分かりやすい定位感と豊かな低域のパワード・モニター・スピーカー

MACKIE. HR824 MK2

REVIEW by 今本修(Murphy's Studio) 2008年2月1日

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1999年は僕にとって転機の年でさまざまな出会いがあった。その出会いの一つがMACKIE. HR824だ。知りうるモニターの中においては少し大きめで、黒光りしたエンクロージャーから流れていたのは完成したばかりの音源、birdの「SOULS」という曲。曲の良さや斬新さもさることながら音の温かみ、パワーフルなビート、繊細な高音は、今まで聴いてきた歌謡曲の音質、今まで聴いてきたスピーカーとははるかにかけ離れていた。僕にとってこの曲とHR824との出会いは衝撃的だった。

ち密に設計された曲面のバッフルは
内面の振動を抑えてひずみを最小限に

今回ご紹介するのはスタジオ用ニアフィールド・アクティブ・モニターの名機HR824の後継機HR824 MK2。MACKIE.の高音質でパワフルな音は世界の多くの音楽制作者に愛されている。1996年に初期モデルのHR824が発売され10年以上がたった今、待望のニュー・モデルが登場。その全容を僕なりに説明していこうと思う。

同社は本機の制作において、音質向上のため正面のバッフルをより滑らかなカーブにし、エッジの回折をさらに抑制し音像を広げることに成功したとのこと。一体成型の鋳造アルミニウム製Zero Edge Baffleはち密に設計された曲面を持ち、内面の振動を抑えることでひずみを最小限に抑える構造だという。見た目的には、チャコール・グレイのつや消しに丸みを帯びたモダンなデザインだ。また低域のレスポンス向上も図られており、わずかにキャビネットの容量を増大。重量は前機種とほぼ同等で1本15.7kg。19mm厚のMDFウッド材エンクロージャーは高級感のあるピアノ・メッキ仕様だ。ユニットは25mmドーム・ツィーターと222mmウーファーを搭載している。

背面にはXLRとTRSフォーンに加え、RCAピン端子入力も装備。今回のモデル・チェンジでデジタル入力も装備されるのでは、と思っていたが、入力はアナログのみ。今回は音質向上に重点をおいて、コスト・パフォーマンスを維持することを目指した仕様と言えよう。また、低域フィルターの37/47/80Hzハイパス(−3dB)と10kHzのシェルビングEQ(±2dB)などのスイッチ類も前モデルと同様。このセクションに用意されたAcoustic Spaceスイッチは、自宅スタジオなどの防音や吸音が施されていないブーミーに鳴りがちな場所での設置にも便利な機能で、QUARTER/HALF/NORMALの3種類が用意されさまざまなセッティングに対応できる。そのほか、前面には優しい白い光を放つパワー・インジケーターがあり、入力オーバー時は赤く染まる。

分かりやすい低域
縦の定位感と立体感も抜群

今回の試聴ではさまざまな音源を用意した。低域たっぷりなダブ、レゲエ、ハウスや中期のヒップホップなどマイ・ブームな音源から臨場感のあるもの、歌謡曲までたくさんの音源を聴いてみた。さらにミックス作業にも使用し、エージングを含め耳になじむまで聴き入った。良いスピーカーというのは、どんな音源でもバランス良く聴こえるのが絶対条件。低音が極端にブーミーなものは部屋が必要以上にうるさく鳴ってしまうものもあるが、本機においてはその心配がなさそうだ。背後のスイッチ類が適切な状態なら、どの音源も素直な音がする。中でも突出しているのは低域の分かりやすさである。また定位感がとても素晴らしい。縦の定位感と立体感がほかのモニターと比べて判断しやすく、低域の定位も他機種に比べて一層、二層下の位置までくっきりと確認できる。当然、高域の解像度の高さ、歌の透明度、全体域の輪郭、音楽的なひずみも見えやすい。

ミックス作業においては、EQのポイントやコンプのかかり具合など、使用しているエフェクトの癖まで分かるので仕事がとてもスムーズに進んだ。さらに本機を90°回転させて横置きの設置も試してみた。この状態では若干、上下の音像が中央に寄る。低域がぐっと締まる感じで、縦置き時の上下の立体感は多少狭くなる。それでも普段他機種で聴くようなレンジ感だが、多くの人間が立ち会う大きなスタジオなどでの設置法としては良いのかもしれない。ちなみに、横置き使用の場合は“MACKIE.”のロゴを回転させられるところがかわいい。こういう愛着を持てる部分は、長く使用していく上で重要な要素だ

前機種との差は革新的な立体感とその豊かな低域、全体の音の臨場感の向上にある。前回同様、THX認証なのでサラウンドのモニターとしても唯一無二の存在になるだろう。当然MACKIE.本来のしんとパンチのある音は何も変わらない。録音、音楽業界がこの10年でどのように変化し、そこから何が本当に必要かを感じられた気がする。そこには目新しい機能ではなく、純粋な音質の向上、シンプルで飽きのこないデザイン、そしてほどよい高級感だけ。ここ10年で音の流行があり、必要以上のパワー感や極端な高域のカーブは本当に必要なのだろうか? 僕は本機が純粋な音楽の楽しみ方やスピーカーの原点に戻る良いきっかけになるツールになるのだと思う。

MACKIE.

HR824 MK2

102,900円/1本
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/37Hz〜20kHz
▪ツィーター/25mm
▪ウーファー/222mm
▪クロスオーバー周波数/1.9kHz
▪アンプ出力/150W(低域)、100W(高域)
▪外形寸法/273(W)×425(H)×351(D)mm
▪重量/15.7kg(1本)

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