各ボタンも用意。またパネル中央部にはFat Cahnnelというセクション があります。これはいわゆるチャンネル・ストリップで、位相反転/ハイパス・フィルター/ゲート/コンプ/リミッター/4バンドEQ/パンなどが用意されていて、チャンネル入力のほかメイン/サブグループ出力/AUX入出力などもアサイン可能です(入出力系統によって一部使用できない機能もあります)。またメイン出力には31バンドのグラフィックEQも用意されています。そのほか、Fat Cahnnelセクションの上部には6系統のAUXセンド用つまみと2系統の内蔵エフェクト用センドつまみも用意されています。

アナログ卓のようなサクサク作業できる操作感

それでは早速、本機を使って録音してみましょう。まず付属ソフトのUniversal Controlをインストール。ここでサンプリング・レートやバッファー・サイズを設定しますが、本機は最高24ビット/48kHzに対応しています。また対応オーディオ・ドライバーはCore AudioとASIOです。

今回は付属のマルチトラック録音ソフト、Captureを使います。

▲付属のマルチトラック・レコーディング・ソフト”Capture”。本機に合わせて開発されており、セットアップなどは極めて容易だ。WAVファイルでのエクスポートが可能なため、録音した素材をほかのDAWソフトでも利用可能となっている

このソフトにはフェーダーやエフェクトなどが全く付いておらず、本当にシンプルなテープ・マシン代わりといった感じです。トラック数は最大32なので、バンドのベーシック録音などをこのソフトで行い、オーバーダビングやミックスはDAWソフトを利用するというのが現実的だと思います。

このソフトでアコースティック・ギターと歌を録ってみました。コンデンサー・マイクをch1のマイク入力に接続し、48Vボタンを点灯させてファンタム電源を入れます。

▲ファンタム電源がオンされた状態。その下に位置するのがFireWireボタン。極めてシンプルな作りだ

ゲインをひねりフェーダーを上げると音が聴こえますが、これはソフト入力前のダイレクト・モニタリング音です。ソフト通過後の音を聴きながら録音するには 、各チャンネルに装備されているFireWireボタンを押します。この場合は当然、レイテンシーがあるので少し遅れて聴こえることになります。

音を確認できたら、Fat ChannelでEQやダイナミクスの設定を行います。ただし、Dig Outボタンを押さないと録音には反映されないので注意してください。ややこしいのはこれだけで、あとはアナログ卓のような分かりやすさで両手でサクサク作業できるため効率はとても良いです。

例えば、AUX出力でモニター・ミックスを送るのも、セレクト・ボタンを押してAUXセンドのつまみをひねるだけ、フェーダー・フリップや裏に隠れているつまみ類がないので、デジタル卓にありがちな “今何をいじっているのか分からなくなる”ことがありませんし、頭で考えなければいけないことも少ないので、とても使いやすいです。

録音した音を再生するには、録音したチャンネルのFireWireボタンを押してソフトをプレイバックするだけ。オーバーダビングをする際も、同様で、簡単に重ねていくことができます。ただし、Captureは本当にアナログ・テープ・レコーダーのような機能のみなので、ボーカルを数テイク録って、その中からベスト・テイクを選ぶというようなときは、ほかのDAWソフトを使った方がよいでしょう。しかし、多くのチャンネルを使用する生ドラムを含めたベーシックを録音するような場合は、Captureを使用した方が明らかに設定の煩わしさがなく、エンジニアとしてももっと音楽的なことに集中できると思います。

ハイクオリティなマイクプリ自然でスムーズなコンプ

音質ですが、マイクプリはこの価格帯の機種としてはかなりハイクオリティだと思います。あえて本機よりも高価なマイクプリと比べると、やはり中低域や倍音の情報量の少なさゆえ、同じマイキングでは空気感が欠如し、結果として奥行き感が薄れる傾向にあります。しかしマイキングを工夫して空気感を録るようにすれば問題無いでしょう。各チャンネルに周波数可変のハイパス・フィルターが付いているのも個人的にはかなり使えると思いました。PAで使用する際、ライブ・ハウスなどには周波数固定のハイパスしか付いていない卓も多いので重宝すると思います。

コンプは質感を変えることなく、スムーズかつ自然にリダクションできるのでソースを選ばずに使えます。ただ、レシオは4:1以上のノブの可変幅が狭くなるので、ちょっと使いにくい感じがしました。内蔵エフェクトのリバーブにはアンビエンス/ルーム/ホール/プレートなど、ディレイもステレオ・ディレイやフィルター・ディレイなどの基本的なものが用意されています。

▲AとBの2系統用意されている内蔵エフェクトの画面。リバーブやディレイなどが豊富に用意されており、右のTAPボタンでディレイ・タイムを設定することもできる

これらは設定をそれほど追い込まずに使えるものが多く、ディレイ・タイムに関してはTAPボタンがあるので、ライブPAやクリックを使用しない録音などでも使いやすくなっています。全体的に付属している機能とその質の高さから、コスト・パフォーマンスはかなり高いと思います。

本機は目新しい機能を備えるというよりも、もう一度、音楽制作の基本的な姿勢に立ち返ろうという考えが感じられました。EQやコンプ、リバーブなどの設定にしても最近のプラグインなどで見られるカーブなどが画面には現れません。もちろん全セッティングは保存可能で、シーンを保存しておけば、フェーダー・レベルやチャンネル・ストリップ、内蔵エフェクトなどの全設定を即座に呼び出すこともできます。こういう環境で作業を積み重ねていくと、耳や感覚が鈍くならないのがよいなぁと思いました。画面を見ることもマウスをいじることも作業中ほとんどないので、ストレスもなく、ただ音楽に耳を傾けながら、とても音楽的でスムーズな作業ができました。肩も凝りませんし。キーボードとマウスでの作業に慣れてしまった今、あらためてフェーダーとつまみで画面を見ないで作業するという楽しみを再認識できた機材でした。今、あらためてフェーダーとつまみで画面を見ないで作業するという楽しみを再認識できた機材でした。

▲リア・パネルの接続端子。上段に16分のマイク入力(XLR)、ライン入力(TRSフォーン)、インサート(TRSフォーン)が並ぶ。 その下は左からトークバック・マイク入力(XLR)とレベルつまみ、モノラル出力とレベルつまみ、メイン出力L/R(XLR)とレベルつまみ、メイン出力L/R(TRSフォーン)、テープ入力L/R(RCAピン)、テープ出力L/R(RCAピン)、コントロール・ルーム出力L/R(TRSフォーン)、AUX B入力L/R(TRSフォーン)、AUX A入力L/R(TRSフォーン)、サブグループ出力1〜4(TRSフォーン)、AUX出力1〜6(TRSフォーン)。下段は左から電源スイッチ、ACインレット、S/P DIF出力(コアキシャル)、FireWire×2、ダイレクト出力ch9〜16(D-sub)、ダイレクト出力ch1〜8(D-sub)

『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年9月号より)

PRESONUS

StudioLive 16.4.2

オープン・プライス (市場予想価格/ 250,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪周波数特性/20Hz〜40kHz(0/-0.5dBu)▪全高調波歪率/0.005%(20Hz〜20kHz)▪サンプリング・レート/44.1、48kHz▪A/D/Aビット・デプス/24ビット▪リファレンス・レベル/ー18dBu▪内部プロセッシング/32ビット浮動小数点▪ADCダイナミック・レンジ/118dB▪DACダイナミック・レンジ/118dB▪外形寸法/437.4(W)×568.06(D)×175.26(H)mm▪重量/10.442kg

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