ステップ・ゲイン採用の低価格でコンパクトな2chマイク・プリアンプ

FMR AUDIO RNP8380

REVIEW by 赤川新一(STRIP) 2003年12月1日

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小型で安価なコンプレッサーRNC1773で大ブレイクしたFMR AUDIOから、今度はマイクプリの登場だ。RNC1773は、小型ながら基本的なコンプレッサーのパラメーターをすべて備え、可変範囲の広い優秀な機種だ。価格も安く、いったい世界中で何台売れたんだろうというほどのベストセラーである。確かに3万円台でステレオ・コンプが手に入るのは驚きであり、それが“コンプとしての音作り”のほとんどすべてを可能にしているのだから、ベストセラーも当然なのかもしれない。

低価格ながらクラスA動作の
ディスクリート回路を採用

しかし、今回のRNP8380はマイクプリだ。筆者のマイクプリに対する考え方は“良いマイクプリは高い”である。マイクプリは、トリッキーな回路やデバイスで高音質を得ることが難しい印象があり、結局のところ、高音質を得るためには“物量投入型”になるのではないかと思っている。RNP8380は実売で8万円台後半……しかもステレオ仕様だ。通常なら見向きもしない価格帯というわけだが、そこはステレオ・コンプレッサーを3万円台で出しているメーカーのことだ。やはり尋常ではないことをやってくれている。この価格帯のマイクプリでは、恐らく初のディスクリート回路。しかもA級動作だという。ケースにRNC1773と同じものを採用するなど、コスト・ダウンに努めた結果、実現した価格なのだろう。

RNP8380のファンタム電源は、オン/オフとも徐々に電圧変化するような仕組みが内蔵されている。アシスタントのころ、ファンタムがかかりっぱなしの状態でマイク・ケーブルを抜いてしまって、よく怒られたものだ。この機能は、マイクの長寿命化などに影響があるという。もちろん、短いテスト期間内で筆者自身が検証できたわけではないが、何となく気分の良い機能だ。ゲイン・アッテネーターは一般的な6dBステップのもの。このほかに位相切り替えスイッチがあり、マイクプリとしての基本機能は満たしていると言える。ハイパス・フィルターが省略されているのは残念だが、入力インピーダンスが比較的高く設定されているのか、低域の“ゴロゴロ・ノイズ”が気になることは無かった。

太い低域と滑らかな高域
DI端子を備え楽器入力にも対応

実際に試聴してみると、音質はナチュラルで美しいもの。低域が太く、高域が滑らかでツヤがある。傾向としてはNEVE系だが、ハイエンドの伸びはむしろRNP8380に分があるかもしれない。全体的に十分なクオリティを持っている。

RNP8380のアウトにライン・アンプをつないで15dBほどゲインを下げ、RNP8380自体はフルゲインにした状態でのテストも試みた。この方法はSSLなどでよくやるのだが、マイクプリ部分をオーバードライブし、ナチュラルな歪みを得るセッティングだ。この設定では、ノーマル・ゲイン時のナチュラルさは消え、荒々しいサウンドが得られる。声が“バリッとする”感じが素晴らしく、太く明るい音色になる。声の場合、歪み方は望ましい方向だ。機種によっては歪み感だけが強調され、全く使えない場合も多いのだが、RNP8380は良い感じにクリップする。ちなみに声に使ったマイクは、現代のマイクよりもゲインが小さいNEUMANN U87i。もちろんマイクによっても、ボーカリストが変わっても、評価は変わる。

フロント・パネルにあるハイインピーダンス入力(1MΩ。エレキギター/ベースなどに対応)も試してみた。BSSなどのDIと比べてみたのだが、近くて早い印象の音になる。エレキギターのカッティングなどは好適。ベースもアタックが早く、くっきりとした音像を結ぶ。

ちなみにエレキギター/ベースでもオーバードライブさせてみたが、この場合はマイク入力(声)ほどの好印象は無い。高域に“ジリッ”という歪みが乗り、歪みが太さに貢献しないので、この歪みが出始める直前ぐらいのゲインで使うのがいい感じだ。こういった使い方をするとき、単体ではアウトプット・ゲインが変えられないのが非常に残念だ。必要なチャンネル数分だけアッテネーターを用意するか、ライン・レベルの変えられる機材にいったん突っ込む必要がある。

非常に好印象なRNP8380だが、マイクプリの評価というものは非常に難しく、長年使ってみないと本当の特徴をつかむのは困難だ。とはいえ8万円台でこんなに印象の良い機種も珍しいので、ひとまず使い続けてみたい。

また、RNC1773をTRSケーブル1chにつき1本でインサートできるという機能もうれしい。この接続では、RNC1773の出力がバランスになるというメリットも享受できる。RNC1773ユーザーなら、相性の良いマイクプリとして真っ先に選択肢に入れたいモデルだ。

▲左の2つがマイク入力。右の上2つがインサート端子、下2つがアウトプット

FMR AUDIO

RNP8380

オープン・プライス(市場予想価格88,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

問い合わせ
セカンドスタッフ
TEL: 042-503-1111 http://www.2ndstaff.com/

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■ゲイン可変幅/0〜66dB(12段階ステップ・ゲイン)
■ヘッドルーム/+28dBu
■最大出力レベル/+28dBu(Out/バランス)、+22dBu(Insert/アンバランス)
■等価入力換算ノイズ/120dB
■外形寸法/140(W)×40(H)×154(D)mm
■重量/592g

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