コンパクト・サイズを実現したステレオ・コンプレッサー

FMR AUDIO RNC1773

REVIEW by 松本靖雄 2000年1月1日

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1990年代に入って音楽の主流は、それまでのボブ・クリアマウンテンらに代表されるような、リバーブを駆使して作ったきれいなサウンドから、コンプレッサーなどを多用して歪みや音圧を重視した、荒くてガッツのあるサウンドへと移行してきたわけですが、今なおその流れは止まっていないようです。今回は、その一番重要な部分を担うコンプレッサーの新機種を紹介しましょう。ステレオ・タイプにもかかわらず、何と58,000円という低価格を実現した製品であります。早速チェックしていきましょう。

ボタン1つでナイスな音が得られる
スーパー・ナイス・モードを搭載

まず目に付くのは、1/3ラック・マウント・サイズというコンパクトさであります。本当にこれでステレオ?と思うほどです……確かにステレオでしたが。

パネルのつまみは、左からスレッショルド、レシオ、アタック、リリース、ゲインと至ってシンプルな構成となっています。操作するに当たって、一番重要なつまみの位置と見やすさは申し分ありません。特につまみがクリック式を採用していないため、微妙な調整が可能になっています。つまみ自体もかなりしっかりとしたものになっているという印象でした。

本機の一番の特徴は、通常のモードのほか”スーパー・ナイス・モード”という機能が搭載されていることでしょう。これは、パネル上の”Super Nice”ボタンを押すだけで、自然かつ音圧のあるサウンドをだれでも得ることができる機能です。他機種でよく見られるオート・モードみたいなものなのですが、本機の場合はさらに、つまみで微妙な調整をすることも可能です。

入出力は、フォーン・タイプのIN/OUT端子が各2つずつですが、IN端子はTRSフォーン・ケーブルに対応しているので、インサート・ケーブルを使えばIN/OUT兼用になります。また、サイド・チェイン端子も装備されているので、他の機材と接続して、ディエッシング(図①)やダッキング(図②)効果を得ることも可能になっています。

 

エレキギターなどアタック感の強い
エッジの効いたサウンドに最適

では実際にソースを入れてチェックしていきましょう。今回はちょうどシアターブルックのミックス中ということもあり、バスドラ、スネア、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、アコースティック・ピアノ、ベース、HAMMONDオルガン、Rhodesピアノなど、いろいろなものでチェックすることができました。

結論から言いますと、一番良かったのはエレクトリック・ギターで、実際に本チャンに採用しました。アタック感が実に良いですし、つぶれ具合が、ギターの本来持つ感じと非常にマッチングし、より音圧感を出すことに成功したのです。ちなみに、その際の設定は、レシオは8:1くらいで、アタックとリリースは早めです。それ以外の楽器でも、キック、スネアなど、アタック感を出したいものには非常に良い効果を出してくれました。

逆に、アコースティック・ギターやボーカルなどの高音域に倍音の伸びる楽器では、あまり良い効果を得ることはできませんでした。倍音が少なくなってしまい、変な歪み感が出てきてしまったのです。あえてこれを利用するという使い方も十分に考えられるとは思いますが……。

それ以外のHAMMONDオルガン、Rhodesピアノのステレオ素材では、特に可もなく不可もなくといった印象ですが、ステレオ・コンプレッサーとして、ステレオものにも十分に対応でき、全く問題なく使えると思います。

また、通常このような機械を楽器にインサートした場合によく問題になるのが、単に通しただけで音ヤセなどの音質劣化が起こることですが、本機はその部分でもほぼ問題はなく、さすがは各方面において高い評価を得ているだけのことはあると感じました。

ただし、スタジオで代表されるUREI 1176、1178、DBXなどのコンプレッサーと比較すると、特別音色にキャラクターがあるわけではなく、”これを通せばこうなる”というような面白味には欠けます。もちろん、それらとは価格があまりにも違い過ぎますので、比較の対象にはすべきではないのかもしれません。むしろ、この価格で素晴らしい効果が得られるということを強調しておきたいところです。

というわけで、このコンプレッサーは、プロはもちろん、アマチュアにもお薦めできるコンプレッサーだと思います。特にアマチュアの方は、ぜひ”Super Nice”ボタンを押してみてください。今まで1度もコンプレッサーを使ったことがない人でも、十分なコンプ・サウンドを得ることができるでしょう(ちょっと名前はダサいですが……)。もちろん、通常のモードでも、アタックの強い、エッジの効いたサウンドを得ることができます。価格もかなりお手ごろですので、20万円以上出してモノラルのコンプレッサーを買うくらいなら、本機を3台買った方が良いのではないかと思います。それでも、1Uサイズに収まってしまうのですからね……すごい!!

FMR AUDIO

RNC1773

58,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■周波数特性/10Hz〜100kHz±0.5dB@0dBu
■最大入力レベル/+22.5dBu@3%THD, 1kHz
■スレッショルド/−40dBu〜+20dBu
■レシオ/1:1〜25:1
■アタック/0.2msec〜200msec
■リリース/0.05sec〜5sec
■ノイズ・レベル/−92dBu未満
■出力ゲイン/15dB
■接続端子/IN(TRSフォーン)、OUT(TRSフォーン)、サイド・チェイン(TRSフォーン)
■外形寸法/140(W)×40(H)×163(D)mm
■重量/0.9kg

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