第21回~音楽制作における“ケーブル”の話②

“D”と“P”の作法(音楽業界編) by 中脇雅裕 2018年5月18日

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皆さん、こんにちは! GW、いかがお過ごしですか?
私は今、ホノルルでこの原稿を書いています(4月末時点)。この時期、仕事の都合でよくホノルルに来ます。もう30回以上ここに来ているでしょうか……でも、すべて仕事で来ているため一度もビーチで泳いだことがないんです(-.-)。
ただし、レストランはいろいろ知っていますよ〜。チャンスがあればホノルルのレストラン・ガイドでも書こうかな(笑)。
 

ケーブルを変えたことで輪郭がはっきりし、ベースやキックがボケずに聴こる

さて、前回の続きケーブルの話です。特別にACOUSTIC REVIVE(関口機械販売)の社長である石黒謙、さんにケーブルの秘密などなど、いろいろお話をうかがいました!

▲ACOUSTIC REVIVEの石黒謙、さん(奥)と筆者(手前)

▲ACOUSTIC REVIVEの石黒謙、さん(奥)と筆者(手前)


高級ケーブルやユニークなオーディオ・アクセサリーで有名なACOUSTIC REVIVE。もともとはコンクリート・ブロックを作る機械を製造されていたそうです。その事業が訳あって消滅。当時、工場長だった石黒さんはオーディオ・マニア。そこで、カセット・テープの消磁機でCDを消磁したら音が良くなったことを知っていた石黒さんは、そのマシンを苦労の末に商品化。大ヒットとなります(今でも人気商品で私も愛用しています!)。

そこから、さまざまなオーディオ・アクセサリーやケーブルを開発し国内外で高い評価を得ています。
私もACOUSTIC REVIVEのケーブルを使わせていただいているのですが、今回はあえて一般的なケーブルと聴き比べながら石黒さんにお話を聞いていきます。

チェックに使った音源は、私がディレクターとして制作した手嶌葵さんの『The Rose〜I Love Cinemas〜』とマドンナの名盤『レイ・オブ・ライト』。このアルバムをチェック音源として使っている人は多いですね。手嶌葵さんのアルバムはマスター・データを持っているので、AVID Pro ToolsからRME Babyface Proをオーディオ・インターフェースにして再生。マドンナはいったんCDからデータで取り込んで同じ経路で試聴しました。
このセッティングで、Babyface Proからスピーカーにつなぐライン・ケーブルを換えて比較試聴してみます。

まず、CANAREで聴いてみます。まあ“いつも聴く音”という感じです。悪くない。
次に、ライン・ケーブルをACOUSTIC REVIVEに変えてみると、一聴して情報量の多さを感じます。
輪郭がはっきりし、特に低音、ベースやキックがボケずに聴こえます。
リバーブ成分のディテールが明確になり、リップ・ノイズなど聴こえなていなかった要素が聴こえてきますが、嫌な感じはしません。
でも一番感じたことは全体の臨場感。手嶌葵さんのアルバムは、ボーカル・ディレクション、ミックス、マスタリングすべての工程にかかわっていますが、そのときの感覚が蘇ってきました。“そうそう、こんな感じだったった”、そういう聴こえ方です。

▲ACOUSTIC REVIVEのライン・ケーブル(撮影:川村容一)

▲ACOUSTIC REVIVEのライン・ケーブル(撮影:川村容一)

 

こだわりの「単線構造」がACOUSTIC REVIVEケーブルのポイント!?

なぜケーブルでこんなに音が変わるのでしょう?
石黒さん曰く、1990年ごろから多くのケーブルを試した結果、“単線”のケーブルが音源をそのままの状態で再生すると確信したそうです。

一般的なケーブルに使われている“撚り線(よりせん)”、つまり極細の線を編んで作ったケーブルは取り扱いは楽ですが電気信号が走る際に迷走電流が発生し、それが微妙な電流の到達時差になって、一聴するとパワフルに聴こえたり、ハイ上がりになって派手に聴こえたりしますが、それは本来の音でなくノイズやひずみ成分が乗ったり、ある特定の周波数が持ち上がっているだけで本来の情報を正しく伝えていないとのことです。

LANケーブルなどの高周波伝送を行うデジタル・ケーブルでは、迷走電流の影響によって信号の伝達自体ができなくなることもあるそうで、10m以上のLANケーブルがすべて単線を採用しているのはそういった理由だそうです。
音源が持っている本来の情報を伝えるには単線が一番。
しかし、その単線にもデメリットがあるそうで、それは取り扱いの難さはもちろんのこと、特定の周波数が“泣く”感じになるそうです。それは、単線自体が共鳴して起こす現象だそう。
これらの問題を解消するために、ケーブル導体の製法から見直し、刀鍛冶と同じ“鍛造”製法によって銅の結晶方向を電気が流れる横方向に連続させた上で“焼き鈍し”をして銅線自体を軟らかくするそうです。

鍛造処理前後の導体断面。結晶構造が横に連続する形になることで電流がスムーズに流れる

鍛造処理前後の導体断面。結晶構造が横に連続する形になることで電流がスムーズに流れる

それから、なるほど〜と感動した手法が線自体を正円から楕円にしたこと。その結果、線の中で起きる共鳴が発生しなくなるそうです。
そして、なんとこの楕円を作るのに必要なパーツが、銅の塊から細い線を引き出す型となるダイスというパーツ。つまり溶けた銅の塊から1mmの穴の開いたダイスから銅を引き抜いて銅線にするのだそうですが、なんとこのパーツ、人口ダイアモンドではどうしても表面がザラザラするのだそうで、天然ダイアモンドを使用するんだそうです!!!
通常、天然ダイアモンド・ダイスは撚り線の0.1mm程度の極細径を引く最終段階で使うものですが、1mm〜1.8mmもの太い径の天然ダイアモンド・ダイスを特注しているとのこと。
このパーツだけでもかなりの費用が必要。そう考えると同社の製品価格も納得です。

さて、我々がスタジオやワーク・ルームで使う機材は作っている音を忠実に再現することが求められます。
特に我々サウンド・クリエイターは、レコーディング時にマイクやプリアンプを目的に合わせて選びサウンドを厳選していきます。そのとき、モニターしている音がケーブルなどによって本来とは違うモノになっていたら悲劇です。
もちろん、それはミックスやマスタリングでも同じことが言えます。
モニターがデータを忠実に再生す環境でないと、本来のオリジナル・マスターと言えるものができないと言っても良いでしょう。

そのためにも我々は常にフラットで忠実な音環境を求めるべきです。
ケーブルやモニター・スピーカーの選び方はここを押さえておかないと意味が無いですね。

特に必ずしも高価なケーブルである必要は無いと思いますが、“ケーブルを変えたら劇的に音質が変わった!”というのはかえって危険かもしれません。
では何が基準になるのか……。

次回もケーブルの話をしながらそんなテーマを紐解いていきたいです!

ACOUSTIC REVIVE Webサイト
http://acousticrevive.jp/

【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

 

 

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!

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