原音が持つ臨場感を再現する高品位4chマイク・プリアンプ

EARTHWORKS 1024

REVIEW by 宮原弘貴(デジタル・マグネット) 2000年12月1日

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EARTHWORKSの1024は、ディスクリート方式を採用した4chマイク・プリアンプです。一見オーソドックスなスタイルに見えますが、内部には高音質のためのさまざまな技術が採用されているようです。また、EARTHWORKSはマイクロフォンのメーカーでもあります。そのため、本機の開発に当たっては、マイクの性能をどれだけ引き出せるかということに重点が置かれているようです。同社には、LAB102という2chのマイク・プリアンプもありますが、本機はLAB102の4ch版というわけではなく、全く新しい回路で構成されています。

歪みとノイズを徹底的に排除し
定格出力レベルを10Vrmsに設定

まずは、スペックについて説明したいと思います。周波数特性は2Hz〜100kHzで±0.1dB、全高調波歪率は0.0001%、SN比は−136dBという、非常に素晴らしい数値になっています。特に歪率に関しては通常の測定ではまず分からない数値になっていて、測定限界値以下ということになるでしょう。これは、同社によって新たに開発された、ZDT(ゼロ・ディストーション・テクノロジー)という技術を用いて実現されています。残念ながら具体的な仕組みなど細かいことは分かりませんが、本機はZDTを初めて採用したモデルということです。今後、このZDTを応用したマイクやパワー・アンプなどといった製品のリリースも予定されているようです。

また、本機の特徴として定格出力レベルが高いことが挙げられます。本機の定格出力レベルは10Vrmsに設定されており、20Vrmsを歪むことなく出力することが可能です。これは、プロ用の信号レベルである+4dBよりもかなり高い数値になっているので、オーバースペックでは?と思うかもしれませんが、素早い音の立ち上がりを再現する上で10Vrmsは必要であるという、同社の考えによるものです。主流になりつつある24ビット・レコーディングでの使用を考えた場合、16ビットよりも広大なダイナミック・レンジを確保できるわけですから、決してオーバースペックというわけではないと思います。

このようなスペックだけでも、本機が歪みとノイズを徹底的に排除し、原音が持つ臨場感の再現にこだわっているのがよく分かるでしょう。

では次に、フロント・パネルを見てみます。各チャンネルは全く同じ構成になっており、チャンネルによる機能の違いなどはありません。それぞれに装備されている機能は、48Vファンタム電源のON/OFFスイッチ、POLARITY(位相)の反転スイッチ、出力のON/OFFを切り替えるSTANDBYスイッチ、5dBから60dBまでを5dBステップで可変できるゲイン、リア・パネルのアンバランス・アウトからの出力レベルを、−20dBから0dBまで連続可変できるVARIABLE OUTPUT、そしてSTANDBYスイッチのON/OFFを表示するLEDとクリップのインジケーターです。パッドは装備されていませんが、本機の場合はゲインの可変幅が広いので、特に問題はないと思います。

リア・パネルもフロント同様、各チャンネル共に同じ構成になっており、XLRのMIC IN、XLRのバランスOUTPUTとフォーン・ジャックによるアンバランスOUTPUTが装備されています。本機のような音質重視型の機材では、XLRのバランスOUTPUTのみしか付いていないのが当たり前という印象が強いのですが、本機にはアンバランスOUTPUTと専用のボリュームが装備されています。その辺りに、自宅録音といったような民生機レベルでのオペレーションも考慮した設計がなされているのが、うかがえます。

ハイファイかつクリアな音で
マイクの性能を最大限に引き出す

スペック上ではかなりハイファイな印象ですが、実際の音はどうでしょうか? チェックには、スタジオ・マイクの定番とされているNEUMANN U87を使って、SSLコンソールなどのヘッド・アンプと比較してみました。

まずはアコースティック・ピアノでチェックしましたが、SN比はスペック通りの印象です。本機によるノイズは一切感じられず、SN比の良し悪しは使うマイクで決定されるような感じです。音質もクリアで、ピアノの高音域から低音域までとてもバランス良く聴こえます。特に低域の倍音がよく再現されていて、厚みがあり、しかもヌケのいい低音が得られます。強く弾いたときのアタックもつぶれた印象はなく、ダイナミック・レンジの広い演奏でもニュアンスを忠実にとらえることができるでしょう。

次に、スタジオのスピーカーからMTRのドラム・トラックを流し、それをマイクで拾ってチェックしてみました。シンバルの高域の伸びがとても良く、ここでもハイファイな印象を受けました。ドラム全体もレンジが広くクリアに聴こえます。また、スタジオ内の響き、空気感といったものが良くとらえられていて、臨場感の再現という部分も十分に表れていると思います。

マイクの性能を最大限に引き出すという本機のコンセプトは、実際に音を聴いても十分に納得できます。ただ、マイクの特性が素直に反映されるということは、マイク自体の選択がより重要になってくるのではないかと思います。

本機は、実際の音もスペックに負けないハイファイなマイク・プリアンプです。その特性を生かすためにも、EQやコンプなどは使わず、マイクの種類とマイキングで音作りをするといった使い方に向いていると思います。逆にNEVEなどマイク・プリアンプ自体の持つキャラクターによる音の変化を期待する人には、少しもの足りないかもしれません。用途やコンセプト、また価格から見るとプロ向けの製品であるという印象が強いですが、本機の2chタイプのようなもので価格が半分くらいの製品が出れば、もっと広くアピールできると思います。生音にこだわりたい方は、ぜひ1度チェックしてみてはいかがでしょうか。

EARTHWORKS

1024

560,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■周波数特性/2Hz〜100kHz±0.1dB、1Hz〜200kHz±0.5dB
■入力インピーダンス/10kΩ
■全高調波歪率/0.0001%10V出力時
■方形波ドループ/1%max@5Hz
■方形波立ち上がり時間/0.25μsec
■スルーレート/15V/μsec
■ゲイン/66dB
■等価入力雑音/−136dBV@60dBgain
■入力コネクター/XLRバランス
■出力コネクター/XLRバランス、フォーン・アンバランス
■外形寸法/483(W)×44(H)×152(D)mm
■重量/4.4kg

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