U67サウンドをK67カプセルとFETで再現したコンデンサー・マイク

NEUMANN TLM67

REVIEW by 山田幹朗(ビクタースタジオ) 2008年11月1日

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この度、NEUMANN設立80周年を記念し、同社の名機U67の心臓部とも言えるK67カプセルを採用したFET仕様の新モデル、TLM67が発売された。早速、レビューしていこう。

熱さを感じさせる
ビンテージ・サウンド

TLM67について言及する前に、まずは原型となったモデル、U67の概要を紹介しておこう。このマイクは、1960年にU47の後継機種として発表された。マイク・カプセルにK67を、またプリアンプには真空管を使用した構成で、オールマイティかつ明確なキャラを持ったマイクである。それまでU47では使用が難しかった大音量楽器に対しても安心して使用できる仕様となっており、個人的にはU67を使用したことの無い楽器がないほど信頼している唯一無二の存在である。バンド系のドラムでは、バスドラやルーム・サウンドを狙い、ベース・アンプでは躍動感のあるサウンドを演出でき、ギター・アンプやアコースティック・ギターも得意とし、もちろんガッツのあるボーカルまで一貫して使うことができる。さらに、ストリングスやブラスなどの生楽器に使っても、U67の真骨頂である雰囲気のあるしっかりしたサウンドで収録でき、ミュージシャンからの信頼も厚い。安心して使えるマイクなのである。

そんなU67サウンドを、K67はそのままにプリアンプにFETを採用して再現したのがTLM67であるとのこと。FETなので真空管マイクのように電源ボックスや真空管のウォーミング・アップ時間なども必要とせず、ファンタム電源を供給するだけですぐに使用できる。またU67と同様に無/単一/双指向を切り替えることができ、−10dBのPADとハイパス・フィルターも装備している。今回はオリジナルのU67、オリジナルでしかも最近使用し始めたデッドストックのU67、そして1993年にリイシューされたU67の3機種と比較してみることにした。マイクプリはNEVE 1073、ソースはボーカルとアコースティック・ギターである。

まず比較機種の音の傾向を紹介しておこう。オリジナル機は経年変化も含め非常にファットで太いサウンド、デッドストック機は高域の伸びが素晴らしく輝きがある。そしてリイシュー機はミッドが充実してとても元気のいいサウンドだった。

早速この3本と比較してみたところ、TLM67はオリジナル機とリイシュー機の中間の印象を受けた。オリジナル機のファットさとリイシュー機の元気の良さを併せ持っているのだ。これはTLM67がオリジナル機と比較して開発されたことによる影響と思われる。リイシュー機がオリジナル機のパーツをできるだけ忠実に再現しようとしたものだとすれば、TLM67は真空管などにこだわらず、あくまでオリジナル機のサウンドを意識して開発されたことがうかがえる。現行のNEUMANN製マイクは全体的にU67サウンドよりサラっとした印象なので、“ビンテージ感”や“熱さ”みたいな質感を求めている方にはとてもオススメだ。また、この4本では低域のハリや充実感はどれも甲乙付けがたく、ブラインド・テストされたら気が付かないレベルであろう。同じNEUMANN製FET機ということでU87とも聴き比べたが、やはり高域の伸びや中低域の存在感がまるで違っていた。

EQ時のニュアンスも
オリジナル機に酷似

次は各ソースを録音して、いつも行っているようにEQを施してみたが、持ち上がってくる音の密度や粒子の細かい感じがオリジナル機と同様であることには驚かされた。特に、U67独特の味わいのある高域が酷似していた。音のヌケに関してはオリジナル機と比べて、リイシュー機やデッドストック機とともにTLM67も若干劣る感じがしたが、オケの中での“混じり具合”はTLM67の方が扱いやすいように思えた。オリジナル機はオケの一部として並べる音というよりも、一歩前に出た存在感の強い主張する音になる。一方、TLM67はそうした音よりも広がりやレンジ感があるのだ。

最後にTLM67の外観デザインにも触れておこう。この形は“NEUMANNスタイル”と呼ばれもので、U67から始まり後発マイクにも継承されている。これは指向性や音質追求、回路構成を含めすべての面をクリアした“完成された形”なのである。車でも何でもデザインには意味があるが、“NEUMANNスタイル”もまさに時代を超えたデザインと言えるだろう。マイクは見た目を競うものではないが、シンプルで堅実、飽きのこない普遍的な素晴らしいデザインだと思う。なお、TLM67では、通常のNEUMANN製品で同社のエンブレムが入る位置に、創立者ゲオルグ・ノイマン氏の肖像が刻印されている。

現状、U67を含めビンテージ・マイクは価格が高騰し、状態の良いものを探すことも難しくなっている。また購入後の定期的なメインテナンスも必要だ。そうした価格/技術的な問題もクリアにし、サウンドも限りなくオリジナルに近いTLM67、この記念すべき製品をぜひとも一度手に取っていただきたい。

NEUMANN

TLM67

299,250円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

▪音響作動方式/プレッシャー・グラジエント・トランスデューサー
▪指向性/無指向、単一、双指向
▪周波数特性/20Hz〜20kHz
▪感度(1kΩ、1kHz時)/無指向:10mV/Pa、単一:18mV/Pa、双指向:9mV/Pa
▪外形寸法/56(φ)×200(H)mm
▪重量/490g

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