非圧縮24ビット/96kHzの録音が可能な16トラックHDR

AKAI DPS16

REVIEW by 原口 宏 2000年7月1日

AKAI-DPS16main

いよいよAKAIのDPSシリーズも16トラックに。しかも24ビット/96kHzにまで対応し、一気に最先端スペックとなった。また、既にDPS12で定評のあった操作性を大型液晶でさらに進化させ、ピンポン・バスを採用してバス周りの使い勝手も向上。完成度の高い仕上がりになっている。

最新スペックの録音モードと
本格的になったI/O端子類

記録メディアは内蔵または外付けのハード・ディスクを使用。標準的に発売されているDPS16HD20には、20GBのハード・ディスクが搭載される。これだけ容量があれば、ハード・ディスクを入れ替えて作業する必要はほとんどないだろう。

録音モードは従来の16ビットに加え、24ビット・モードが選択可能になった。ただし録音/再生トラック数には制限があり(表①)、16トラックをフルに使いたい場合は16ビット・モードを選択しなければならない。一方、サンプリング周波数も、32kHz/44.1kHz/48kHzに加えて96kHzが選択できる。つまり24ビット/96kHzの最新AD/DAコンバーターを搭載しているわけで、下位機種である16ビットのDPS12iとの機能差が音質面でも明確になっている。

 

表① 同時再生(録音)可能なトラック数

 

もちろん録再は非圧縮で、プロジェクト(曲)ごとにこれら録音フォーマットを選択可能だ。ただし、ビット数やサンプリング・レートを後からコンバートすることはできないので、オール・デジタル処理で自作CDを作る場合には、44.1kHz/16ビットで作業を始めよう。なお、DPS12、DPS12i、DPS16(24ビットと96kHzを除く)の間ではデータ交換が可能とのことだ。

ミキサー部は26ch仕様。インプット・ミックス側がアナログ8ch+デジタル2chで、これにトラック・ミックスの16chが加わる。インプット1と2の端子にはコンビ・ジャックが採用されており、XLRとフォーンに対応。ファンタム電源スイッチがあるので、コンデンサー・マイクも直接つなげる本格派だ。また、インプット8はスイッチ切り替えでエレキギター用のハイ・インピーダンス接続も可能になっている。

トラック・ミックスに使用するフェーダーは16本用意され、他のメーカーに見られるようなステレオ・フェーダーによる省略が行われていないのがうれしい。パン専用つまみも装備しており、多少コストがかかっても”基本的な使いやすさを優先する”という姿勢が貫かれている。

EQは、最大16基の3バンドEQ(MIDのみQあり)を用意。これは26の任意のチャンネルにアサイン可能だ。AUXセンドは4つで、内蔵エフェクトへの送りと、外部エフェクターへの出力は共通となっている。

6つのアサイナブルつまみと
新たなバスの採用で操作性を向上

オプションの内蔵エフェクト・ボードEB4M(30,000円)は最大4系統使用でき、AUXタイプはもちろん任意のチャンネルへのインサート・タイプに切り替えることも可能。もちろん内蔵エフェクトのリターンは専用に用意されている。内容は空間系を中心にしたベーシックなエフェクトがメインだが、DISTORTION、PITCH CORRECTOR、ROTARY SPEAKERなども搭載。さらに、”DIGITAL EQ”という3バンドすべてにQがある本格的パラメトリックEQのプログラムも用意されていて、メインEQで追いつかないような細かい音作りもこちらでは可能になっている。

出力側にはマスター・アウトの他に、モニター・アウト端子も装備。4つのAUXセンド端子と合わせて8パラアウトも可能だ。各端子へ出力する信号はQUICK PATCHモード(後述)でそれぞれ任意設定でき、ここでAUXや各トラックも選択できるので、外部MTRへのコピー作業も8トラック単位で可能となる(ただしデジタル・アウトはマスター・アウトと同じ信号)。

ハイピッチ50ピンのSCSI端子には、外部メディアを接続しての記録(ハード・ディスクのみ)や、データのバックアップが可能。さらにCD-RやCD-RWドライブを接続すれば、オリジナルCD作りもできるようになった。

波形表示も可能な編集機能に
タイム・ストレッチを新搭載

大型ディスプレイの右にはQ-LINKと称した6つのつまみを採用。これは主にEQやAUXセンド、エフェクトのエディットなどに使うつまみで、パラメーターへダイレクトにアクセスできるのが便利だ。”左手はトラック・セレクトで右手はパラメーター”の体制でどんどん設定していける。

また、QUICK PATCH画面(画面①)では各インプットからの信号を視覚的にパッチング可能。昔のMTRのように、いちいちPANを左右に振ったりしなくて済むのが快適だ。例えば、1つのインプットから複数のトラックへ信号をアサインしておけば、1本のマイクを使って次々に録音トラックを変えてダビングしていくことができる。

▲画面① QUICK PATCH画面。入力信号、AUXバス、ピンポン・バスを視覚的に録音トラックにパッチング可能

 

さらに、新たに”ピンポン・バス”L/Rが採用され、バス周りが実にうまく改善された。DPS12ではピンポンに使うバスがAUXと共通で、用途の制約が多く惜しまれたが、本機ではピンポン時の信号の流れも理解しやすく文句がない。通常のトラックをまとめるピンポン作業はもちろん、複数のインプット信号をミックスして録音したり、エフェクト成分を録音したりといった設定もかなり実用的になっている。

ミュート・キーが専用に用意されなかったのは少し残念だが、コントロール・ビュー画面(画面②)で、ソロやEQのオン/オフ状態と同様に26チャンネルをすべてを一覧できるのが便利である。

▲画面② ミキサー画面。下半分が全チャンネルのパラメーターを1度に表示するコントロール・ビュー

 

ロケート・ポイントはMEMORYキーで設定し、GOTOキーでリスト表示。最大100ポイントにそれぞれ名前を付けて選択できるので、非常に音楽的なロケートが可能となっている。さらに、これとは別にダイレクト・ロケート機能も用意。インプット・セレクト・キーやトラック・セレクト・キーに記憶させたロケート・ポイントを使って素早くロケートすることができる。

250のバーチャル・トラックは1つ1つに名前が付けられ、そのリストから任意の再生トラックに自由にアサイン可能。これなら不規則に空いているトラックを使って作業した場合でも何を録音したのかが一目瞭然。トラックの入れ替えも簡単だ。

エディット・コマンドは、コピー→オーバーライト、コピー→インサート、カット→オーバーライト、カット→インサート、インサート・サイレンス、カット→ディスカード(無音にする)、カット→ムーブ(間を詰める)、タイム・ストレッチ、ストレッチ→ムーブが用意されている。

このうち、新しく加わったストレッチ系は、ピッチを変えずに長さだけを変えるコマンド。処理速度も早く効果も自然で、何かと重宝なコマンドだ。DPSシリーズの場合、2つの処理が1度にできるのが便利だが、さらに本機では大型画面上で対象トラックを視覚的に選択できるのが使いやすい。もちろん複数トラックの同時編集も可能なので、曲の構成を大胆に変える場合も素早い処理ができる。また編集時はUNDOも可能で、必要なら250回前までのアンドゥ回数を設定できる。

さらにWAVEFORMキーで波形を表示させれば、波形を見ながらエディット・ポイントやロケート・ポイント等を設定できる。この感覚は同社のサンプラーとほぼ同じで、すぐになじめた。もちろんジョグ・ダイアルでスクラブすることも可能だ。

その他、16個のシーン・メモリー、録音待機状態のトラックを再生中にインプットに切り替えられるスタンバイ・トラック・モニターなどなど、通常の録音時に必要となる機能は画面下のファンクション・キーにうまく整理されている。リピート機能によるLOOP再生も途切れなく再生可能だ。

MIDI関連も充実しており、MTCマスターはもちろん、スレーブにも対応。MMCで本機をコントロールすることも可能だ。また、リズム・マシンなどを相手にした場合のMIDIクロック同期のためのビート・マップも作成できる。さらに、Macintosh/Windows両対応のDPSシリーズ・コントロール・ソフトであるM.E.S.A.DPS Editorを使えば、MIDIを使ったミックス・オートメーションを視覚的に行うことが可能になる予定だ。

今回のデモ機の段階では、エフェクト部分が機能せず、チェックできなかったのは残念だった。しかし、予想通りにデジタル・アウトは高音質。さらにはアナログ・アウトもなかなかいい。AKAIらしくしっかりしたサウンドである。ちなみに96kHzで録音してみると、高域の伸びがさらにいいようだが、これらフォーマットの違いによる音質差は意外に少ないと感じた。むしろ”96kHz選択時はAUXが2つ、EQが6チャンネル”という制限がつらい。通常はやはり44.1kHz/16ビット辺りを使う人が多いだろう。

また、ロケート・リスト上の時刻の微調整など細かいところでは、もっと使いやすくできそうなポイントもあるとは思ったが、全体的にはとても実用性が高く、気持ちがいい操作性だ。

以上レポートしてきたように、新機能も幾つか追加されたが、操作性が悪くなっていないのはさすがだ。本機の魅力はやはり”音質の確かさ”"操作性の良さ”にある。エフェクト周りが他社に比べて弱く見られがちだが、この点は外部エフェクターを多めに用意することで十分に補えるだろう。ピンポン・バスとアウト・アサインを利用すれば外部コンプなどを積極的に使い回すことも可能な構造である。決して多機能ではないが、AKAIらしい信頼できる仕上がりと言えよう。

AKAI

DPS16

155,000円(ハード・ディスクなし)
185,000円(DPS16 HD20/20GBハード・ディスク内蔵)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

問い合わせ
ニュマークジャパンコーポレーション
TEL: 03-6277-2230 http://numark.co.jp/

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■サンプリング周波数/96/48/44.1/32kHz
■周波数特性/96kHz:10Hz〜44kHz、48kHz:10Hz〜22kHz、44.1kHz:10Hz〜20kHz、32kHz:10Hz〜15kHz(±2.0dB)
■最大録音時間(10GBディスク使用時)/96kHz:約15時間、48kHz:約30時間、44.1kHz:約32時間、32kHz:約45時間
■量子化数/24/16ビット・リニア
■AD/DA/24ビット・128倍オーバー・サンプリング
■アナログ入力/フォーン/XLR(バランス)×2、フォーン(バランス/アンバランス)×6
■アナログ出力/マスター・アウトL/R(RCAピン)、モニター・アウトL/R(RCAピン)、AUX SEND 1〜4(フォーン)
■デジタル入出力/コアキシャル(S/P DIF)
■MIDI/IN、OUT/THRU
■外形寸法/515(W)×127.5(H)×358.5(D)mm
■重量/6.4kg(内蔵ドライブ含まず)

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