第17回~“歌を作る”=ボーカルのOKテイク制作⑥〜ボリュームの話

“D”と“P”の作法(音楽業界編) by 中脇雅裕 2017年11月1日

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皆さん、お元気ですか〜!!! 突然、秋も深まってまいりました。食欲の秋です!!!
先々週ニューヨークに行ってきたのですが、毎日ステーキを食べてました。ベンジャミンステーキハウス、おいしかったです。
ちなみに私のインスタは食べ物しか上げていません。食に興味のある方はぜひご覧ください。

ボーカルのボリューム・オートメーションは、歌詞を聴こやすくするため

さて、しばらく横道にそれていましたが、また本筋に戻って“歌を作る”=ボーカルのOKテイク制作の話に戻りましょう。今回は“ボリュームの話”。

ボーカル・テイクの良いところつなげ、タイミングを直し、ピッチを修正し、最後に取り掛かるのがボリューム。
よく“歌を書く”と言います。これはオートメーションでボーカル・トラックのボリュームを、データとして文字通り書き込んでいくからです。

私がディレクターになった30年前のスタジオでは、ミックスも後半になると、やおらエンジニアさんが“じゃあ魂入れるわ!”と自ら気合を入れ、SSLのオートメーションでボーカル・トラックのフェーダーの上げ下げを始めたものです。
そのボリューム情報でボーカルの表情を付けていくので、よくエンジニアさんたちは“歌に魂を入れる”と言っていました。どのエンジニアさんも、このときは一発入魂! この歌の上げ下げの作業に没頭していました。かっこ良かったな〜。

さて、このボーカルの微妙なボリュームの上げ下げの前に、まず大切なことがあります。
それはオケに対してのボーカルの基本的なバランス=音量を決めることです。
これがとっても大切です。

この作業をするときは、ミックス自体もほぼほぼ終了しているはずです。

まず私はボーカルのOKトラックや各素材トラックをセッション上に並べます。そしてAUXトラックでボーカル用のマスター・フェーダーを作って、そこに各ボーカル素材をAUXで送っています。
プラグインのかけ方はプロジェクトによってまちまちではありますが、基本OKトラックや素材トラックにはピッチ系やコンプやディエッサーのプラグイン。そしてボーカルのマスター・フェーダーにセンドを作り、リバーブやディレイに送っています。(写真参照)。

▲複数のボーカル・テイクは、一番下のAUXトラック「Vocal Mix」に送っている。そこで各種プラグイン処理やボリューム・オートメーションを書いている

▲複数のボーカル・テイクは、一番下のAUXトラック「Vocal Mix」に送っている。そこで各種プラグイン処理やボリューム・オートメーションを書いている

細かいボーカルのボリュームはOKトラックに書き込みます。そしてオケに対するボーカルのバランスは、ボーカルのマスター・フェーダー上で決めています。

一般的にはサウンド志向や洋楽志向の楽曲は、ボーカルは小さく。シンガーソングライター系やJポップなどで歌詞を大切にしているものは、ボーカルは大きくすると言われています。

ボーカルの音量を決める上で大切なのは、“歌詞をどのように聴こえさせるか”ということです。

洋楽っぽくしたい? 英語と日本語はそもそも発音や帯域が違うことに注意!

ここでちょっと日本語の話。
洋楽=英語の楽曲を聴くと、ボーカルのバランスはかなり小さいものが多いことに気が付きませんか? でもしっかりボーカルは聴こえてきます。これは英語の特徴というか、それぞれの言語が持つ特有の周波数帯域とオケの関係にあります。

英語はザックリ言うと、発音的に周波数帯域の高いところに声があります。例えば“F”の音は息が前歯と下唇
の隙間を抜ける音です。息を前に押し出して作る音。英語にはそんな音が多いです。

ところが日本語は“エフ”というと、喉の奥が“エ” “フ”と鳴るのが分かります。

英語は高い音で日本語は低い音です。かつ、英語は発音の仕組み上、声が通りやすい。聴こえやすい言語です。

ついでにお話ししておくと、日本語と英語の歌でのもう一つの大きな違いは“リズム感”です。
日本語は“愛してる”という歌詞の場合、

“あ・い・し・て・る”

となります。ひらがな1個1音符が基本、つまり音符が5つ必要になります。

英語は違います。例えば“I Love You”は、

“I /Love / You”=アイ ラブ ユー

“I /LoveYou”=ア (イ)ラヴュー

“I /Lo〜・/veYou”=アイ ラー ヴュー

いろいろなリズムを作ることができます。
子音が中心の言語なので、ともかくリズムを言葉で作りやすいのです。ラップがいい例です。
言語とサウンドの話はまた改めてしっかりするとして……。

私は一時、洋楽のカッコ良いミックスをなかなか自分のプロジェクトで再現できないことに悩んでいました。
アメリカの優秀なミックス・エンジニアやマスタリング・エンジニアにお願いしても、目標としている洋楽のサウンドにはなりません。

“アレンジが悪いのかな〜”とか“録り音が悪いのかな〜”とか思いつつ、いろいろトライしましたが、まず大体“日本語”という言葉の響きに問題があることに気付いたときに“日本語の音楽は日本語に合うサウンドで作らないとダメだな。真似しても同じにはならない”と悟りました。

さてさて前置きが長くなってしまいましたが、日本語の歌詞の場合、ボーカルの帯域が中域に集まる傾向があります。オケはそのボーカルの帯域を少し空けておいてあげるとボーカルを必要以上に上げなくてもよくなります。
逆にミックスしていて“ボーカルを上げてもなかなか聴こえてこないな〜”と思ったら、オケが歌の邪魔をしていることが予想されます。なので、そんなときは邪魔している楽器を下げるなどしてみてください。できたらアレンジするときにこの辺りも計算できていると良いですね。

で、そんなことを気にしながら、オケとボーカルのバランスをとってみてください。

基準は歌詞をどのように聴かせるか。私はそんなことを考えながら基本的なバランスを取ることが多いです。

次回もボーカル・トラックのボリュームの話の続きをさせてください。

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【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

 

 

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!

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