名機610コンソールの回路を忠実に再現した真空管マイクプリ/DI

UNIVERSAL AUDIO Solo/610

REVIEW by 加納直喜(GO-GO KING RECORDERS) 2006年10月1日

20061001-05-001

フランク・シナトラ、レイ・チャールズらのお気に入りエンジニア、ビル・パットナムはユニバーサル、ユナイテッド、ウェスタン=現オーシャン・ウェイといった現存する有名スタジオのルーム・デザインを手掛けた人物。また、彼が起業したUNIVERSAL AUDIO(以下UA)やUREIは1176LNを開発/設計し、オリジナルの生産が終了した現在でも世界中で常用されている。1999年に新生UAをスタートさせたパットナムの2人の息子は、父が作った往年のアナログ名機の再生産に着手。まずは1176LNから始め、もともとパットナム所有のユナイテッドのために製作した610コンソールに使用されたマイクプリを基に2-610を開発/発表した。そして今回オリジナル復刻モノラル仕様の真空管マイクプリ&DIのSolo/610の登場を迎えるに至ったのである。

入出力には共に真空管を採用し
左右のツマミでコントロール

Solo/610の元になる610コンソールはメインテナンスの利便性を追求し、エコー・センド、EQ付きマイクプリなどをモジュール化し、スタジオの規模に応じて必要な数だけマザーボードに組み込むモジュラー・コンソール。今日ではこの形式が一般的だが、当時としては極めて画期的な発想であった。同コンソールはオーシャン・ウェイで今でも現役使用されており、ノー・ダウトやグリーン・デイなどの作品に生かされている。本機の発売で、それらの作品や歴史的な名作と同じ音が手に入ると思うだけで、単純にワクワクしてくるではないか。

では、実機を見ていくと、NEUMANNやAKGのビンテージ真空管マイクの駆動ユニットを思い出させる外観が秀逸。サイドの放熱用スリットがUAのロゴになっているのもほほ笑ましい。3台を3Uにラック・マウントすることも可能なようだ。フロントには大きなツマミが2つあるが、これらは同社製品を使用したサウンド・メイキングでも重要なポイント。左側のGAINを時計方向に回すと、入力部に搭載された真空管に送られる信号のボリュームが増え、倍音成分が付加されていく。右側のLEVELはフェーダー的な役割を果し、MTRやDAWの入力モジュールに適正レベルを送るために使用する。ただ、出力部にも真空管が搭載されており、実際には自分で聴きながら左右のツマミを操作して良いと思うポイントを見つけていく。これは初心者には難しいところで、慣れるまでは真空管回路が持つ“明るく温かみのある”特徴を引き出すのに苦労するだろう。

2つのツマミ間にはSIGNALインジケーターがある。信号が通るとグリーンが点灯し、クリップ間近で橙色、オーバーロードで赤色が点灯する。実際には入力部の真空管回路がかなり繊細なため大きなピークが瞬時に来ると赤色が点灯しないにもかかわらずひずむ。しかもサチュレーションと呼ぶには程遠いつぶれ方だ。この点も慣れるまでには非常に苦労するポイント。コントロールの利いた演奏力や歌唱力を要求されるマイクプリとも言える。

繊細でシビアなマイクプリだが
非常にリアルでゆったりした質感

実際にダイナミック・レンジの広いボーカルでマイクプリを試してみると、ピークの強い部分でつぶれてしまう傾向が強い。しかし、ピアニッシモでしか歌わない女性ボーカルで使用したところ、柔らかく温かみを持つ音像のまま歌詞をクリアに聴けた。通常こういったボーカルはオケに埋もれがちだが、非常に素晴らしい結果と言える。そこを踏まえてツマミ設定のコツさえつかめば弦楽器や管楽器などの生音も非常にリアルでゆったりとした質感を得ることが可能だ。

続いて、エレキベースをDIに入れてラインの音も確認すると、こちらの方が楽に本機の良い部分を引き出せる。通常のDIであれば中域のしんの部分しか得られないが、GAINツマミを上げることでサウンドに空気感と厚みを加えられる。なお、このDIから送られる回路はコンソールで言えばライン・アンプに当たる部分。このことから610コンソールでモニターされた音がいかに素晴らしいものであるかがうかがえる。

DAWが一般的になった昨今、この回路でサミング・アンプが製作されることを心から望む。総合すると繊細でシビアなマイクプリだが、エンジニアや演奏家の力量が問われるといった点では音楽的な機材だと思う。音楽に携わる人間が決して忘れてはならないことを教えてくれる素晴らしいマイクプリ/DIの登場ではないだろうか。

▲リア・パネル。電源コネクターのインレットの右が電源スイッチで、その下には左からMIC/LINE切り替えスイッチ、出力端子(XLR)、LIFT/GND切り替えスイッチ、マイク入力(XLR)が並ぶ

UNIVERSAL AUDIO

Solo/610

オープン・プライス(市場予想価格:100,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■入力インピーダンス/500〜2kΩ(MIC)、2.2M/47kΩ(DI)
■周波数特性/20Hz〜20kHz ±1dB
■最大ゲイン/61dB
■最大入力レベル/−12dBu 1% THD+N Ratio(MIC)、+14dBu 1% THD+N Ratio(DI)
■外形寸法/146(W)×127(H)×356(D)mm
■重量/4.1kg

TUNECORE JAPAN