強力なサウンド・メイク機能と高い操作性を備えたサンプラー

YAMAHA A5000

REVIEW by Q'HEY(MOON AGE RECORDINGS) 2000年2月1日

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1997年の発表以来、瞬く間に多くの制作現場に導入され、ヨーロッパでも数多くの賞に輝く大ヒットとなったYAMAHAのサンプラーA3000。先ごろ、その後継モデルとなるA5000/A4000が発表された。そもそもA3000はサンプラーでありながらも、既存のサンプラーを超えたシンセサイズが可能な”サンプリング・シンセサイザー”とも呼べるものであり、同時に明快なインターフェースによって、非常に扱いやすい操作性を持つ優れたプロダクトだった。個人的にもA3000との出会いによって制作環境ががらりと変わり、A3000使わずして楽曲を仕上げることがなくなったほど同機に入れ込んでいただけに、この新機種には興味津々である。早速、A5000を手にして、その使い心地をチェックしてみた。

SCSI端子を標準装備し
WAV/AIFFの読み込みが可能に

最初にA5000とA4000(こちらは149,000円)の違いを述べると、外見やソフトウェアは同一だが、同時発音数や受信チャンネル数、同時使用エフェクト数などにおいて、A5000はA4000の2倍に当たる数を確保しているということ。つまりA5000は単純にA4000の2台分に相当するものだと考えていい。以下に挙げるA5000の説明は、特に表記しない限りA4000と共通だと思って読み進めてほしい。

ではまず、基本的な仕様についてざっと眺めてみよう。最初にA5000の姿を目にしたとき、まずパッと目を引いたのはそのボディ。A3000のブルー・メタリックから、さらに光沢のあるグレーを基調としたメタリック色に変更され、一層パフォーマンスが向上したことを予感させるデザインになっている。

サンプラーを多用する場合に気になる最大同時発音数は128音(A4000は64音)、受信可能なチャンネル数(マルチティンバー数)は32パート(A4000は16パート)と、全く申し分ない。

音質の上で気になるAD/DAに関しては、A/Dが20ビット・64倍オーバー・サンプリング、D/Aが24ビット・8倍オーバー・サンプリング。A3000がそれぞれ16ビット・64倍オーバー・サンプリング/18ビット・4倍オーバー・サンプリングだったのに対し強化された形になっている。

サンプリング周波数は、アナログ入力で44.1/22.05/11.025/5.5125kHzの中から選択可能。また、オプションのデジタルI/OカードAIEB1(25,000円)を使用すれば、48kHzを選択することもできる。なおこのカードは、6系統の独立アナログ・アウト(フォーン)と、S/P DIF2系統(オプティカル/コアキシャル)のデジタル入出力端子を増設できるものだ。

サンプリング・タイムの総計にかかわってくるメモリーは、標準で4MBがオン・ボードで備わっており、最大128MBまで拡張可能。最大拡張時のサンプリング・タイムは、44.1kHzで6分20秒、最も低レートな5.5125kHzでは、50分43秒までのサンプリングが可能だ。

拡張性に関しては、A3000でオプションだったSCSIインターフェースが標準装備されており、CD-ROMドライブなどのSCSI機器を外部接続することが可能。CD-Rドライブを接続して、バックアップCD-RやオーディオCDなどを作ることもできる。また、本体内にハード・ディスクを内蔵できたり(SCSIのみならずIDEにも対応)、FDドライブとの交換でZipドライブを内蔵することも可能だ。さらには、ヤマハが提唱する次世代のデジタル・データ転送プロトコル”mLAN”にも対応予定とのことで、将来性も十分といったところだろう。

気になるデータの互換性については、A3000はもちろん、AKAIやE-MUなどのサンプル・データ/プログラムを読み込みでき、WAV/AIFFのロード/セーブも可能。SCSI経由で、コンピューターとも自由にやり取りすることができる。

サウンド・メイクに欠かせない
充実したフィルター/エフェクト

サウンド・メイクにおいてある意味最も重要なポイントとなるフィルター部には、24dB/Octの強力なフィルターを搭載。そのバリエーションも総計16種類と、実に豊富な取り合わせとなっている。その内訳は、ローパス、ハイパス、バンドパス、バンド・エリミネートといったオーソドックスなもののほかにも、ローパス/ハイパスのバリエーション・タイプ、2種類のフィルターを組み合わせたタイプなど。これらを駆使して細部に渡る微妙なエディットから、強力に発振する過激なサウンドまで、自由自在な音色作りを可能としている。なお、この16種類のフィルターはA3000でも搭載され高い評価を得ていたもので、それがそのまま継承されたものだ。

同じくサウンド・メイクの上で重要なエフェクターは6系統(A4000は3系統)用意されており、そのバリエーションも総計96種類と、54種類だったA3000から大きく追加されている。

そのほかにもA3000で好評だった、ブレイクビーツを自動的に分割してランダムに並べ替える”ループ・リミックス機能”や、ブレイクビーツやフレーズ・サンプルをワンタッチで自動的に分割し、分割した波形を順番にキー・アサインする”ループ・ディバイド機能”も健在。さらにA5000では新たに、音色プログラムごとに外部MIDIクロックに同期させることができるLFOを搭載し、最大16ステップでオリジナルのLFO波形をプログラムすることが可能となっている。

こういった機能をコントロールするインターフェースの中で最も目を引く部分として、すべての操作状況を表示するディスプレイに、320×80ドットの大型LCDが採用された点が挙げられる。これによってA3000では不可能だったサンプル波形の表示が可能になり、さらにフィルターやEG、LFOの形状までも表示されるのだ。

一方、マトリックス状のモード/ファンクション・スイッチや、直感的な操作に結びつく5個のノブなどは従来通り装備されていて、相変わらず明快な使用感を維持している。A3000ユーザーなら取扱説明書を読まずして、即座にA5000を使いこなすことができるだろう。

大型LCDの搭載により
波形やLFOカーブなどを表示

ここからは、ユーザー・インターフェースの部分を含め、実際にチェックしてみた感想を述べていきたい。まず電源を入れてメニューをいじると、やはり大型LCDの効果は大きいと感じる。A3000では単一のファンクションしか表示できなかったのに対し、複数行にわたるパラメーターが同時に表示される。しかも左横にコンピューターのスクロール・バーのようなものが付いていて、自分がページ内のどの位置を表示しているのかを確認できるのも便利だ。

早速サンプリングすると、そのサンプル波形がグラフィカルに表示され、スタート/エンド・ポイントやループ・ポイントを視覚的に設定することができるようになっている。他社のサンプラーでグラフィカルな波形表示でのエディットに慣れていたゆえに、波形表示が不可能なA3000に不満を感じていたユーザーには、これが最高にうれしい改良点の1つとなるだろう。

もっとも、サンプル波形に関して言えば、視覚的でなくとも自分の耳を頼りにポイントを設定することに慣れているユーザーもいるわけだし、コンピューターとSCSI接続して同社がオンラインなどで配布しているTWEなどの波形編集ソフトウェアが使えるために、特に不自由を感じなかったというユーザーも少なくないだろう。しかしながらA3000の小さいLCDでは、16種類のフィルターのうち”2Peaks”や”DualLPFs”といった、2カ所にわたってフィルタリング・ポイントを設定する7種類のフィルターに関しては、どういった音域をどう処理しているのか今ひとつ具体的につかめず、十分に納得の行く使い方ができなかったユーザーもいたのではないだろうか。

だがこのLCDは、EGやフィルターの形状も表示してくれるので、フィルターの効果が視覚的に確認でき、そういった疑問が一気に解消されるだろう。これら特殊なフィルターの使用感が圧倒的に明快になったのは、大きな収穫と言える。

AD/DAのスペックをアップし
ハイ・クオリティなサウンドを実現

5個のダイアル・ノブのタッチは、A3000よりもクリック感が薄れ、より迅速にパラメーターの変化に対応しているように感じられた。A3000ユーザーは触感が変わったと感じざるを得ないだろうが、特別支障となるものではなく、すぐに慣れてしまうものである。それどころかあっという間にA5000のタッチの方が使いやすく感じるようになるに違いない。

新規に追加されたエフェクターは、すべて外部または内部のテンポに同期するタイプなので、煩わしい数値設定をせずとも、スムーズでダイナミックな動きのあるエフェクト値をセットすることができた。またこれらのエフェクターは、外部アナログ入力に対して使用しながらミックス出力することも可能なので、他のMIDI音源にも活用可能となっているのがうれしい。

そしてA3000では本体にお任せだったループ・リミックス機能のパターンが、ユーザー自身でカスタマイズすることもできるようになったので、偶然性と計画性を両立させたループ作りが可能ということになる。

さて、スペック上は向上している音質の部分だが、サンプリングした音を注意深く聴いてみると、確かにA3000よりも質が高くなっていることが感じられる。また、A3000では多少気になっていたノイズ成分も大幅にカットされ、実にクリアな録音/再生ができていると感じられた。さらにA3000で作成していたプログラムも読み込んでみたが、その再生音の質も高くなっているようだ。なお、エフェクターが96種類と増えたものの、先頭から54番目までのエフェクターはA3000と同じものなので、A3000のプログラムは何ら支障なく使うことができた。

以上において、A3000からの変更点を軽くおさらいしてみると、以下の通りになる。
●同時発音数が64→128に(A4000は変わらず)
●エフェクターが3→6系統に(A4000は変わらず)
●エフェクト数が54→96種類に
●AD/DAの強化
●ループ・リミックス機能のユーザー・カスタマイズが可能に
●大型LCDの搭載で波形などが視覚に確認可能
●同期プログラマブルLFOを搭載
●SCSIインターフェースの標準装備
●CD-Rドライブの接続でバックアップCD、オーディオCDの両方が焼ける

これらを見れば、新規ユーザーはもちろん、既存のA3000ユーザーでさえも、このA5000/A4000の導入を検討する価値は十分にあるのではないか? そんな、まさに怪物のような、パーフェクト・サンプラーの出現と言えるだろう。

■A5000のLCD画面表示例(A4000も共通)

YAMAHA

A5000

229,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■音源方式/AWM2
■最大同時発音数/128音
■マルチティンバー数/32パート
■AD変換/20ビット・64倍オーバー・サンプリング
■DA変換/24ビット・8倍オーバー・サンプリング
■デジタルI/O(別売ボードAIEB1装着時)/S/P DIF(コアキシャル/オプティカル)、入力周波数=48kHz/44.1kHz/32kHz、出力周波数=44.1kHz
■サンプリング周波数/アナログ入力:44.1/22.
05/11.025/5.5125kHz(モノラルおよびステレオサンプリング可)、デジタル入力(別売ボードAIEB1装着時):48/44.1/32kHz(1/2、1/4、1/8ダウン・サンプリング可、ステレオ・サンプリングのみ)
■内部サンプル・メモリー容量/標準:4MB(オン・ボード実装)、最大拡張時:128MB(32MB 72ピンSIMM×4枚装着時)
■最大サンプル長/モノラル:32MB、ステレオ:64MB
■最大サンプリング・タイム(モノラルおよびステレオ)/44.1kHz:6分20秒、22.05kHz=12分40秒、11.025kHz=25分21秒、5.5125kHz=50分43秒
■エフェクター/6系統、トータル・イコライザー(4バンド)、サンプル・イコライザー(サンプルごと/1バンド)
■シーケンサー/リアル・タイム・レコーディング、プレイバック(SMFフォーマット0)
■音色プログラム数/128プログラム
■ディスプレイ/320×180ドット・フル・グラフィックLCD(バックライト付き)
■接続端子/PHONES(ステレオ・フォーン)、REC INPUT L/R(フォーン×2)、STEREO OUTPUT L(MONO)/R(フォーン×2)、ASSIGNABLE OUTPUT L/R(フォーン×2)、MIDI IN(A/B)/OUT/THRU(A/B)、SCSI(ハーフ・ピッチ50ピン)、AC IN
■外形寸法/480(W)×90(H)×461(D)mm
■重量/8.0kg

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