第19回~“歌を作る”=ボーカルのOKテイク制作⑦〜ボリュームの話その2

“D”と“P”の作法(音楽業界編) by 中脇雅裕 2017年12月14日

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皆さん。ちょっとご無沙汰してしまいました。お元気ですか!

寒くなりましたね。ということは、おでんの季節! 実は去年ごろからおでんを作ることに凝っていて、出汁はもちろんのこと、具材をいろいろと研究しました! 名古屋の鳥肉、北海道のホタテ、北陸のカニ、九州の餃子巻き、沖縄の豚足、ホントにいろいろあります。その中でお薦めはチーズ巾着!(油揚げの巾着の中にカマンベール・チーズを入れます)。そしてもう一つはスパム!(沖縄のおでんではよく入るとのこと)。

読者の皆さんと“おでんパーティ”したいな〜。

前置きが長くなってしまいましたが、今回は「“歌を作る”=ボーカルのOKテイク制作⑦〜ボリュームの話 その2」です。

 

基本的な考え方は「聴こえない音を上げ」「大きく聴こえる部分を下げる」

前回は日本語の特徴などのお話をしました。今回は細かなボーカル・トラックのボリュームの上げ下げの話です。

エンジニアさんがよく、“唄に魂を入れる”と言うボーカルのボリュームの上げ下げを書き込む作業ですが、歌モノの仕上げにはとても大切な作業です。一番大切かもしれません。

ここまででオケ全体のミックスもほぼ終わり、それに対してのボーカルのレベルも決まってきました。“これでOK!”と言っても問題無いところかもしれません。

しかし、最後の仕上げに歌の言葉一音一音のボリュームを確認していきましょう。
そして、最終的なボリュームのデータを書き込んでいきます。

基本的な考え方は、聴こえない音を上げ、大きく聴こえる部分を下げるということです。

この調整のお勧めの方法は、あまり大きくない音量で、それも歌詞カードを見ないで(理由は過去の記事で確認ください〜)、DAWのボーカルのボリュームをエディットできる画面を開き、現状のミックスを確認してみてください。そして聴きながら大きいところは小さく、小さいところは大きくします。
基本的には言葉がちゃんと認識できるように整えていきます。

かなり細かい作業になるかもしれませんが、ここはしっかり取り組んでいきましょう。
もちろん、歌詞が聴こえるということだけでなく、

“ここはちょっと小さめにして切なくしたい”

“ここはしっかり歌詞を伝えたいからやや大きめにしておこう”

など、感情表現としても積極的に使ってください。

▲AVID Pro Toolsでボーカルのボリューム・オートメーションを書いたところ。青い波形の上にあるカーブがオートメーションの動きで、「聴こえない音を上げ」「大きく聴こえる部分を下げる」という基本の動きを中心に、楽曲の感情面も考慮して調整されている

▲AVID Pro Toolsでボーカルのボリューム・オートメーションを書いたところ。青い波形の上にあるカーブがオートメーションの動きで、「聴こえない音を上げ」「大きく聴こえる部分を下げる」という基本の動きを中心に、楽曲の感情面も考慮して調整されている

 

知っておきたいボリューム・コントロールの小技

ここで、ちょっと、ボリュームを使って良いボーカルを作るコツを幾つか。

●カクテルパーティ効果を使う。

カクテルパーティ効果、知っていますか? 難しく言うと、“音声の選択的聴取”です。
人がたくさんいるパーティの中で、人々がそれぞれ雑談していても、自分と話している人の会話はもちろん聴こえますが、隣の人たちの会話は意識していないので全く聴こえてきません。でも、その隣の人たちの会話を聴こうとすると実はちゃんと聴こえてきます。つまり、人は意識すれば雑音の中でも聴きたい音を聴くことができます。逆に言えば、意識させれば聴こえさせることができるのです。

なので、“オケを大きめに、ボーカルを小さめのバランスにしたいけど、歌詞の聴こえさせたい!”と思ったときも、メロディの頭の部分数音だけ突いて(ボリュームを上げることを通常“突く”と言います)、一瞬で良いのでボーカルに意識を向けさせてください。そうすれば、その後は多少ボリュームを下げても、聴いている人の耳はボーカルを追い掛けてくれるはずです。

●ボリュームでピッチを整える。

ピッチを直すことに関しては少し前、詳しくお話ししました。ここではボリュームを使ったピッチの整え方を紹介します。やり方は簡単、ピッチの悪い部分のボリュームを下げれば良いのです。“そんなことで良くなるの??”と思う方もいると思いますが、ニュアンスは残してほんのちょっとだけ直したいというときに試してみてください。意外と良くなったりします。

●ブレスのボリュームを意識する。

ボーカルを整える中で、ブレスの処理まではなかなか気が回らなかったします。そこでブレスのボリュームをちょっと気にしてみてください。ブレスのボリュームで歌の表情が結構変わります。特に、バラードやオケの薄いものでは特に重要な要素になります。

いかがだったでしょうか? この作業までで当初の目的の“完ぺきなボーカル・トラックのイメージ”を具体的に作ることができるはずです! ぜひぜひ、これまでの記事を参考に“完ぺきなボーカル・トラック”をガンガン作ってくださいね!

さて、ここでいったん「“歌を作る”=ボーカルのOKテイク制作」は一区切り付けたいと思います。
実はまだまだ裏技があったりしますが、それはまたのお楽しみで!

次回は、“ケーブルの話”をしていたいと思います!

【お知らせ】

待望の中田ヤスタカ、自身初のソロ・アルバムが出ます!
タイトルは『Digtal Native』。
2018年2月7日CDリリースです!

詳しくは、
http://yasutaka-nakata.com
をご覧ください!!
よろしくお願いいたします!!!!

【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

 

 

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!

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