真空管とFET両方の回路を併せ持つ高品位/多機能なハンドメイドDI

MILLENNIA TD-1

REVIEW by 石塚“BERA”伯広 2004年1月1日

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ダイレクト・ボックス(以下DI)の役目とは、ライブやレコーディングなどをする際に、コンソール上でレベルをマッチングさせるための変換器のようなものだ。さまざまなメーカーから数多くのDIが発売されているが、当然ながら音色の個体差も大きく、ベースのレコーディングにおいては、スタジオに常設されているDIをできる限り細かくチェックすることもよくある。また、DIの多くはインピーダンスの変換器としての機能しか持ち合わせておらず、“あと少しローやハイが上げられたらな”という不満を持つ場合もある。大抵はエンジニアがコンソール上で調整するが、できれば手元で自分で調整をしたいというプレイヤーもいるはずだ。ハイエンド・ユーザーに定評のあるMILLENNIAによるハンドメイドDI、“TD-1”は、エンジニアだけでなく、そういった希望を持つミュージシャンのために開発された、多くのプラス・アルファを搭載する製品である。

プレイヤーの表現に幅を与える
ウォームで伸びのあるサウンド

まず外観についてだが、幅がハーフラック・サイズで、高さは2Uラック相当という重量感のあるデザイン。充実した入出力端子を誇り、レコーディング時にはチューナーへのパラアウトも可能だ。ヘッドフォン・アウト、REAMPアウトなどの付加機能の端子も装備するほか、オプションでマイクプリを搭載することも可能となっており、その場合リア・パネルにマイクの入力端子(XLR)が装着される。

TD-1のウリはなんと言っても、太く芯のある真空管回路とナチュラルな音色のFETソリッドステート回路を併せ持つ“Twin Direct”アンプだ。そこで、すべての付加機能をバイパスにして、双方のキャラクターをチェックしてみた。まずはエレキベースを接続して、フロント・パネル左下のインピーダンス切り替えボタンで最適なインピーダンスを選択する。これは、ギター/ベース本体のピックアップがハムバッキング・タイプかシングルコイル・タイプかで異なるだけでなく、ボリューム・ツマミの設定によっても違ってくるので、一番音のヌケるところを耳で探そう。あまり違いが分からないという場合は、2Mに設定する。

真空管回路での音色は非常にウォームだが、ドライブ感は驚くほどは感じない。AVALON DESIGNのような非常に上品でマイルドな音色だが、弱く弾いたときから強く“ブッ”と弾いたときの立ち上がりは非常に速く印象は良い。そこで、パネル右にあるTWIN TOPOLOGYスイッチを押し、FET回路のアンプに切り替えてみた。押した瞬間小さく“カチッ”というリレーの音が鳴り、ショート・オート・ミュートにより一瞬音が切れる。直後は少々歪んでいたが、30秒ほどでウォーム・アップされクリアになった。FET回路の音色は個人的には非常に良い印象。真空管回路の低域をそのままにして中高域は非常にクリアで伸びのある音にした感じだ。音圧もあり、まさにソリッドという音色である。指弾きのときは、FET回路で輪郭を出し、スラップ奏法のときは真空管回路でアタックを抑えたり……などなどレコーディング時には良い意味で悩みそうだ。

自宅でのギター・レコーディングに
重宝するREAMP機能

次に割と太い音の出るセミアコ・タイプのエレキギターでチェックしてみた。音色についてはベースと同様の印象。しかし、さまざまな機能が装備されているので、奏法や楽曲によってベストなサウンド・メイキングができそうだ。面白い付加機能としては、REAMPというものがある。これはリアンプのための特別な回路で、使い方としては、まずリア・パネルに装備されてるライン・アウトからMTRにラインで演奏を録り込む。その後、MTRの出力をTD-1のフロント・パネルのREAMPインプットに接続し、MTRに録り込んでおいた素材をギター・アンプで鳴らして再び録る。自宅で1人でアンプを鳴らしてレコーディングする際にも非常に重宝しそうだ。リア・パネルにあるREAMPアウトはTYPEⅠ/Ⅱという2系統の出力があり、FENDER StratocastorとGIBSON Les Paulのピックアップのサウンドをエミュレートしている。

このほかSPEAKER SORKという機能があり、これはギター・アンプのスピーカー・アウト、つまりパワー・アンプ部の出力を直接TD-1に接続でき、ギター・アンプならではのゲインとマスター・ボリュームでの歪みの感じをラインで録ることを可能にしてくれる。また、見ての通りEQはハイとローの2系統が用意されており、その効きも非常に良い。さらに、インプット/アウトプットにグランド・リフトを装備することで、電位差を解消しハム・ノイズも強力にカットする。まさにプレイヤーのかゆいところに手が届くDIだ。

総評すると、主にはギタリストやベーシスト向きだがオプションでマイクプリも搭載可能なので、ギター/ベースに限らずオールマイティに使える製品と言ってもいいだろう。が、やはりこだわりを持つギタリストやベーシストに、ギター/ベース・アンプの次に手に入れてもらいたい製品だ。

▲リア・パネル(マイクプリのオプション装着時)

MILLENNIA

TD-1

オープン・プライス(市場予想価格:200,000円)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■周波数特性/3Hz〜300kHz(@−3dB)、7Hz〜100kHz(@−0.5dB)
■最大入力レベル/+23dBu(ライン)、+18dBu(DI)
■最大出力レベル/+32dBu(バランス)、+26dBu(アンバランス)
■入力インピーダンス/6.9kΩ(ライン)、470kΩ/2MΩ/10MΩ(DI切り替え)
■出力インピーダンス/24.3×2Ω(バランス)、49.9Ω(アンバランス)
■外形寸法/216(W)×89(H)×330(D)㎜
■重量/6.7㎏

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