第13回〜“歌を作る”=ボーカルのOKテイク制作③〜表情をチェックする!

“D”と“P”の作法(音楽業界編) by 中脇雅裕 2017年7月4日

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ここ東京は梅雨真っただ中。沖縄はもう梅雨明けたとか……。沖縄にノートPC持ってミックス作業とかしてみたいな〜。皆さんそんなとき、モニターってどうしてます? 私も出張先でのモニターはいろいろと試しているのですが、持ち運びができてちゃんとモニターできるモノでお勧めってないですか? 番外編でそんな特集もしてみたいですね。

リスナーが試聴している状態を想像してディレクションをすべき

今回は前回の続き。「ボーカルのOKテイク制作③」として、主にボーカルの表情の話をしたいと思います。

前回は“完璧なボーカル・トラック”をイメージする話をさせていただきました。で、その“完璧なボーカル・トラック”をイメージしつつ、ボーカル・ディレクションをし、何テイクかレコーディングしていきます。レコーディングの進め方などは本連載8回目くらいまでを復習してみてください。

で、ここで仮OKテイクを作っていきます。
例えば8トラックのボーカル・テイクを作ったら、その下に“Vocal OK”というトラックを作ります。一般的には歌詞カードにチェックを入れていて、その歌詞カードを見つつ各ボーカル・テイクから“OK”の部分を切って“Vocal OK”に張ります。

基本的にはこのような作業で“Vocal OK”を作りますが、ここで私の秘密の方法を伝授しましょう!!
この連載の中でもお話ししてきたように、歌詞カードを見ながらディレクションし、歌詞カードにメモを書き込んでいく方法が一般的と思われますが、私はレコーディングの際あまり歌詞カードを見ないようにしています。
なぜかというと、リスナーはほとんどの場合、歌詞カードを見て聴かないからです。歌詞カードを見ながらレコーディングすると、どうしても言葉の理解や発音が文字を見ている状態での判断になってしまうのです

ですから、極力、歌詞カードを見ないでそれぞれのテイクで言葉がしっかり伝っているか、表情は出ているかなどをチェックしながらレコーディングします。とはいえ全く歌詞カードを見ないでボーカル・ディレクションをするのはなかなか難しいので、指示を出すときは歌詞カードで言葉を確認してはいます。

このようにして、歌詞カードには良かったと思った部分だけを〇で囲んでいるだけです。昔は各テイクをプレイバックしつつ、かなり細かい情報を歌詞カードに書き込んでいたのですが、あまり意味がないように思います。

▲中段にあるカラフルな“Vocal OK”トラックが、その下の各トラックから良い部分をつなぎ合わせたもの

▲中段にあるカラフルな“Vocal OK”トラックが、その下の各トラックから良い部分をつなぎ合わせたもの

 

“表情が豊かなボーカル”が必ずしも良いとは限らない!

さて、そんな状態から各テイクから良い部分を選んでいきます。
まずはざっくり良いと思った部分を、つまり歌詞カードに〇をつけていた部分をつなぎます。ここではあまり細かいことを考えないでざっくりいきましょう。

ラフの“Vocal OK”ができたらプレイバックします。そのときに前回お話しした“完璧なボーカル・トラック”を頭に鳴らしながらその違いを確認していきましょう。

そして、まずこの段階で一番大切なのは“表情”です。“表情”はエディットで中々変化させられないポイントです。

ここで一つ注意事項。“表情”はボーカル・テイクのセレクトで大切な要素の一つですが、表情が豊なボーカルが良いというわけではありません。お芝居のセリフを考えてみましょう。役者さんのセリフにとても表情がついていて、ちょっとやり過ぎ?と思う演出もあれば、淡々として無表情と思うようなセリフの言い方もあります。それぞれ、演出家が意図を持ってそうしているのです

ボーカルも同じです。“完璧なボーカル・トラックのイメージ”に一番大切なのは、歌にどんな表情付けをするのかということかもしれません。
レコーディングが終わってから“もっとエモーショナルな歌が良かったな……”とか“もっと淡々と歌った方が伝わったな〜”と思っても、後で直せるものではありません。ですから、イメージしてボーカリストとそれを共有してレコーディングしてくださいね

さて、そのイメージした“表情”を表現するためにボーカルをセレクトしていきます。私はこのポイントを一番に考えています。

さて、そんなことを意識してざっくりとした“Vocal OK”ができました。
そして歌詞カードを見ないでプレイバックします。気になる部分はさっと歌詞カードにマークするなどします。
そしてあくまで“表情OK”のテイクを作っていきます。

どんどん細かくチェックしていきます。最終的には一音ずつチェックします。
何度も言いますが、まず表情のチェックです。声質、ピッチやタイミングなどは二の次。
ちょっと時間がかかるかもしれませんが、ここはしっかりチェックしてくださいね

今回はここまでにしましょう。
続きは次回!

 
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それではまた次回をお楽しみに!!

【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

 

 

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!

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